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前世ネタが流行っているようで

作者:

初投稿です。

恋愛要素少なめですすみません

誤字脱字等、発見次第ご連絡いただけると嬉しいです。

少しの暇つぶしにでもなれば幸いです。


【追記】

お気に入り登録、感想、評価、ありがとうございます。こんなに沢山の方の目に触れて頂けるなんて…。お気に入り登録数を見て震えました。本当にありがとうございます。シリーズまではいかなくても、何話か続きをと 只今執筆中です。よろしくお願いします。

 廊下を颯爽と歩きながら結菜(ゆうな)は自身の教室に向かう。予鈴が鳴るまでまだ時間がある為、廊下はちらほらと登校する生徒が見受けられる程度だった。そんな中結菜はコツコツと靴音を鳴らしながら歩を進め、目的地へ向かう。教室に着くと既に登校したクラスメイト達がそれぞれの時間を過ごしていた。本を読む者、音楽をきく者、友達同士で談笑する者…。それぞれが好きなように過ごしている。おはよう、と声を掛け合いながら席に向かうと自分の席は既に誰かが座っていて、机の上に腕を枕にするような形で突っ伏していた。一瞬誰だと疑問が浮かんだが、綺麗な蜂蜜色の髪が見えたので頭の中ですぐに解決する。



「ちょっと修一(しゅういち)、そこ私の席なんだけど」

「んん、」



 修一、もとい日比谷(ひびや) 修一。3歳の頃からの付き合いで所謂幼馴染である。3歳の時にお隣さんに越してきた日比谷家が私の家に挨拶に来た際に、お互い同じ年の子供を持っているということがわかり、それがきっかけでよく家族ぐるみで遊んでいたのだ。

 初めて修一と会ったときのことは今でも覚えている。修一は私を見た瞬間に抱き付いてきた。初対面の子供が抱き合っている――私は不可抗力だが――のを見た両親たちは驚きはしたが、「まあ、修ったら一目惚れかしら」「結菜ったらイイ男捕まえたわねえ」などと、大いに誤解なさっていた。この出来事の影響もあってか、両親たちは私と修一をくっつけたがり、何かと共に過ごすことが増えていた。まあ私自身近所に同世代の子供がいなく、同い年の修一と友達になれたことはとても嬉しかったので何も抵抗もなく共に行動していた。

 私たちは家が隣同士であるため、必然的に同じ幼稚園に通い、小学校中学校、ついには高校まで同じである。当然中学までは義務教育で私自身私立に通うということは全く考えていなかったので近くの公立中学に通った。もちろん修一も。しかしクラスが一緒になることはなく、修一は嘆いていたが、偶に一緒にお昼を食べたり、登下校することによって機嫌は直っていた。修一は機嫌が悪くなると一日中べったりしてくるので時たま気にかけないと後が大変なのである。一度、彼が私の部屋に遊びに来た際に私は気にせず雑誌を読んでいたことがあった。せっかく遊びに来たのに構ってもらえないことに不機嫌になった彼は私から雑誌を奪い、今にも泣きそうな瞳で睨んできた。訳も分からず混乱する私に構わず彼はぎゅっと抱き付いてきた。最初は抵抗していた私も、修一が引かないことを悟ったのでそのままベッドに寝転んだ。そしてその日が土曜だったこともあり、修一は私の家に泊まり、次の日の日曜までべったりだった。周りの人からは冷やかされ誤解され、本当に大変だった。


 高校受験が近づき、私は修一にどの高校に行くのか尋ねたことがある。案の定当たり前のような顔で「結菜と同じ学校」と答えた。流石に呆れるというか、いつまでも私にべったりだと彼の将来が大変なので一度彼にきちんと話したことがある。



『ねえ、修一』

『ん?』

『別に私と同じ学校に行かなくてもいいんだよ?中学までは学区とかあったから仕方がないけど、高校は自分で選んで、好きなところへ行ける。修一には修一の人生があるんだから、……修一?』

『…はは、』



 修一は泣きそうな顔をしていた。泣きそうで、笑っていた。初めて見る修一の表情に私は戸惑い、その瞬間に私は修一の腕の中にいた。



『…修、一?』

『ごめん、ごめんね姫サマ…』

『、?』

『…っごめん』



 私を抱きしめ、覆っている筈の修一がその時はとてもちっぽけに見えた。私は無意識に彼の背中に腕を回し、子供をあやすかのようにぽんぽんと彼の背中を撫でていた。腕の締め付けが一層強くなった気がしたが、手を止めることはしなかった。震えてる目の前の幼馴染に私は何も声をかけることができなかった。


