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おい!今度の行き先はサッカー漫画だってよ!?  作者: 赤星べお(※完全なPNにしました)
2章 スーペルゴレアドール!
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25話 行方の行方


 サッカー部の部員は何気に多い。なんせ三軍まである。中にはほとんど見たこともない奴や幽霊みたいなのもいるんだろう。


 たこ焼きとキックターゲットだけじゃ人員が余り過ぎるという事でお好み焼き屋やコーヒー・紅茶の軽喫茶も追加されることになった。


 食べる場所を確保したら飲み物も欲しいだろ?という当然のリクエストに応えたのが表向きの理由で、実際には、サッカー部である事をなかなか披露できない部員に仕事を作るためと川上監督からの指示でもある。


 普通の缶やパックのジュースをグラスに注ぐだけで軽喫茶を語る事に罪悪感を感じる奴はいなかったのだろうか。


 学園祭の実行委員に企画の追加やテントや鉄板等の備品追加依頼、それに予算の打ち合わせなんかも班長である俺の役目だ。せめてお好み焼きの方は別で誰かやれよ、と心の中だけで吼えておこう。


 そうした打ち合わせの最中。

 

 俺は川上監督から『職員室に来るように』と一年生部員から伝言を受け取った。


(なんだ? 普通、体育教官室や部室に来いっていうのがセオリーなのに。職員室? 何か悪い事でもしたっけか?)


「失礼しまーす」


 ガラガラと年代的な音を立てながら職員室に入ると、すぐに川上監督が寄ってくる。


「お、待ってたぞ楠。校長先生も待ってるから校長室に行くぞ」


「校長室……ですか? あのー俺何かしましたっけ?」


「してきたに決まってるだろ? いいから行くぞ。付いてこい!」


 有無を言わさない形で川上監督は校長室に向かっていく。


(え? 俺、何してきたの? まさか楠って実は裏で不良だったとか?

 ……いや、そんな記憶というか情報はない。むしろ目立たないモブ一歩手前位の存在だったはずだ。

 大体そんな事実があったら今までに何らかの形で分かっていたはずだが……)


「早く来い! それとも何だ? 校長を焦らしたいのかお前は?」


 ヤベ。優しい卓ちゃんから鬼軍曹に切り替わってしまう。よく分らんが腹をくくるしかないようだな。


「連れてきました」

 

 二回ほどノックをしてから川上監督がドアを開ける。校長室に呼び出しって嫌な予感しかしないんだけど?


『まぁ、座って』と笑顔で校長は手前のソファーに手を促してくる。


「ほれ? 楠?」


「は、はい!」

 

(な、なんだ? 急に真顔になって『君の退学が決まったよ』とか言われちゃうのか? 何か知らないけど停学くらいで済ませてくんないかな? やっぱここまで来たら選手権出たいし……、もしかしたら先に謝れば許してくれたりしないだろうか?)


 ビクビクしながらソファーに座り次の一言を待つ。


 まるで裁判の判決を待つ瞬間みたいだ。


「おめでとう!!」

「ごめんなさ……、は、はい?」


 校長と同時に声を出してしまったらしく、校長室に気まずい空気が流れる。


「なんで謝った楠? お前なんか悪いことしたのか?」


『ちげーよ? この雰囲気のせいだよ』などとは言えるはずもなく……、


「いや、違います。……もしかしたら知らず知らずにそんな事があったのかなぁ、と思って」


 川上監督は大きくため息を着く。


「いいから校長の話を黙って聞け」


 余計な事はしない方が良いらしい。

 とりあえず校長の話を聞いてからじゃないと埒が明かないしな。

 そういえば『おめでとう』って言った気がするけど、別に祝われる事なんて無かったはずだ。

 誕生日だってまだ先だしな。というか、わざわざ個別に生徒を呼んでお祝いする校長なんて聞いたこともない。


「楠君? 実はね……。

 さっき鹿島ワンダーズから君の獲得を望んでいるという正式な連絡があったんだよ。

 それでまずは練習の見学や良ければ練習にも参加してみないかって強化部の都築つづきさんって言ったかな? 今度、正式に挨拶に来るみたいだからその時に見学とかの件の答えを聞きたいそうだ。

 ……どうだい?地元としては大いに応援してあげたいところなんだが?」



 ……マジでか? 正直信じられないというか『何故俺に?』という疑問が最初に来る。


「あー、あとな? 清水からの練習参加の話な。早めに返事しろよ? 先方に悪いからな」


「何すか、それ?……聞いてないですけど?」


『あれ?そうだっけ。言ったと思ってた』と笑う川上監督は悪びれる様子もなく答える。


 全く何て監督だ。そうだ。ついでにさっきの紛らわしい答えの件もここで聞いてしまおう。


「あのー、さっき職員室で『してきたに決まってる』って言ったじゃないですか? それって何の事だったんです? 俺、なんかしましたっけ?」


 俺の言葉に川上監督は目を丸くして驚いた様子を見せる。


「はあ? 何言ってんのお前? 中3で全国優勝して、その後控えとはいえジュニアの世代で世界も取った。んで、新人戦、総体、関東大会も軒並み制覇してきた。

 ベスイレは松永に譲ってるが次点でいつも名前出してるじゃねーか?

