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おい!今度の行き先はサッカー漫画だってよ!?  作者: 赤星べお(※完全なPNにしました)
章の隙間 ~モツ煮とハム焼きとビールの時間~
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某フリーライターのメモ 『その男、皇(すめらぎ) 司(つかさ)につき』 

 ストック溜めの間のお目汚しです。


 楠視点での話のため、他のメンバーのネタバレ以外のちょっとした設定などを上手く伝えづらいと思ってまして、序章中に幾つかの視点でのプロットを考えていました。


 洋二先生からのジレンマの説明も本筋に入れると説明文過ぎて堅くなりすぎてしまうので、こういった形でお披露目しようと思っています。


 あとは、序章に入れられなかったヤツを幾つか編集して投稿したいと思っています。


 寝て起きて、飯食ってサッカーして飯食ってサッカーして飯食って風呂入って寝る。

 

 『自分の一日を文字で現して』と質問したときに、何とも言えない満足感と子供の予定の様な未熟さを実感して苦笑いを浮かべる青年。

 襟足をそろえただけの髪に端正な顔立ちと言っても良いが、より逞しさを感じる表情。


 178センチの身長に鍛えられた身体。それが日焼けで黒く映え逞しさを精悍に彩るその姿は筆者から見ても青年としての素晴らしい魅力を持っているように感じる。


 

すめらぎ つかさ



 いずれ日本サッカーの未来を担うことは間違いないと言われているサッカーの寵児である。


 技術・フィジカル・スピード・判断力など、おおよそフットボールの世界において必要とされる全てを高次元で兼ね備え、同世代で限定すれば世界的なタレントと言って差し支えない一世の俊英。今後の日の丸にとって、まさに眩しい朝日の如く輝きと恵みを期待される男である。


 『もしもブラジルやイタリアなどで生まれていればすでにトップリーグで華々しい活躍をしていただろう』と無責任な有識者は言った。


 ヨーロッパの有名なサッカー誌は『神はマルコの次に彼を作った。でも、あまりに久しぶり過ぎて生まれてくる国を間違えた』と残念がった。


 『ボールは彼の為に転がる』と評された皇のページは同世代に限らず大きな衝撃を与え、その存在をひときわ神格化させ、やがてその存在は本人の意図しない形での独り歩きをさせた。




 ……そんな世界的なタレントでもある彼の苦笑いのもとになっているのは、なんの事は無い。期末テストの結果である。


 自らの日常を振り返って、もう少しだけ勉強に時間を割いても良かったかな? と反省している姿はその辺の高校生と何ら変わるとこはない。

 せめてテスト前だけでも教科書を開けば良かったと二学期には忘れているであろう教訓を口にするのも微笑ましく見える。


「あんま言いたく無いんですけどね。勉強する時間って取らなかったから、テストはあんまり良くないんですよ。流石に留年はしないと思いますけどね(笑)」


 サッカーの神に愛されたと世界が評した男が『俺、もしかしたら卒業できないかもしれない』という悩みを抱えていることはどんなゴシップ誌も捉まえていない極秘情報と言えるだろうか。


「授業中はどうしてるの?」という筆者の質問に彼が言った答えはとても教師に伝えられる物では無かった。


 彼は授業中、常に空想の世界にいる。世界中の有名選手とイメージの中で試合をしているのだ。幾つものバリエーションを試しながら、どうやったら上手く勝てるかをシミュレートしながら。その緻密さは、もはや作業と言っていいだろう。

 同時に22人を把握しながら自在に試合を想像し、必要とあれば実況・解説まで付けて臨場感を出している。そういった中で自分がプレーしているイメージをより鮮明化して、今後の準備としているのだという。