 正直修一のことは長い付き合いだがよくわからない。でも、私の大切な人だ。私の席で寝息を立てている幼馴染の髪を撫で、欠伸を一つ。私どうやらにまで睡魔が襲ってきたようだ。


 声をかけて反応はするものの、顔を埋めて(うずめて)しまったので諦めて後ろの空席に腰かける。今私が座っている席が修一の席なのだが、本人は夢の中で気持ちよさそうなので起きるまで待つことにした。



「(修一に聞きたいことがあったんだけど、急いでるわけじゃないし、いっか)」



 イヤホンを耳につけ、好きなバンドの曲が流れ出す。そうして私はほんの少しの眠りについた。






「今日の予定だが――」

「んん、あれ…」



 担任の声が聞こえ、思わず顔を上げた。いつの間にかHRが始まっていたらしい。眠気眼で前を向くと修一の満面の笑みが見えた。



「結菜おはよう」

「ん、おはよ、しゅうちゃん…」



 まだ眠気が消えず欠伸をしながら答えとガタガタッと音がして思わず目を向ける。修一が椅子から落ちていた。


「…何してるの」

「いや、今結菜が…」

「ん?」

「あ、いや…何でもない」

「そう?」



 ならいいけど、とさらに欠伸をもう一つ。



「そうだ、修一に聞きたいことがあったんだけどさ」

「なに?」

「最近って前世ネタが流行ってるの?」



 最近ずっと思っていたことだった。学校帰りに見知らぬ少年に「よかった、貴女も生まれ変わったんですね」と言われたり、街を歩くにしてもこれもまた知らない青年に「君もこの世に来てくれたのか、前世では叶わなかった、今度こそ君を僕のものに」といった鳥肌の立つ台詞まで言われたり、近所のコンビニに行った帰りには突然名前を呼ばれて振り返る間もなく抱きしめられ「漸く、会えたね。あの時の約束を果たしに来たよ」と囁かれた。どれもカッコ イケメン カッコとじが入るが。どれも全く身に覚えのないものばかりである。そもそも、私の知り合いにあんなにも顔の整った人たちはいない。しいて言うならば幼馴染の修一と、高校で出来た知り合いに何人か、だろうか。




 私が一人で考えているとガタガタガタガタッと今度は修一だけじゃなくて隣の席の月島くんまで椅子から落ちていた。二人の視線が突き刺さる。



「……え、なに二人とも、今HR」

「結菜さん…!思い出したのですか?!?!」

「てっきり俺らだけ覚えてるのかと思ってたのに…結菜、待ってたよ」

「え、何、ここでも前世ネタ引きずられてるの私」



 本当に意味が分からない、と思ったところで号令がかかった。二人への対応が面倒になった私はナイスタイミングとばかりに颯爽と教室を出ていった。後ろから何やら騒がしい声が聞こえるが気にしない。学校に来てまで前世ネタを言われたら堪ったものじゃない。


 教室を抜けて向かった先は屋上。普通ならば安全を考慮してうんたらかんたらな理由で閉鎖される屋上は私の学校も例外ではなく、閉鎖されている。だが私は屋上への鍵を手に入れていた。盗んだんじゃないよ、貰ったんだよ。心の中で言い訳しながら鍵に手をかけると既に扉は開いていた。なあんだ、もういるのか。



「あァ?…結菜か」

「おはよう、光輝(こうき)



 水無月光輝。私の彼氏である。黒髪に赤メッシュが入っていて見た目も格好も不良そのものだけど、それ以上に素敵なものを持っていて、とても優しい。私の自慢の彼氏である。幼馴染である修一はいい顔はせず、「別れろ、あいつは駄目だ」と言ってくるが、別に修一に認めてもらわなくてもいいわけで、気にせず付き合っている。修一も大切な幼馴染だが、光輝だって私の大切な人なのだ。


