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おい!今度の行き先はサッカー漫画だってよ!?  作者: 赤星べお(※完全なPNにしました)
 序章 スケープゴートへの転身。そして、それから……。
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11話 人生にはいろんな選択肢があるのに選択できたためしがない


「もしもし?」

「あ、楠先輩? 見かけによらず安心毛布が好きなんですね」

「……くっ。他言無用でお願いします」

「もちろんですよ(笑)」

「別に笑わなくてもいいじゃん?別にそんな変でもないし。別にいいんじゃん?」

「先輩……、『別に』が多いです」


 芝浦の声が少し籠ったように感じるのは電話特有のものだろう。

 なんか家の電話の受話器から聞こえる声って逆に何か新鮮でいいな。


「んで、どうした?親父さんの怪我が悪化したのか?」

「そんなんじゃないですよ。それだったら別に放っときます」 

「じゃあ何だ?俺に新しい毛布でも買ってくれるのか?」

「……先輩って結構根に持つタイプなんですね?

 じゃなくて! お父さんに準備できたから楠先輩を呼んでくれって頼まれたんです!」

「準備?」

「はい。映像とかなんか色々集めてましたよ。『時間かかってごめんねー』って伝言も頼まれました」


 なんの映像だろう? 流石にラテンのリズムじゃないだろうし、キーパーのセーブ集みたいなモノかもな。


 頭の片隅で先日の森山の映像が浮かび上がる。

『いいのか、お前らこのキューセッキン!きっと楠、発情期ー!』


 ……どの角度から見ても頭悪い感じだな。確かに急接近と言われりゃそうかもしれないけど。実際は芝浦と言うより、親の方に用事がある感じだしな。


「なので先輩。明日部活お休みになりましたよね。予定なんかあります?」


 無い。でもなんか予定無いって言うと『友達いないんですか?』とか『暇人なんですね』とか思われそうだしな。しょーもない見栄だがなんと答えていいものか……?


「なさそうですね?」

「うっ――。何も無い……かもしれない」

「じゃあ明日、一時になだ駅に来てください。遅れちゃ駄目ですよー?待ってますからねー。ではおやすみなさーい」


 ガチャ……。


 なんだよ?言いたい事だけ言って電話切りやがった。普通に一時に病院行くだけじゃダメなのか?こっちから電話しようと思ったけど俺は芝浦の連絡先知らない。あ、でも病院だからすぐ調べられるか……。つか、なんで俺んち知ってたんだ?


 携帯とかスマホ無いとやっぱ不便だな。えっと前はハローページとかタウンページとかで調べてたんだっけ?


 電話の辺りを見渡していると不意に背筋に悪寒が走る。視線だ。


 まさか? バッと後ろを振り向くと、案の定壁から顔を半分だけ出した姉がいた。


「なにしてんだよマイシスター? その格好、妹見たら泣くぞ?」

「だってライナスが大人になってしまったんだもん。お姉ちゃんは悲しくて悲しくて……」

「ピーナッツ食い始めたと? それと、勝手に人をライナスにすんな」

「!? なぜばれたし? 電話の前からも食べてたけど」

「……、足下に落ちてんぞ、物的証拠」


 慌てて落ちてるピーナッツを拾うアホな姉を放置して二階の部屋に戻る。


 そういや芝浦の電話番号を探す作業は中断になってしまったな。でも多分、あの場にいたら『どんな子なの?』とか『付き合ってんの?』とか『一回家に連れてきなさいよ』とかとかとか……、めんどくさい事情が始まるのが目に見えている。さっさと撤収したのは正解だろう。


 基本的に楠家は全員仲は良い。おそらくは設定すら無かったのが原因だろう。

特に目立つ所もなくただただ普通の一般家庭といった感じだ。仲睦まじい両親、中身はアレだが綺麗な姉とかわいい妹で成り立っていてある意味恵まれた環境とも言える。


 ただ要自身の記憶を辿ると小さいころに姉に『おままごと』と称して散々女装をさせられていたようで、姉には深層心理で苦手意識が残っているみたいだが。


 よって『暑いから』とノーブラタンクトップで歩き回る姉に対しても本能的に距離を空けたくなるのだ。


 中身は他人の俺がそんなシチュエーションに全く心躍らないのは要自身の強烈なトラウマと不屈の倫理の心が俺のエロスよりも遙かにまさっているからだろう。


 それでもついつい見てしまうのはもうしょうがないのだ。男子たるもの、胸に出会えば即ち刮目して相待す、と昔の人も言っていたような気がするし。


「かなめ入るよー?」

「協会通してください」


 ガチャっと音を立ててドアが開く。


 最初に目に入ったのは黒のタンクトップの胸元が揺れるシーンだ。

 

 あぁもう――。ごめん楠。やっぱり見ちゃうわ。でも心配すんな。この記憶は絶対に持って帰ると誓うから!決して俺の為じゃないぞ。楠、お前の為だからな。本当だぞ。


「……。あのー瑞希姉さん?俺の返事聞こえてました?」

「うん。どうぞって」


 無駄か? 無駄なのか?この人は意思疎通というモノが通用しない人種なのか?


 そのまま笑顔でズカズカと部屋に入った姉は、当たり前のようにベッドに腰掛ける。


「いやいや。何?何? 何の用?」

「ピーナッツ持ってきた」

「頼んでねーし! つか、なんでピーナッツ持ち歩いてんの? あーもう!ベッドで食うな!」

「いやいや。最近なんか弟がちょっと変わったなぁ、と思ってたらさ(バリバリ)。いつの間にか彼女なんていたみたいで(バリバリ)。あー、そういう事ね、なんて思ったら(クチャクチャ)、これは詳しく話を聞かなきゃと思った(ゴクン)訳よ」


 とりあえず……、食いながら喋んな。あとそのピーナッツ俺に持ってきた奴じゃないの?何で一人で食ってんの?おかしくない?いっぱいブツブツ出来て後で泣け。


「何言ってんのか全然わかんないから。彼女なんていないし。さっきのはマネージャーで相談している医者の娘でもあんだよ。そんで、その先生からの呼び出しを娘が代わりに電話してきただけだよ」

「その割には親しそうに見えたけどなー?彼女、あんたの子供の頃の話『もっと聞かせてください』って言ってたし。普通、興味ない奴の昔の話なんて聞きたくもないもんだけどねー?」

「何が言いたい?っていうか、もう何も言わないで欲しいんだけど?!頼むから」


『えーでもー』とうるさい姉を無理矢理部屋から追い出す。

 

 どうも楠には女難の相でもあるのかもしれない。


 ホントお願いだから選手権が終わるまでは本業に集中させてくれ。




 タイトルはそのライナスさんの名言の一つです。

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