頭部屋
脳の中の中の中。
潜っていたら部屋があった。
私も知らない私の部屋だった。
鍵の無いドアは、引き戸で、板チョコレートみたいな色と形。
ノブを少し落として、開けてみた。
中を見るなり私は叫んだ。
「誰も来ないで!入らないで!見ないで」
その声を聞きつけたか、1人の豚の紳士が、ナイフとフォークを持ってやってきた。
んまいーぃものでもあるんかいなと。
彼は何でも食べる頭の中の住人その1人。
私の頭に住んでるのに、この人は嫌い。
紳士のふりして何でも怠惰な欲で食べてしまう。
「やめて、お願いよ、入らないで」
彼はドアを開けた。
中をチラチラ見て、あ、はーはっ。はーはっ。
と笑って帰った。
私は泣いて泣いた。頭を抱えて泣いた。
これでもかと声を出した。
入らないで、見ないで、恥ずかしいから。
だって、だって。
私の頭の部屋は、空っぽです。
何にもなかったのです。
頭の中の真ん中の真ん中、その部屋は、空っぽです。
誰も見ないで入らないで。
お願いよ、みんな。
他にもたくさん部屋なんてあるじゃないの。
ほら、ねぇ、涙の乾く部屋もあるから。
【あらためて、いろんなお話、はじまりはじまり】
頭の中を埋めてみましょう。