4話 抗えないキャラ設定
※誤字など軽微な修正を行いました。
基本的な練習メニューは変わらない。
顧問兼監督の川上先生がいないときは基礎練習やカラーコーンを使ったフォーメーションの練習を行う。
いれば、守備戦術やセットプレイなどの約束事の反復練習が指導されるといった感じだ。
当たり前だが、この時代キーパー専門のコーチなんていない。
フィールドの選手たちが独自のメニューの最中は、キーパー同士でボールを蹴ったり投げ合ったり、地面に置いたボールに飛び込むなどの地味な練習を行う。
ちなみにここにいるキーパーは3人。3年生は俺ともう一人、桜井というのがいる。
勿論アニメの方では見たこともない。
楠である俺が言うのもどうかと思うが、楠からレギュラー取れないようならこの世界でキーパーとして出来ることはないと思うの。
大体にして俺だって宙を舞うくらいしか見せ場ないんだし。
とはいえ――、
アニメの方では良く分からなかった事だが、現実には超が付くほどのサッカーの名門校という立ち位置だったのは驚いた。
部員の数も軽く50人を越えており何気に3軍とかまである。学校のグラウンドで練習できるのは1軍と2軍の上位まで。さっきの桜井にしても実際にはそれなりのキャリアとかあるんだろうな。
――ふふふ。
俺は皇のおかげで出る大会みんな優勝してるけどな。世界も経験済みだぜ? 本場のベンチの座り心地をレクチャーしてやろうか?
ん? ピッチはって?
……試合前とハーフタイムにお邪魔させて貰ったぐらいだが何か?
更に言えば試合後は歓喜の輪の為に沢山入っているぞ。どうだ。羨ましいだろう?
全体練習が始まり、キーパーも順番でゴールマウスに立つ。
当たり前の事だが、俺たち3人のうち誰がやってもよくゴールが決まる。それはもう切なくなるほどに。
そんな(ボールに対しての)愛しさと(でも触れない)切なさと(諦めない)心の強さを分け合った楠3人衆は、あっちへピョン(ジャンプ)してゴロゴロ(受け身)、こっちにピョーンしてゴロゴロを絶えず繰り返している。なんか普通に受け身の練習してるだけのような気がしてきたな。
ちなみに横っ飛びしたキーパーが着地時に回ると、シュートを決めた側からは気持ちが良いと好評だ。
楠はサッカー選手として常にエンターテインメントを追求しているのだ。視聴者にナイスゴールが決まったと思って貰わないといけないからな。担当に打ち切られないために。
……そういえば、さっき皇だけ格が違うとか感じてたような気がしたが、多分それは間違いだ。
おそらくだが、俺の格の方が段違いでヤバイ。それも圧倒的に!
始めて地球人の戦闘力を測った時のお兄ちゃんが『ちっ、ゴミめ!』と言った気持ちが分かった気がする。
皇を10としよう。氷高は多分6か7はある。他の名前付きは3から4か。それ以外でも2もしくは1だろう。
そして、そいつらのシュートすら触れない俺たちは一体なんだというのだろうか?
多分この世界にはボールに触れるキーパーと触れないキーパーとで生物学的に分類されているに違いない。
これ――、やばくないか?。
このままでは半年後にお茶の間の笑いものだ。数年後にはネットの世界で動画配信され世界中に散らばる危険性も高い。知らない奴の再生回数稼ぎのネタにされるのなんてマジで勘弁だ。
マジどうしよう。多少は覚悟していたが、ここまで俺(楠)が使えないとは認識してなかった。皇や氷高クラスは無理でも、森山や味方の11番くらいは止められる気がしてたんだが……。
さすがに思った以上の使えなさに、茫然自失となる。
ハッキリ言ってどうして良いか分からない。
決してこの楠の体は反応が鈍いわけじゃない。
むしろしっかり目で追えているし、体もそれなりに付いて行っている(ような気がする)。
だけどセービングの決定的な瞬間で何故か届かない。まるで重りでも付けられたかのように一瞬だけ体が硬直して動けなくなるようなもどかしさ。
なんなんだ、コレ? これが『原作者の呪い』って奴なのだろうか?
この世界、一部の奴らはまさに『ボールと友達状態』になっている。
それどころ皇なんか『相思相愛レベル』と言っていい。
明らかに友達以上のただれた関係を疑ってしまうほどに。
一方の俺はと言えば、まさかのボールに『接近禁止令』発令されている。
『シュートされたらそっち行くけど、1メートル以上近づかないで?」と言わんばかりの勢いだ。
ストーカー防止条例かよ!? 違う! 俺はただ、友達に……。友達になりたいだけなんだ。
ふらふらと立ち上がり呆然とする俺に
「大丈夫か楠?」
異変を感じとった皇と西が寄ってくる。
「あ、ああ。大丈夫だ。なんかイメージ通りに行かなくて。悪い」
まずは練習をストップさせてしまったことを謝る。
「いいって。つかお前、今日再開初日だろ?無理すんなよ」
西が肩を軽く叩いてくる。……こいつ良い奴だな。
なんかあると一番に来てくれるし、顔さえ良ければ人気も出たろうに――、
あ! だからか!?
だからブサイクなんだ!
これでイケメンだったら主役を食ってしまうから。
だからこんな猿顔になってしまったのだということに。
「……もう大丈夫だ。なんか悟りが開けた気がする。練習しよう」
それぞれにそれぞれの因果がある。
西には悪いが、みんな色んな不条理の中で戦っているんだと気付いた瞬間、少しだけ気持ちが楽になった。改めて言おう。西、ゴメン。
「んじゃ、戻るか?」
「ああ」
そんな俺の心のやり取りを知らない西は性格イケメンそのままに、手を差し出してくれる。
その手を取って立ち上がり、西と戻ろうとしたとき、ずっと険しい顔してた皇が俺に尋ねてきた。
「ずっと気になってたんだけど楠……、お前さ? あんな窮屈そうに飛んでたっけ?」




