『商品No18猫試練』 商品ランク☆
痛い、痛いよー。
僕は誰もいない路地裏に倒れていた。
体が動かない。かろうじて頭を動かして、空を見上げる。
コンクリートの壁で切り取られた空はとても青かった。
僕はオス猫だ。また今日も体のデカイボス猫に派手にやられた。
噛まれて、引掻かれて、小便をかけられた。
でも、どうしようもないんだ。僕が何回立ち向かってもボス猫にはかなわなかった。
しばらく休んでいたら体がようやく回復してきたので家へととぼとぼと僕は帰った。
「またやられたのか!」
僕が帰ると、僕のパパが僕に猫パンチで殴りかかってきた。
僕はその強烈な猫パンチで数メートル先まで吹っ飛ばされた。
「い、痛いよ」
「泣き言を言うな! 情けない。お前は本当に俺の子供なのか? やられっぱなしで」
「で、でも。あのボス猫は本当に強いんだよ」
僕が言うと、パパの強烈な猫パンチが再び僕に飛んできた。
「お前はもう俺の子供じゃない。とっとと俺の前から姿を消せ!」
パパはそう言うと、僕を家から閉め出した。
そ、そんな。僕はまだ生まれて数ヶ月で、餌すらも自分でちゃんと取ることが出来ないっていうのに、ひどいよ、ひどすぎるよ。
僕が途方に暮れていると、僕の前に僕より年上と思われる猫が現れた。
「影からお前のことを今、見ていたが大変だったな。だが、これからはもうお前は一人で生きていかなければならないんだ。本当はまだひとり立ちには早い時期かもしれないが、追い出されてしまった以上お前は自分の力で生きていかなければならないのだ」
「でも僕にはまだ一人で生きていく自信がないよ」
「自信があろうがなかろうが、やるしかないんだよ。いつやるの? 今でしょ!」
「う、うん。僕やってみるよ。でもなにをすればいいんだろう?」
「実は俺はそんな迷える猫の為の案内役をしている者なんだ。お前が成長出来るために試練を与えようじゃないか? 受けるか?」
「う、受けるよ」
「そうか」
「どうすればいいの?」
「山に行ってある物をとってくればいいのだ」
「ある物?」
「ああ、山の頂上の岩の下にある本を取ってくればいいのだ。それを持ってきたら合格だ。その時はもうお前は立派な一人前の猫になっているだろう」
「そ、そうなの」
「ああ、その時はもう一人で餌を取るのなんて朝飯前になっているだろう」
「僕頑張るよ」
「ああ頑張れ、そして親父を見返してやれ」
「うん」
そうして僕は山の場所を聞いて山を登り始めた。すると山を登り始めてすぐの所で昼寝をしている猫を発見した。
「君、こんな所で何をやっているの?」
「あー、山の頂上に本があるっていうからやってきたんだけど、なんか面倒臭くてね」
「君も僕と一緒なの?」
「お前も本を取りに来たのか?」
「う、うん。本当は凄く怖くて不安なんだけどね」
「じゃあ、やめちまえよ。ここでも十分に暮らせるぜ、人間が捨てていった残飯とかを漁ってな」
「で、でも行くって約束しちゃったし」
「約束したって関係ないよ。どうせそいつもお前のことを対して知りもしないで適当に言っているだけなんだよ。な、いいだろう?一緒にここで暮らそうぜ。俺も仲間の猫が誰もいなかったんで退屈していた所なんだよ」
「そういえば取ってくる期限なんて聞いていなかったなー」
「じゃあ尚更いいじゃないかよ。少しぐらいここで暮らしても」
「うーん。そうかなあ」
僕は悩みに悩んだ結果、その猫と少しここで暮らすことにした。友達もいない猫の為に一緒にいてやろうと思ったのだ。
その後、僕と同じように試練に来た何匹もの猫達が、僕を山の頂上に誘いに何回か来たけれど、僕は断った。成長したい気持ちと、変わりたくないという気持ちが混合していて、結論を出せないでいたのだ。
そんな日が続いていたが、僕はあることを耳にしてしまった。
僕と一緒に暮らしていた猫がいなかったので、心配して探していたらその猫を発見した。
声をかけようとしたけれど、とても遠かったので、近くまで行ってから声をかけようとした、でも僕の友達の猫はどんどんと僕の知らない道を進んで行った。だんだんとどこへ行くのか興味が湧いてきた僕は猫の後を付いて行った。そして辿りついた所には……たくさんの猫がいた。
な、なんでこんなにたくさんの猫がいるんだ? 僕以外には誰も友達がいないって言っていたのに。
僕が影からその様子を伺っていると、僕の友達の猫が言った。
