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第8章その2
「うん、実はそうなんだ。さすがムツキさん、鋭いね」
ムツキの問いかけに、ハジメがにこやかに答えた。
ムツキは二人にソファーを勧め、紅茶を入れてくれた。そして自分は向かいに置かれたスツールに腰をかけ、ハジメの原稿を読み出した。視線は原稿に落としたままで、ハジメに提案してくる。
「今度、君が出会った、外の世界から来た人達との交流録でも書いてよ。きっと面白い作品が出来ると思うよ」
言いながら、手早く原稿を読み終えた。
「ハイ、オーケー。来月号も頼むよ。ハジメさんの書く記事は、『役に立つ』って、読者からの評判が良いからさ」
ムツキは原稿を揃えると、前のテーブルの上に置き、両手を合わせた。彼の胸の辺りが一瞬光ったが、その輝きは、今までトムが目撃してきた中で、一番小さく弱いものに見えた。
本屋の建物を後にすると、トムはハジメに話しかけた。
「ムツキさんの光、すごく小さかったよね」
「良く、気が付いたね」
ハジメが面白そうに、トムの方を見て答えた。




