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第4章

 食事を終えた二人は、『笑顔の仲間亭』を後にした。日はすっかり暮れていた。

「とりあえず、僕の家へおいでよ。客間はないけど、寝袋位はあるから」

他に選択肢もなく、誘われるままにトムはハジメの後について行った。

 ハジメの家は、『感謝の念いの村』のはずれに建つ小さな木造の一軒家であった。必要最低限の家具が置かれ、きれいに整えられている。

「さぁ、こちらに座って」

背負っていたカゴを降ろしながら、ハジメはトムに声をかけた。部屋の中央に、正方形のテーブルと椅子が二脚置かれていた。トムは勧められるままに席についた。

「紅茶を入れようか。それとも、ミルクの方がいいかな?」

「ミルクがいい」

「じゃあ、ホットミルクにしよう」

ハジメは小さな鍋にミルクを注ぎ、オーブンの上に載せた。その様子を眺めながら、トムはぼんやりと考えた。

(僕、どうなるんだろう)

彼の小さな胸は、不安で一杯になっていた。

「はいどうぞ。身体が温まるよ」

ハジメが白いマグカップに入ったホットミルクをテーブルに置いた。ほんのりと甘い湯気を思い切り吸い込んでから、トムは一口、コクンと飲んだ。温かかった。不意に彼の両目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。次から次へと出てきて止まらない。両手でマグカップを持ったまま、トムは泣きじゃくった。

 そんなトムの様子を見て、ハジメは彼の後ろに立つと、両手をトムの肩の上に添えた。その手の平は意外に大きくて、力強く、そして暖かかった。トムの不安な気持ちは次第に和らいでいった。

「それを飲んだら今日はもう休もう。僕の寝巻を貸してあげるよ。いろいろと聞きたい事もあるだろうけど、朝になってからにしようよ」


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