88話 アイツは駄目な奴とレッテル貼られたって
いくら素晴らしいセーブをしても、試合が終わった時のスコアがすべてだ! カシージャス
ふむう……。
あのまま特に点の動きは無く、4対2での勝利が決まった。
悔しさで泣くかと思われた富良都は何故かスッキリとした表情で空を見上げている。
むしろ、勝った側の内村の方が何やら消化不良の様で複雑な表情を隠せていない。
一見、どっちが勝った側か判別しづらいぐらいにコントラストは分かれている。
「ありがどうございまじだぁぁぁ(怒)!!」
全然、有り難く思ってないだろう内村の声が響く中、センターサークルでの挨拶が終了した。
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「今日は、本当にありがとうございました」
さっきの内村とは全く真逆の爽やかなお礼を司に言いに来る富良都。
「こちらこそ。一点目凄かったね。普通に軌道、見惚れちゃったよ」
「本当ですか? 司さんにそう言って貰えると嬉しいですね」
試合前のギラギラはどこへやら。一転して和やかに握手する2人の十番。
……そして、視界の片隅にチラチラと映る内村のメンチぎり。
もう放っておくことにして、八神たちとベンチを経由しながらスタンドへ行って応援組に感謝の挨拶をしに向かう。
「瞬~! 良かったわよ!! 要君もお疲れ~」
「ちょっと要、二点目のは止めなさいよ~!!」
上を見ると、うちの姉と八神の姉の姿が見える。送られてくる言葉は対照的だが、ここまで応援に来てくれた事にまずは感謝だ。
「要求高いな、お前の姉ちゃん。監督だって、アレは足止めたDF陣に怒るぜ?」
「ま、しゃ~ない。こっちもこっちでちゃんと声かけなかったのもあるしな……」
西に肩を抱かれながら、スタンドに手を振って軽く頭を下げ、ベンチを見れば監督のインタビューが行われており、カメラを避けるように奥へと引き上げた。
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さて、今大会、初めての失点と二つ目の失点が記録されたわけだが――――、
一点目に関しては、「あれはもう無理」という感想しかでない。姉ですら止めろ、と言わない鬼畜仕様のゴールだ。安曇やヘルナンジーニでワンチャンあるか……ってトコだろう。
中へ上げてくる、と思考を固めてしまったのがマズかったのだろうが、ハッキリ言ってアウトスイングにかけながら角度ゼロで横断するようなループなんて、そんなもの来ると準備してる方がおかしいレベルだろう。
二点目は、もう少しポジショニング前に行っても良かったかな、という所か。そうすればもう少しコース限定出来たかもしれん。あとは、アウトオブプレイの時の声掛けも必要だな。
他に何かあれば、バウジールから小うるさい電話でも来るだろ、と短い反省を終わりにする。
同じミスをしない様に深く心に刻めば、落ち込む必要なんてない。
特に今回に関しては、二点ともキーパーから見てノーチャンスの部類だ。バウジールだって許してくれるだろう、……きっと。
それに、あんな毒の抜けた富良都を見たら、ここは素直に認めるしかないしな。
味方として、頼もしい後輩が更に頼もしくなることへの期待―、
そして、敵としては、今後層手ごわくなるライバルに少しだけ思いを馳せつつ、ドレッシングルームへと進むのだった……。
最近、視力低下と老眼が進みましたw試合中、動いてるボールならまだしも、遠くにいるメンバーの顔や背番号がわからなくなってきました。あ、あと距離感もずれてきましたね。
世代近いメンバーでやっているので、最近はみな、「健康診断引っかかった」とか「ピロリ菌見つかった」や「石が出来て大変だった」などの話が多くなりましたw このメンバーでやれるのもあと数年かなぁ、なんて思いながら、それでも一緒に年を取りながら好きなことを出来る仲間がいることに、最近は感謝する気持ちが多くなりました。年取ったせいなんだろうなぁ……w