最強の男
その男は彗星のごとく現れた。
最初は小さな地方大会の100m競争。目を疑うような記録で圧勝した。
噂は広まりオリンピック代表へ。もちろんダントツで金メダルだった。
たちまちスターに上り詰めたその男は。今度は格闘技に挑戦した。
ここでもその男はダントツだった。 ボクシング・柔道・プロレス・空手・・・・
何をやらせても負けることはなかった。もちろんタイトルも総なめであった。
男は次々に違うことにも挑戦した。野球・アメフト・ゴルフ・F1・・・
男が所属するチームはもちろん優勝し、個人競技では1度も負けることはなかった。
男はさらに、頭脳の力も見せ付けた。数学オリンピックなど学問各分野の大会でも優勝。
研究活動に関してはノーベル賞他、名誉ある賞を総なめにした。
当然のことながら男はスーパースターとなった。
全世界の子供たちの憧れとなり、大人たちも羨んだ。
そして男はついに政治の世界にも進出した。
もちろん絶大なる人気でトップ当選。討論でも政策でも勝てる者などなく、当然のごとく
国のリーダーとなった。
もちろん彼がリーダーとなったその国は世界でトップの力を持つようになり、
男は実質、世界にトップとなった。
男がつぶやいた。
「そろそろかな・・・・」
その男は地球の者ではなかった。地球侵略を目論むN星が送り込んだ最終兵器だったのだ。
男の使命は、地球のトップに上り詰め、全世界を洗脳することだ。洗脳された人類は簡単に
奴隷として使える。そのために男にはどんな分野でも絶対人類に負けないプログラムが
組み込まれていたのだ。
もし負けてしまった場合は自爆装置が起動し、侵略者とバレない仕組みになっていた。
男は考える。
「洗脳を始めるには地球人には宗教というものが有効らしい。まずはそこから始めるか。」
男は全世界へ向け演説を始めた。
「全世界の諸君!これからは・・・・・・・・・・・・」
2時間におよぶ男の演説は、全世界の民衆を魅了した。
まさに全世界はその男を中心に動こうとしていた。
演説を終えた男に小さな男の子が花束を持って駆け寄る。
「おじさん、おじさん!」
男、「どうしたんだい坊や。お花くれるのかい?」
坊や、「おじさん、ぼくと一緒に遊ぼ。」
男、「はっはっはっ、何して遊ぶんだい?」
坊や、「うーんとね・・かくれんぼ!」
男、「かくれんぼかぁ・・いいよ。」
坊や、「じゃあ最初に鬼を決めるからじゃんけんだよ。」
じゃーんけーん・・ぽん!
その後、その男の姿を見たものはいなかった。