11.5話 早く明かりを消した夜は……
口やかましい姉を追い出し、俺は結構早い時間から部屋の明かりを消した。
これは、疲れてもう眠いから構わないでくれという意思表示を表したつもりだ。果たしてあの姉に通用するかは別の問題なのだが、疲れているのは間違いないので扇風機のタイマーをセットして横になる。
あんまり気にしなかったけどこっちの世界ではエアコンのない部屋が割と普通だ。慣れとは面白いもんで、今では別にエアコンが無くても結構大丈夫になってきている。
本来の俺が倒れたのは熱さだけで無く栄養や虚弱と言った複数の問題もあったんだろうが、こっちでは実家暮らしの運動部という事で信じられないくらい健康優良児でもあるのだ。
意図しない早すぎる就寝に睡魔が来るまで、もう一度この『太陽のストライカー』という世界のことを知ってる限り忠実に思い出してみることにした。
☆☆☆
まず主人公は押しも押されぬ『皇 司だ。
ストライカーというタイトルのくせに中盤に下がってしまったのは現実のサッカー人気に合わせたからだろう。なので太陽にちなんだ必殺シュートを覚えさせられることになる。『サニーライゼット』(サンライズとサンセットを合わせた造語)とか言う日の出から日の入りまでの軌道を描く無回転シュートだ。『無回転のくせに軌道同じかよ』というツッコミに対してのエクスキューズは、キーパーだけが感じる独特の変化があると公式が後から付け加えている。
あ、選手権終わったら、すぐイタリア行くんだっけか。多分もう水面下では話が進んでんだろうなあ。知らないフリしてなきゃダメだよな、やっぱ。赤と紺みたいなユニフォームだった気がするんだが、何処だったろう。
……。
ま、いっか。
流れとしては、小学校からの仲間である俺たちと全国少年サッカー大会や全中大会と順調に優勝。そのままJrユースというお約束の流れを踏襲し世界一になるといった司の為の展開だったはずだ。
他にも小学校編までは嶺葉 友里という司と同じ言語を話すMFがいた。でも仲間が強すぎると『司のおかげ』感が薄まる的な大人の事情だろうか。静岡だかに引っ越していった。
そのあとに『氷高 時雨』が補強されたのは中盤の引き立て役に八神には悪いがアイツでは華が無いと判断されたからだろう。
そしてもう一人。この楠の心の師匠でもGKの松永 芳佳。
中学2年の終りに都内の有名私立からスカウトされ転校していった彼は努力と向上心という少年漫画の王道的キャラクターだ。最初は仲間として登場し、強敵として立ちふさがる役割だ。まぁ、松永がいなくなったことで中学三年時に楠が繰り上げで試合に出れるようにしたのかもしれないな。おそらくは、担当当たりの考えだろうが……。ありがとうございます。
そんな強キャラの松永も、早めに仲間になる(戻る)ため強めのステータスダウンを引き起こしてしまう。きっと安曇にレギュラーを譲るという流れまでお約束なのかもしれないな。
彼を呼ぶときは『松永君』でありご機嫌を伺いながら話をする。楠は子分としての分をわきまえなければいけないらしい。
あと国内のメジャーどころはイケメンボランチの虹野 洸哉か。仲良しの八神とはJリーグのチームでも薄い本とかでも一緒に活躍の場を広げてた覚えがある。
筋肉シューターの玖珂 玲央は、現実には一番会いたくないFWだ。
小学生時に対戦相手のキーパーの手を次々と粉砕していく様は日本中の子供達にトラウマを植え付けキーパーをやりたくないキッズをを普及させてくれた。もちろん当時の俺もその一人だ。
スタメンと控えキーパーの負傷。次々とフィールドの選手がマジで嫌がったり泣きながらキーパーに入る。その一人一人を負傷退場に追い込んでいき、規定人数割れでの勝利というエピソードも狂気以外の何ものでもない。ナチュラルに人体を破壊する事が出来る超危険人物だ。そんな玖珂も流石にPTAの苦情には勝てなかったらしく、中学以降は『少しやんちゃしてました』位に軌道修正されたのは大人の事情が垣間見れた事案だ。
あぁ、外人にも有名なのがいたな。
イタリアのFW『シニョーリ君』は日本に負けたことで、『司に勝つため』と向こうのプリマベーラを辞めて日本の高校に来てしまう暴挙を披露してくれる。多分人気投票が高かった影響だろう。登場回数確保のためにキャリアを捨てるダンディーさは決して頭が良いとは思えない。それに司、イタリア行くからちょっと待ってれば向こうで会えるじゃん。
そういえば、ドイツのクリシュナーダの左足から放たれるシュートは感電すると評判だ。
楠はかすりも出来なかったから無事で済んだが、安曇が無事だったのは放電体質なのだろうか。もうここまで来ると原理が分からんな。なんか静電気みたいなの出してんのかもしれない。
もしコイツと試合するときはゴム手袋にして貰おう。んで、雨が降ったり通電しやすい時は仮病だな。どう見ても危険物取り扱い的な免許無い人は扱っちゃ駄目なケースだ。
なんつーかあの時代はイタリアサッカー全盛期でイタリアのリーグ絡みが多かった気がする。
そういや代表守護神の安曇もサンプドリアのプリマベーラに行ったんだっけ。多分今年か来年位にはトップ昇格するんだろうけど、ヨーロッパでの就労条件とかってどうなんだろう。イングランドは厳しいとは聞いたことあるけど。ま、その辺はご都合主義に合わせて上手いことやるだろうから大丈夫だろうが。
他にも世界各国の優秀な選手達と仲良く『うわぁ』と『なにぃ』でコミュニケーションが取れる。やはりサッカーは世界共通の言語なんだろうな。若干、言わす方と言わされる方で言語に違いがある気もするが、そこは気のせいということにしておこう。
楠の方の深い記憶を辿ることは思ったより少ない。
手前の方のよく覚えてる事ならまだしも、奥の方の記憶を探るのはとーっても面倒くさい。
例えるなら大きな図書館でアバウトに本を探すような作業を脳内で行う。
時期やジャンル、関連人物、対象の場所などの検索ワードから、一冊の本を見つけるといった感じだ。
無いものはすぐ無いとわかるからいいけど、あればあったで探すのだるい。
そんな事を思っているうちに、睡魔が段々と襲ってくるのを実感する。良かった。姉の妨害は入らなかったようだ。俺はそのままの流れに身を任せ、深い眠りへと落ちていった。
U17、U18は楠の立場上あまり広がらない事(どうせ3番目ですし)、選手権や受験等等の事情でカット。基本的にクラブチームのユ-スチームが選ばれていると設定しています。ワールドユース(現U20ワールドカップ)の世界観は同じ予定です。現実とアニメやゲームの狭間っていいとこ取り出来そうで、なかなかそうもいかない部分も多いですね。最初の段階ではOKだと思ってた部分が消えていくのは寂しいもんです。
ともかく今後ともどうぞよろしくお願いします。