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第3章その4

 トムの顔は真赤になったが、恥ずかしさよりも空腹の方が勝った。トムはスプーンを手にすると、ガツガツと壺煮込みを食べ始めた。

 その様子を眺めながら、ニトリはハジメの耳元に囁いた。

「ねぇ、その子の名前、変わっているけど、ひょっとして・・・」

「うん、そうらしい。あちらの世界からの旅人だよ」

ハジメの言葉に、ニトリは首を左右に振った。

「いくらあんたの話でも、最初は信じられなかったけどねぇ。また拾ってきたんだね。何人目だい?」

「さぁ、忘れちゃった」

少し笑いながらハジメが答えたところで、ニトリは空になった皿を前に、モジモジしているトムに気がついた。

「お代わり、欲しいかい?」

「欲しい!」

今度は元気良く返事をしたトムに歯を見せて笑うと、ニトリは皿を持って厨房に引っ込んだ。それを見送ると、ハジメは丸パンにかじりついているトムに話しかけた。

「さっきの話の続きだけど、君にはニトリさん達の光が見えたんだね?」

口いっぱいにパンを頬張っていたトムは、答える代わりに首を縦に振った。

「じゃあ、戻れる見込みはありそうだ」

ハジメは納得した表情で、二度うなずいた。


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