「最近山で、残飯漁りに便利な猫を発見してさ。あいつ俺を友達だと思っていやがるぜ。かかか。自分が利用されているとも知らずにさ。おかげで俺が残飯を漁る必要はほとんどなくなった。ほとんどはあいつが残飯を取って来てくれるからな」
僕はそれを聞いて愕然とした。嘘だろ? 僕はあいつに利用されていたっていうのか? そういえばたしかにあいつは最近自分では残飯を取ってこなくて僕が取ってきた残飯を一緒に食べていたけれど。
僕は悔しくなって駆けた。
山へと戻らなくては。山に戻って一刻も早く、試練をクリアしなければ。やっぱり僕はまだ未熟者だった。疑うこともしらないで。駄目だ。もっと僕は強くならなくては。
僕はニャオーンと夕日に向かって鳴いた。
山を登っていくと、妙な物が山に落ちていた。
「腕輪?」
僕はそれを拾って腕にはめてみた。
なんかパワーがアップした気がした。
山を進んでいくと、今度は足輪が落ちていた。
それをはめてみる。足がなんかパワーアップした気がした。
今度は首輪が落ちていた。
はめたら、脳が活性化された気がした。
全部はめたとき、僕の頭に猫の声が響いた。
『この3つのアイテムはあなたの全ての力を引き出します。この先にあなたを阻む番猫が待っています。どうしますか? もしあなたがその番猫に敗れたらそのはめた3つのアイテムが爆発してあなたは死にます。もしやりたくないのであればその3つの輪を今すぐに外してください。今外さなければ番猫に戦い勝つまで、外せません。もちろん一度敗れたら最後ですが。逃げても無駄です3日間の間に番猫に挑まなければその時も、その輪は爆発します。どうしますか? やりますか? やりませんか?」
僕はその時、この山の試練を教えてくれた猫のことを思い出した。
今はなんとか残飯で生きているがどっちにしても、このままじゃいずれ僕は餌も取ることが出来ないで死んでしまう可能性のほうが高い。だからいつまでも考えていて先に進まずに、立ち止まっているだけじゃ駄目だと思った。いつやるの? 今でしょ。
僕は「やります」と力強い声で言った。
『そうですか。では今から3日かんです。よーいスタート』
僕は山の頂上を目指し、駆けて行った。
番猫がいた。でもまったく動かなかった。
番猫の口は大きく開かれていた。
もしかしたら。
僕は番猫の口の中に入った。
その番猫は思った通り、人間が作った猫の頭のモニュメントだった。
超巨大猫頭は高さ数十メートルあり、迷路になっていた。
もしかしたら戦いを挑むっていうのはこも迷路を抜けろっていうことか?
どうやらこの番猫を作った人間はこれを猫の為に作ったようで、猫専用の通路になっていて人間は入ることが出来なかった。
しかし、そこはただの迷路ではなかった。巧妙な罠が仕組まれていて、上から大きな岩が落ちてきたり、落とし穴があったり、猫じゃらしがあったり、光が素早く移動したりして、猫を誘導し、なかなかゴールにたどり着けないようにしていた。でも何とか僕は迷路を抜けることに成功した。かかった時間は二日半だった。あと半日で僕は死ぬ所だったのだ。
僕が迷路を抜けると、付けていた輪は自然と外れた。
そして大きな岩を見つけた。
「ここだな」
僕は岩の下から防水処置の施された本を見つけ出した。
その本のタイトルは世界の猫大全だった。
帰るときは番猫の天辺まで猫専用のエレベーターが付いていて天辺からは滑り台があり、それを滑って番猫の入り口まであっという間に到着した。
僕は急いで山を降りる。
そして僕はその本を試練を教えてくれた猫の元へと届けた。
すると、その猫は猫の声で「おめでとう!」と言った。
どういうことだろうと、その猫の話を聞いていると、この猫は人間が開発した猫語を話せるロボットらしく、僕の今までの様子は逐一人間によって観察されてテレビで放映されていたようだった。
そして、試練を終えた猫は、放映されているのを見てその猫が欲しい人間の家にいける権利をもらえるらしい。
僕の試練を見ていて僕を欲しいと思った人間は一人だけいた。
その人間は成り上がりで成功したという大金持ちの人間で、人間の世界ではよく知られている人格者らしい。
まだ、僕はこの人のことは何も知らないけれど、この人なら僕のことを幸せにしてくれそうだと思った。一人で自分の力で生きていくのもいいけど、やっぱり僕には飼い猫の方が合っていると思った。ご主人がいて、ご主人に仕え、ご主人を癒し、ご主人の元に敵が現れたら、番猫の役をする。自分の為、そして誰かの為に生きる。僕にはそれが似合っていると思った。
精一杯生きていこう。
僕はそう思った。




