23話 旅立ち(スタート)のハジマリ
そんなに書き溜めが溜まったわけで無いのですが、正直終りが見えないのでストックが尽きるまで更新を再開します。
もちろん2章タイトルは某有名『サッカーゲーム2』がモデルです。『2』繋がりだし。そのままだとアレなのでイタリア語にしてみました。イタリア、あんま関係ないけど。
翌々日――。
二学期が始まりを告げる。
当たり前に過ぎていく時間を甘んじて享受する学生たちで校舎が溢れ出す。
ガランとした夏休みの風景を思い出して、まるで別の場所のような感じを受ける。
早いと嘆いたり遅いと苛立ったり、相対的に感じる速度は人それぞれに違う。
それでも残された時間は平等にすり減っていき、やがては強制的に大人へと仕立て上げられていく。
慌ただしく流れていく学生としての本分と最後の大会までの少ない猶予期間。
残された時間に対して、チームや個人で課せられた問題はあまりに多い。
俺たち『鹿島南』は県予選の方は特別シードとして3回戦からの予定になっている。
他の学校に比べれば幾分かの準備期間は多い。
しかも4回勝てば県の代表になれる日程になっており、その部分に関しては恩恵もある。
とはいえ、司と氷高はNTでのキャンプやトレーニングなどに参加せざるを得ないときも出てくるらしい。
そうなると、こちらとしては主力抜きでの練習になるので強度が激しく落ちてしまうのが悩みになってくる。
勿論、俺にはそんな要請は来ていない……はずだ。
正直、松永とクラブユース組で事足りるだろうし別に不満もない。
俺だって呼ぶ側の人間だったらそうする可能性が高いと思うし。
俺や森山といった辺りが顔を出すのはせいぜい県か近場の関東トレセン位だ。
それも県南での開催なら行くが、あまり遠いと流石に無理だしU-18からは正式にお断りさせて貰っている状態だ。
さらに言えば、何気に二学期は学園祭やクラスマッチなど学生としてのイベントも多い。
勿論ガッツリ参加することは出来ないけど川上監督から、
「お前らはサッカー部員の前に学生でもあるんだ。後になって振り返った時に『高校の時はサッカーしかして無かった』なんて事にならないように、目の前のモノは全て全力で楽しめ。むしろ、その位の余裕がなきゃ選手権3連覇なんて大それた事達成出来るはずもないぞ?」
とのお言葉を頂いてしまったので、みな部活を言い訳に使えなくて困っている案件でもある。
☆☆☆
~学祭に向けたサッカー部ミーティング~
放課後 校舎2F 視聴覚室にて
サッカー部としては、適当に『たこ焼き』辺り作っておきゃいいだろ?という西の言葉に、森山が猛然と抗議をしたことから緊急ミーティングが開催される運びとなった。
「わかってねぇ! わかってねーよオールウェスト?
こういう時に女子と親睦を深めないでお前はいったい何をするつもりなんだ?
いいかオールウェスト? 学祭ってのはなぁ! そんな軽い気持ちで参加していいもんじゃねーんだよ! 喰うか喰われるかだ! そんなんだから楠ごときに先を越されるんだオールウェスト!」
「……とりあえず落ち着け森山。俺は只の西だ。全国の西さんの集合体みたいに言うんじゃねーよ。じゃあよ、森山には何か良い案でもあるってのかよ?」
毎回思うんだが、コイツはいつも俺を話題に巻き込むんじゃねーよ?
つか、ごときってなんだ、ごときって。たかだか森山ごときの分際のくせに。
「よくぞ聞いたウェストB代表。
こういうのはな? スムーズな会話と自然なボディタッチ。そこにさりげない異性の魅力のスパイスを塗すのがベターだ。
いいか?あくまでベターだぞ!けしてベストではないんだ。なぜなら――」
「うるせーな、もう。いいから早く本題に入れよ? ウザくてかなわん。それより何でB代表に格下げした?」
「ちっ。ロマンを介さないヤツが悪いんだぜ?」
森山が言いたいことをまとめると、俺たちの得意分野は言うまでもなくサッカーだ。
ユニフォームというのもポイントが高い。鍛えられた筋肉をユニフォーム越しに感じてもらい健全な男子高校生のの魅力をアピールする。
そういったスポーツマンが紳士的に対応するギャップの世界。それを利用したホストクラブ的なモノをしたい、という事だった。
当然ながら司の許可は下りない。司と言うより代理人の望月が首を縦に振るわけが無い。無論、監督だって報告の段階で門前払いされるのが目に見えているのだが、アホなコイツは理解していない。
「だったら! だったらキックターゲットみたいなのはどうだ?
サッカーやったこと無い女の子でも上手くゴールできるように配慮してさ? 楠飛ばせりゃいいだろ? 良い感じにゴールの演出出来るし、な、お前得意だろ? 商品とかも付けてよ? なんなら女の子には俺が蹴り方講座開いてもいい。な? 楠も反対しないよな?」
……お前さ。俺を小道具か何かと勘違いしてないか?