「このままでは卒業できないからプロ目指すんだと思われそうで……。

 さすがにちょっと……、それは勘弁ですけどね」と苦笑いを浮かべる顔に深刻さはあまり見られなかった。


 そんな彼の傍には常に一人の女性がいる。


 望月 香菜絵かなえという同級生だ。幼いころから常に一緒で片時も離れない彼女は、男性陣からは『生まれながらのヒロイン』と呼ばれ、女性陣からは『司君のSP兼ストーカー』と認識されている。


 とはいえ、本人たちは至って幸せそうであり他者が割り込むスペースはない、と周囲の友人は語っている。

 聞くところによると『カテナチオ望月』と評された彼女のカバーリング能力の高さは群を抜いており、圧倒的危機察知能力と侵入者をスウィープする力強さも兼ね備えているらしい。


 皇のDFとして、彼女もまたワールドクラスのタレント性をいかんなく発揮するのは、ラインを突破してくるライバルや他校のファンを相手にする時にこそ輝くとの事だ。


 近づいてきた者には体を入れて邪魔をし、手紙や電話と言った飛び道具には一度自分を通すように皇に話を付け、必要以上の突破を見せるアプローチは『オフサイド』として否定する。こういう時の皇はただのラインズマンとなる。彼女がオフサイドと言ったらオフサイドなのだ。絶対的ライン統率者であり主審でもある彼女の判定は覆らない。

 皇まで届くファンレターは彼女の厳しい検閲というオフサイドラインを越えたモノだけである。とはチームメイトのN君の言葉だ。

 

 最近ではその知名度と人気の割に女性ファンが少ない事の原因として彼女の所業と言われているが本人は全く気にしていないようだ。

 

 それどころか、サッカーに専念できると喜んでいる節さえあるという。そういった意味では、彼女は良い意味でのマネージメントをしていると言えるのかもしれない。


そんな皇だが高校選手権の終了を待って、イタリアセリエAに挑戦するという噂がまことしやかにささやかれている。一部では冬のマーケットでの入団はもう決定しているとさえ言うジャーナリストもいる。

 

 やれイタリアだ、ドイツだ。どこの名門チームだと騒ぐ輩もいるが、おそらくイタリアの中堅チーム辺りになるだろうとは彼に近い関係者の言葉だ。どのくらい近いのかは知らないが。


 弱いチームで守り一辺倒のカウンターのみでは彼の良さは生きないし、競合チームに行ってもヨーロッパで何の実績のない日本の若者が強豪国の代表選手を差し置いて試合に出してもらえるほど甘くはないだろう。


 そういう意味ではリーグ中位というのは環境的には好ましい。

 上もいれば下もいる。それにメディアの目もそれほど厳しくも多くも無いだろう。

 欧州リーグやカップ戦への出場権を義務化されている訳でもないし、かといって降格の心配もない。

 スタートとして慣らすには丁度いいだろう。


 今回の接触では、その辺りの情報を聞き出すことは出来なかったが、国内チームのスカウトを全て断ったというのは聞いている。間違いなく海外挑戦というレールは敷かれているのだろう。


 個人的な感想だが、彼は一日も早くヨーロッパに行きべきだと思う。

 若い世代では日本はそれなりの成果を出すことは出来ている。Jr世代で海外と良い勝負をするのは彼たちの世代だけでは無い。

 

 それなのにフル代表となると一気にその立場は『サッカー途上国』へと転落してしまうのは『その後の成長』という部分に差があるのではと思う。


 世界でトップを取った若者たちがそのまま世界を相手に成長していける環境に進む。それこそが日本代表の本当の強化になるのではないか、と思うのだ。


 そのために『皇 司』――。


 彼のような『ル・ロア(王)』がまずオピニオンリーダーとして若い世代の扉を開けてくれることをただただ願うばかりだ。



  

            <この項、了>


 

※マルコとはオランダの有名なFWのことです。『神は八日目にマルコを作った』と言われました。また、矛盾点を発見したので修正しました。


 最後に、以前も書きましたが2章は全国選手権終了までを予定しています。結構長丁場になるかと思いますが、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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