 寝転んでいた光輝の隣に座り、空を眺める。雲一つない綺麗な空だ。湿気のない爽やかな風が心地いい。



「幼馴染クンはどうしたんだ?」

「…教室で月島くんとお喋りでもしてるんじゃない」

「ックク、何か嫌なことでもあったのか」

「……光輝はさ、」

「あァ?」

「光輝は、前世って信じる…?」



 ポツリと呟いた言葉に光輝が一瞬目を見開いたことは、空を眺めている私には知る故もない。



「……前世、ねえ」



 噛み締めるように呟かれた言葉に思わず光輝の表情を伺うと、光輝は相も変わらず空を眺めていた。



「結菜は、あると思うか」

「え、質問を質問で返すの?」

「いいじゃねえか、で?結菜はどう思うんだ」

「うー、……あっても、いいんじゃない、か な」

「…へえ」

「前世って今の私が生まれる前のワタシが生きた人生のことでしょう?もしあったら、とても素敵なことだなあ、なんて」

「…じゃあ俺とおまえが前世で敵対関係にあるとしたら、どうする」

「て、敵対関係?あはは、いいねそれ」

「…何笑ってんだ」

「前世は敵、現世は恋人?素敵じゃない、時代を超えて結ばれるなんて」

「…そうだなァ、俺はお前と結ばれて幸せだよ」

「き、急にどうし、わっ」



 腕を引かれ、突然のことで対処する間もなく光輝の上に覆い被さるように寝転んでしまった。慌てて身を引こうとする前に光輝の大きな手で後ろから頭を押さえられ、光輝のと自分のが重なった。



「んん、」

「結菜…」

「っ、こう、き」

「結菜、好きだ、愛してる」

「わ、私も好き、だよ」

「絶対ェ離さねぇからな、………漸く手に入れたんだ」

「ん?なあに」

「何でもねえよ」



 耳元で光輝が笑う声が微かにした。ああ、幸せだなあ。


 傍にある温もりに寄り添うようにして私は目を閉じた。

前世は乙女ゲームだったという裏設定

少しでも反響があれば続きを書こうかなと思ってます迷ってます


以下、登場人物設定です


朝姫(あさき) 結菜

現在高校2年生

前世は領地主を兄に持つ姫

前世の記憶はなく、皮肉なことに前世で盗賊だった水無月光輝と付き合っている


日比谷 修一

朝姫結菜の幼馴染

前世は結菜を守る忍。優秀な暗殺者だったが結菜の兄に出会い人としての心が生まれ、結菜に出会い人を愛するということを知る。兄妹を心から尊敬し、敬愛している。

3歳の時に結菜に出会い歓喜するも、結菜が覚えていないことを悟る。共に行動する中で姫の心の芯は変わっていないことを実感し、これからも傍で守ろうと心に決める。また、前世とは違い主従関係ではないのであわよくば結菜と生涯を遂げたいと願う。


月島 純哉(すみや)

朝姫結菜の同級生

前世は結菜の従兄兼家庭教師。幼いころから従兄妹である二人を見守っていた。結菜に対して恋愛感情はないわけではないが、自分と結ばれるより他人のほうが彼女を幸せにできると考える。高校で結菜に出会う前に中学の頃偶然修一と接触し、情報をもらっていたため、同じ高校を志望。現在も前世と同様彼女を見守っていきたいと考える。結菜には幸せになってほしいと願う善き人。故に光輝との交際は反対はしていない。



水無月 光輝(こうき)

朝姫結菜の彼氏

前世は盗賊の頭。怪我をしているところにお忍びで散歩していた結菜に遭遇し、手当てを受ける。純粋無垢な結菜に興味を持ち、頻繁に領地に現れる。結菜兄や忍 修一といった邪魔が入り中々接触できないが、結菜がこっそり城を抜け出す度に絡みに行く。結菜は光輝自身は普通だが、盗賊という行為が許せない為冷たい態度をとる。しかし根は優しいため、光輝が怪我をすると手当てをする。光輝自身も分かっているためわざと怪我をして結菜に会いに行くことも多々ある。

高校入学時に結菜を見つけるが、修一同様結菜には前世の記憶がないことを悟る。前世とは違い、結菜と敵対関係にあるわけでもないため、盗賊の頭時代の頭脳を行使し、周囲の人間(修一)には気づかれないよう結菜に近づき、時間をかけてようやく結菜を手に入れる。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白かったです [一言] 前世が乙ゲー……! 斬新ですね 私も声をかけてきたイケメンが気になるので、是非続編を読んでみたいです
2014/05/10 15:37 退会済み
管理
[一言] 声かけてたイケメンの正体が気になるので、続編希望します。お願いします。
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