それにその執念は一体なんだ? 一体何がお前をそんなに駆り立てるんだよ。結局の所、単に女子に触りたいだけじゃねーか?
「……じゃあこうしよう。キックターゲットとたこ焼きをやればいい! 部員は多いんだ、何とかなる。キックターゲットは予算必要ないし。楠と桜井を的にすればいいし。な? 良いだろ司? たこ焼きを女の子の口に『あーん』ってゴールする。いいと思うだろ、お前も?」
すでに欲望を隠さなくなった森山の発言に女子マネ達はどん引きだ。
普通に男子部員でさえ『うわぁ……』と声が漏れている。
見た目そんなに悪くないコイツが何故モテないかを強烈に実感させられた瞬間でもある。
お前は私生活でも枠を外しすぎなんだよ……。
女子の情報伝達能力は凄いからな。明日には伝播して『森山先輩サイテー』となっている事だろう。
ま、キーパーを的扱いしている時点で同情はしないけど。
「お前がたこ焼きをそんな風に考えてる事、次会ったとき小岩に言っとくな。また代表で一緒になったら、相部屋はきっとお前が指名される事だろう」
氷高がうんざりした口調で上げた名前に森山がビクッと反応する。
『小岩 丈』。あだ名はディープ。小岩⇒お前キャラ濃いわぁ!⇒ディープへの流れだ。
現大阪光蔭のキャプテンを務めるそいつは、三年前のジュニアの優勝メンバーの仲間でムードメーカーでもあった奴だ。
長身の割に何気に足元もそこそこ上手くて、向こうでは『器用なキリン』とか評されていた中盤のオールラウンダーだ。
相変わらずヨーロッパ式のニックネームは褒めてるのか分かりづらい。
もっともコイツの問題はそんなことより『極めてうざい』キャラクターである。
こんな森山でさえ『高原の岩清水』と感じるくらいにネットリ感満載。
イジってイジラれる愛されキャラではあるのは間違いない。
だが、とにもかくにも暑苦しさ満開で一緒にいるだけで疲れるので『遠くで見てる分には面白い奴』というのがアンダーの時の皆の評価でもある。
とにかく相部屋になったヤツは漏れなく『うるさくて眠れない』とか『暑苦しくてウザイ』と口を揃えるほどのナイスガイだ。褒めてねーけど。
「!? 氷高? いや……氷高君? それはちょっと無いんじゃないかな? つか、お前アイツと喋んの?」
どっちかと言うと、正直そっちの方が驚きだ。全くと言っていい程に性格が真逆すぎる。
「ああ、喋るぞ。『おい水』とか『お茶無くなったんだけど?』とか」
「そ、それは……」
パシリなんじゃないか? という言葉をおそらくみんな飲み込んでる最中だろう。
「そ、それで小岩は何て言うんだ?」
「ん?『ちょっと待っティーや』とか『ウォタウォタしないで待ってて』とか……言うな。いつも」
(うわぁ。切れ味なさすぎだろ! 親父ギャグなのも辛い所だが、小岩なりに頑張った所も見て取れるぶん切なさが半端無い。
「多分、ソレお前に反応して欲しくて言ってるんだぞ? ちゃんと返してやってるのか?」
「ああ。『ハリー(急げ)』とだけな」
「つめたっ!!」
「……えっと、時雨に森山? とりあえず、話を戻したいんだけどいいかな?
学祭の出し物なんだけどさ? 森山の提案は動機さえ忘れてもらえれば『それでいいかな』とは思うんだけど。あんま大変なことして練習に影響出るのもあれだし。他に意見があれば聞くけどどうかな?」
司の提案に、
「いいんじゃね?」と西。
「俺はなんでも」と氷高。
「たこ焼き食べたい。……不破もそれでいいって。……ん? プロテインは入れないよ不破」
「俺も的やらなくていいなら、それでいいぞ」
ちょっと途中に気になるフレーズが出たが、そこは八神に任せておくとしよう。
「よし。じゃあ決まったことだし、今日は練習にしよう」
司の一声で部員が慌ただしく部室へと移動を始める。
☆☆☆
「あのー? 男の人って、みんな森山先輩みたいな事考えてるんですか?」
移動の最中に芝浦から質問が投げられる。
「あそこまで変態なのは多分、森山位だから変な心配しない方が良いぞ?」
「で、ですよねー」
と、少しホッとした表情を見せた芝浦は「じゃ、失礼します」と言い残して、女子マネージャーのグループへと走り去っていった。
特にイベント以外、曜日の概念は入れてません。
メインテーマは『ノスタルジー』で、序章のテーマはその時代の『共通認識』でした。
五千円札が違ってたり副審ではなく線審だったり。
まだ書いてませんが、ここ鹿島だけでも鹿嶋市になったり、数年後にスタジアムもは改築されたりと色々ありました。
まぁ、そんなこんな2章の始まりです。今後ともよろしくお願いいたします。
※桜の開花宣言のニュースに驚いたのは、ある意味初めての経験だったかも……。ストックが選手権本番までいってねー(泣)。




