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宇宙のあべこべ  作者: ダリエ
序章 地球 旅立ち
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二話 宇宙……行ったりしてます?

 

 その後、俺、シュン、ケイは前の世界から一人だけ別のクラスであるダンと合流して家路についた。

 俺は保健室にいた二人とは前の世界同様、同じクラスだと思っていた。

 だが、この世界ではそれぞれ別のクラスのようだった。あいつらはどうやら俺をダシにして自分のクラスの授業をサボったらしい。



 ちなみに俺は当然、朝来たときと同じく自転車で帰ろうとした。

 しかし、この世界では男子は登下校をスクールバスで送迎してくれるらしかった。バスに乗る前に駐輪場を覗いてみたが俺の愛車はどこにもなかった。

 ……ちゃんとこっちにもあるよな? 



 俺たちは全部で三十人乗りくらいのバスの前方の座席に陣取る。

 どうやらそこが定位置のようだ。座席には人気のマンガ雑誌まで置かれている。

 いくら何でもこの世界、男子がフリーダムすぎるだろ……。

 


 帰りのバスの中では、一人だけまともに授業を受けたダンから愚痴を言われた。

 今日は隣である俺のクラスの女子から、やたら俺の事を聞かれて大変だったそうだ。

 


 こいつとは他の二人よりも長い付き合いなのでその辺りは多めに見てもらおう。あれは必要なサボりだったのだ。

 それに図らずもこの世界での俺の立ち位置がわかったのも大きい。

 思いの外、俺は人気者と判明したのは嬉しいものだ。



 しかし問題はある。

 俺の男の同学年が親友であるこの三人しかいないことだ。

 クラスの数は変わらずに男子の数だけ減っている。そして、女子は減った男子の分増えているらしい。



 その数の穴埋めとでもいうのか、本来ならここにはいないはずの俺の知り合いの名前も聞くことがあった。

 後輩は俺たちよりも少しだけ男子が多いが、それでも男子は一クラスに一人配置できない数しかいない。



 雑な計算だが、ウチの高校で男女比を推測したら、全校生徒が九百人ちょいだ。男子はこのバスの中にいる十五人。

 算出すると、おおよそ1:60くらいになる。

 これでは本当に近いうちに日本人は絶滅するんじゃないのかと不安になる。

 


 それでもウチの高校が特別男子が少ないわけでもないらしい。

 政府の発表が虚偽なのか、事態は思いの外、深刻なのかもしれない。



 そんなことを考えていたらあっさり家に着いてしまった。

 何にせよ今は情報が少なすぎる。このことは家でゆっくり考えよう……。

 俺は、少しだけ家の変化がどれほどのものかに嫌な予想をしつつ、自宅へ足を踏み入れた。



------



「おっす! ゆっくり眠れたか? 俺は眠れたぞ!」

「いつも通りだな。ダンは?」

「俺は動画見てたから寝不足。ねみい。シュンちょっと元気わけてくれよ」



 うん。

 ベッドで爆睡して気が付いたら今日になってたんだ♪



 いやいや、この失敗はヤバい。

 ただでさえ訳がわからない世界になってるっぽいのに……。

 自宅の環境が以前とほとんど変わらないことに安心して帰ってすぐ寝てしまうとは。



 ちなみに唯一変わってたところは帰った俺を出迎えるのが母でなく、父になっていることだ。

 これくらいはまあ想定内と言ったところだな。



 それと不思議なことにウチには母以外の女性はいなかった。

 一夫多妻の世界でこうなっている以上、何か理由があったのかもしれないがそれは聴きたくなかったのでスルーした。

 父親の女性事情など知りたくないだろう?

 


「おーいリオン。お前は?」



 うるさい。静かにしろ。むしろ寝てしかないわ。



 まあ、そんなくだりもあったが、俺たちは昨日と同じくスクールバスに乗って、今朝は自宅から学校ではなく、病院へと向かったのd。

 今は病院にいる。検査とやらをやるためだ。



 これについては学校で調べはついている。

 貴重な男子を病気で失う訳にはいかないため、年に三回ほど強制で検査を行うらしい。



 検査項目は多岐に渡る。

 身長体重などの基本的な物から血液、レントゲン。果てはMRIなどの大型の設備が必要な物まである。

 正直言って、検査項目のほとんどが何を表す数値かわからない。見たことのない機械も盛りだくさんだ。意外にちょっと楽しかったりもした。



 そんなこんなでほとんどの検査を終わらせた。

 今はもうそろそろ帰れるかという時分で、待合室にいる。



「七里様ー。七里梨恩様ー。受付までお越しくださいー」



 唐突に俺の名前が呼ばれた。

 何か忘れ物でもしたかと一日を思い返す。



「ああーやっぱ頭が引っかかったか」

「昨日はかなりおかしかったからな。しっかり先生に調べるように言った甲斐があったみたいだな」

 


 余計なお世話だ。

 途中で一般的な日用品の名前を言わされる問診があったが、あれは貴様の仕業か。



「とりあえず行ってくる。お前らは先にバス乗ってていいぞ」



 俺は友人たちにそう言ってから、受付に行き、案内されるがままに着いていった。



「応接室……? 診察室じゃないのか?」

『どうぞお入りください』



 ノックする前に中から招かれたのでそのまま入室する。

 大病院の応接室というだけあり、中々大きく、綺麗な部屋だ。その中には、今回俺たちの検査を担当した医者がいた。それにどこか貫禄のある老医師に、もう一人。

 黒いスーツを着こなした人がいた。パンツルックのスーツに、黒髪をシュシュで一つにまとめている。

 病院の関係者には見えない。何者だろうか?



