第五話
「サンタさんが持っているプレゼントを渡すと、その時点でサンタさんはサンタさんじゃなくなる。だから私たちで力を合わせて、冬の女王様へのプレゼントを作ってあげるの! 国の皆にも協力してもらえば、きっとできないことじゃない!」
目を輝かせながら、春の女王様は語ります。
「でも私たちだけで行っても、冬の女王は信じてくれないと思う。そこで、サンタさんとソリの出番! トナカイさんたちに引いてもらって塔まで行って、「プレゼントを持ってきたよ」って渡してあげれば、きっと冬の女王は喜んで出てくるはずよ!」
春の女王様の提案に、他のみんなも頷きます。
「なら私が、冬の女王から欲しいもん聞き出して皆に協力してくれるように頼むよ!」
「私は絵でも服でも、大体のものならなんでも作れるので、プレゼントづくりで全面的に力を出します」
「儂はトナカイたちに事情を説明して、ソリをいつでも引かせられるように準備しておきましょう」
皆が、意気揚々と自分の役割を決めていきます。
「私は……」
と、そこで春の女王様は困りました。彼女は人当たりもそこそこいいですが、あまり人との交流が得意ではありません。手先もそれなりに起用ですが、作ったものはどれも少しだけいびつになってしまいます。
自分は何をしたらいいのだろう。春の女王様は悩みます。
「春の女王様は、私たちの手助けをしてくれないかな?」
「……手助け?」
夏の女王様の言葉を、春の女王様はオウムのように繰り返しました。
「はい、例えば夏の女王が皆に説明するときに至らぬところに補足を入れたり」
「秋の女王が作るものの材料が足りなくなってきたら持ってきたり」
「すみません。これは悪く言ってしまうと、下働き、というものになってしまうかもしれないけど」
申し訳なさそうに付け足す秋の女王様に、春の女王様は首を横に振りました。
「謝ることじゃないよ。二人と一緒に、冬の女王のためのプレゼントづくりで何かできるのなら、私はそれを精一杯やるよ!」
春の女王様の言葉に、二人の女王様の目が少し潤みます。
「よし! そうと決まれば、早速冬の女王の所に行ってくるわ! その後は春の女王、一緒に国のみんなを説得しような!」
「ええ! そうね!」
サンタさんを含めた四人は、その場で円陣を組みました。
夏の女王様が掛け声をかけます。
「冬の女王のために、クリスマスプレゼントを作るぞー!」
「おー!」