第一話
昔々、あるところに、とても不思議な国がありました。
その国には、春、夏、秋、冬、それぞれの季節の女王様がおりました。
女王様たちは決められた期間、交替で『季節の塔』と言われる塔に住むことになっています。そうすることで、その国にその女王様の季節が訪れるのです。
ところがある時、いつまで経っても冬が終わらなくなりました。
冬の女王様が塔に入ったままなのです。
辺り一面雪に覆われ、このままではいずれ食べる者も尽きてしまいます。
国の皆を心配した三人の女王様は、季節の塔へと向かいました。
「冬の女王ーー!」
三人は声を合わせて塔に向かって呼びかけます。
しかし、中からの返事はありません。
「冬の女王、もう交替の日は過ぎてるのよ。どうして出てこないの?」
春の女王様が優しく問いかけます。
すると、中から小さく何か聞こえてきました。
「クリスマス……」
最後の方は声が小さくなって聞こえません。
「クリスマス……なんて?」
夏の女王様が聞き返すと、
「クリスマスプレゼントが来なかったの!」
と、扉の前でも耳が痛くなるほどの叫び声を上げました。
しかし冬の女王様はもうだいぶ年を取っているはずです。
クリスマスプレゼントがどうのという人ではありません。
それに加えて、彼女の声はいつものようにしゃがれておらず、高いです。
三人の女王様はどうしてだろうと悩みました。
すると、
「あ、そういえば」
秋の女王様が何かに気付いたようにぽっと言いました。
二人の女王様に、こいこいと手招きをすると、小さな声で言いました。
「今年から、冬の女王様は代替わりされたんだった」