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第5章その2
朝食には、カリカリに焼いたトーストに、ハチミツとバターを塗ったもの。薄く切ったチーズ。そして熱い紅茶が準備されていた。いつもよりずっと質素な食卓であったが、今のトムにはものすごいご馳走に思えた。
トムがもりもりと食べる様子を楽しそうに眺めながら、ハジメはこう切り出した。
「トム、君は元の世界に帰りたい?」
トムの動きが一瞬止まる。ゴクンと口の中の物を飲み込むと、大きくうなずいた。不安気にハジメの方に視線を送る。
「君が元の世界に戻るためには、自分自身で答えを見つけないといけない」
「どういうこと?」
「僕は、こちらの世界に迷い込んだ旅人を、何人も世話してきた。そして気が付いたんだ。二種類の人がいるってことに」
ハジメの話は難しかった。しかし、辛抱強くトムは聞いていた。そんなトムの様子を見て微笑むと、ハジメは説明を続けた。
「たまたま、この世界に迷い込んだ人と、この世界に共鳴して、招かれた人がいるんだ」
「招かれた?」
「そう。そして、君は招かれた人間だと思う。だから、招かれた理由が分かった時に、元の世界に帰るための道が現れる」