 なお当然のように全員女性である。

 共通して、どこか重苦しい、重大な使命でも任命されたような空気を纏っている。



「ええと、あの……何か自分に御用でしょうか?」



 正直、この状況はかなり怖い。この世界では男は襲われる側なのだ。

 俺は女性相手でも襲ってくるなら殴りかかることを躊躇するつもりはないが、医者なら薬品を使って一発で俺を昏倒させられる。

 わりとピンチかもしれない。



「ああ、怖がらせてしまったかしら? ごめんなさいね。私はこの病院の院長を務めるものです。こちらの方も政府の人間だから安心して頂戴。ひとまずそこのソファーに座ってもらえるかしら?」



 貫禄のある老医師は首から掛けたカードを俺に見せた。確かに院長と書いてある。

 スーツの人は結局よくわからないが、とりあえず怪しい人ではないようだ。



「失礼します。それで、自分は何で呼ばれたんでしょうか? もしかして何か異常が…?」



 わざわざ呼び出しを受ける事態だ。余命宣告でもされるかもしれない。

 こんな世界に来て早々病魔に侵されるとは俺も運がなかったな……。



 そうやって勝手に絶望して、己の命を儚んでいると、担当医が告げた。



「あなたには問題ないわ。至って健康よ。ただ、何というか健康すぎたというか丈夫すぎるというか……」


 医者が何か言いづらそうに言葉を濁す。

 するとスーツの人が初めて口を開く。


「そこからは私がお話します。七里梨恩さん。検査の結果、あなたには人類で初めてのある資質が発見されました。はっきり言って宇宙初の発見です」

「宇宙初って大げさじゃないですか……?」



 淡々とだが、緊張も含ませた声音でその人はそう言い切った。

 しかし宇宙なんて未開の世界だ。ならば、同じ資質を持った人間なぞ探せばいるだろう。など考えてしまう。



「いいえ。過大評価ではなく本当に宇宙で初めてです。同盟でもこのような前例はありませんでした」



 同盟? 

 連盟という物なら聞いたような気がするが似たようなものだろう。まあそんなことよりも、だ。



「その資質って言うのは何ですか?」



 興奮を抑えきれずに尋ねる。

 宇宙初の資質とまで言われるものだ。きっとさぞやすごい物だろう。

 何かの難病の抗体だろうか。それとも最強の万能細胞か。

 はたまた何か超能力的な物かもしれない。それに、少なくとも病気などではないのだ。

 俺の心が晴れやかな気持ちになる。



「それが、その…これを聞いても怒らないでもらえますか…?」



 途端にスーツの人がしおらしくなる。

 こうして固くなった表情以外を見ると、かなり若く見える。

 


 しかし聞かれたら怒るような、言い淀むような物か。もしかしてちょっと恥ずかしい病気の抗体とかなのかもしれない。

 だが、それで救われる人がきっといるのだろう。是非教えてほしい。さぁ! 

 


「あなたは……その・・・・・・です」

「すいません。聞こえません」

 


 本当にゴニョゴニョとしか聞こえない。

 補足すると、俺に難聴の兆しがないのは今日の検査で判明している。



「っ! あ「あなたの精子は宇宙線で死なないのよ」院長先生!?」



 スーツの女性が意を決して発言しようとしたところを院長先生が遮って言った。

 は?宇宙線で精子が死なない? ナニソレ?



「あの、おっしゃっている意味がわかりません」

「「「え?」」」



 そんな意外そうな顔をされてもこちらも困る。

 俺にとってはふーんで?の域を出ない情報だ。



「どこがわからないのか訊いてもいいかしら?」



 俺は院長先生に答える。



「はい。まず、普通なら宇宙線? を浴びたら精子は死ぬんですよね?」

「そうね。正確には宇宙放射線を浴びた場合。精子内の男児が生まれるために必要な要素を持つ細胞が死滅します」

 


 それはなんとなく知っている。

 向こうの世界で聞いたことがある気がする。



 なんらかの理由で、放射線を浴びた男性の子供は女児が多いとかなんとか。

 きっとこちらではそもそも男性の遺伝子が弱かったりするのだろう。

 


「そこはわかります。でも、普通の人は宇宙には行きませんよね?」

「「え?」」



 またか。

 いくら何でもそれだけで宇宙飛行士になります!

 なんて言う奴はいないだろう。俺は英語が苦手だし、そもそも文系なんだ。



 女医とスーツの人は呆けているが、院長先生は何か思う所があるようだ。



「そうね。まあ男性は行かないわね」

「ん? その言い方だとまるで女性は宇宙に行くみたいな感じですね」



 俺は冗談めかした口調で答えた。

 が、三人はなんとも微妙な顔をする。

 


 あれ?ま、まさか……



「もしかして皆さん……、宇宙……行ったりしてます?」



 彼女らは無言でゆっくりと頷く。



 これはあれだな。うん。間違いなくミスった。

 まさか一般人が宇宙に行くような文化のあべこべ世界だったとは……ハハハ



「こんなん想像できるかぁぁぁ!!!!」



 この時の俺の叫びは間違いなく魂の叫びだった。

 


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