 そんで今も三連覇目指す名門高校の不動のレギュラーと来た。

 それに断っても断ってもトレセンから何回も来る話。

 この状態で何もしてきてない訳ないだろ? 十分に一流のキャリア歩いてんじゃねーかお前?」


「……話来てた事も聞いてないですけど?」


「そりゃあだって、お前が断るように俺に間に入ってくれって言ってきたからだろ。最初の話通り、近場のヤツしか知らせてねーぞ? つか何だ? 国体出たいのか、お前?」


(あ、そうなんだ。よく覚えてないけど以前の楠の判断っぽいな。じゃあ、こっちの件はそれでいいか。……それにしても、何気にエリート街道なんじゃね楠って? 

 実績と実力が比例してないという部分にだけ目を瞑れば――、有望株と言ってもいいのかもしれないな)


「……いえ、出ないですけど?

 とりあえず、清水の担当の人の連絡先教えてください。こっちからかけるんで。ちなみにいつ連絡あったんですか?」


「……確かぁ、最近だぞ?」


(だから最近っていつだよ? 誰基準だよ? 2.3日でも1週間でも1か月でも、人によっちゃ最近だろうが)


「あれ? 楠君は鹿島に行かないつもりなの? さっきから清水の話ばかりしてるけど……」


 空気読めよ校長。

 そういう話じゃないでしょ?

 こういうのはしっかりと考えたうえで決めなきゃ駄目なんだって! 

 地元だからとかファンだからとかの軽い気持ちで決めたら、すぐに0円契約される恐れだって大いにあるんだよ、あの世界は。


 安定感抜群な公務員の教員には分からないかもしれないけどな? 

 『0』って、だいぶ破壊力のある数値だからな。

 ……『内定0』とか。あ、ヤベ。ちょっと泣きそう。

 給料0円だったら、誰もそんなの仕事にしようなんて思わないじゃんか?


 一時代を築いた元代表選手だってそういう仕打ちを受けるって、前に……、ていうか時系列だと未来だけど、ネットで見て知ってるんだから。


 まあ、プロの世界だから仕打ちって言い方もどうかと思うけどさ。


 ましてや楠だぞ? 俺の知ってるアニメでは入団以降の情報がないんだぞ?

 いつまでプロやってたかとか全然触れられてないんだぞ!


 今はまだ辛うじてリアル路線だからそれで良いかもしれない。

 問題はそれがいつ『爆裂サッカー』に変わるか分からない、という事だ。

 

 ――おそらくは司の必殺シュートが分水嶺になるのでは?


 とは『アニメを知っていればこそ』の俺の予想だ。

 だが、その後の俺の立ち位置が全く見えてこないことが超不安なのだ。

 

 司がチャンピオンズリーグ戦ってる最中に、日本でおでんの屋台引いて眩しそうにパブリックビューイング眺めてたのが『アレが楠なんじゃね?』とか言われちゃうレベルなんだぞ?

 作者の画力の問題というツッコミもあったが、正直どれが本当か間違いかもわからない……。


 そもそも、初めて司とチームメイトじゃ無くなるということ――。

 あの安曇や松永でさえ司がいないと勝てなくなる、そんなチート万歳な世界。


 司を中心にしたピラミッドの頂点から、蜘蛛の子を散らすように落ちていく存在。


 ダメだ――。生きていける気さえしない……。


「すぐには決められません。とりあえずいろんな人に相談してから……だと思います。まずは練習とかクラブの雰囲気とか知ってからになるとは思いますが……」


 校長は、俺が即答で鹿島に決めるとでも思っていたのだろう。

 見て取れるほどの落胆ぶりを隠そうともしない。


 もし今『鹿島に行きます』的な事を言うと、下手すると学祭で『入団おめでとう』的な垂れ幕すらやりかねない勢いだ。

 全くもってゴメン被りたい。



 ともかく一度洋二先生に相談した方が良いだろう。

 この場で決める話ではないのはあまりに明らかだ。


 職員室に戻り、川上監督から乱暴に書かれた清水のスカウトの名前と連絡先のメモを受け取る。


 ガラガラとうるさい引き戸を最初の時より少しだけ乱暴に閉めて、俺はその場を後にした。





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