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愛し方  作者: 越華
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愛し方  第2話 (ずーと、一緒)

 喫茶店のかきいれどきの正月を、休み無しで働き自分達へのご褒美として、数人で新年会をする事になった。

正月も時チャンから新年の葉書が来ただけで電話は無く、一人になると声が聞きたくなるから、部屋中を雑巾を持って歩き回り、する事が無くなるとビールを飲んで寝るという、哀しいぐらい情けない日々を送っている。

自分の力で生きたいと思っていた、あのきらきらした物は何処へ行ったのか、今は新年会が待ちどうしい。 

新年会は午後5時まで仕事をして、6時に居酒屋に集合して始まる事になっていた。

服を新年会用に女性軍は着替えて、髪や化粧も直して4人で行くと、もう男性軍は来ていた。

そこに居たのは男4人、隣に居たバイト仲間に「これって合コン?同じ店の人達としないよね」聞いてから、相手の返事も聞かないで、自分で答えいる私は少し動揺している。

バイト仲間の安代さんは「これって合コンみたいやね!」と言ってはしゃいで店に入り、初めての私は何かドキドキして、それでいて何か後ろめたい様な気持ちで、席に着き暫らくすると、皆話し声が段々大きくなり、手振り身振りで話さないと解らなくなってきた。

私は緊張であまり食べれ無いでいると、中川さんが色々と気を使ってくれていたが、正直放って置いて欲しかった。

こんな事は初めてなので、皆から注目されたり、中川さんがする事で二人だけ浮いた感じになりたくなかったし、何時もより申し訳ないけど、愛想の無い態度をとってしまった。

2次会も両脇に吉田さんと中川さんがいた。

二人とも住んでいる所が同じ方面で、送っていくから3次会も一緒に行こうと誘われ、残り5人で3次会へ行く事になった。

普段は絶対行かないが、一人で帰るのが寂しかったのと、この二人は何時も、私を女としてではなく同僚として、仕事の事やプライベートな事も話してくれて、3人とも同士のような連帯感をもっていた。

飲みながら「この状態を時チャンが見たら、怒るだろうな」そんな事を考え、見られたら何て答えようと空想しながら飲み、人の話にも適当に返事をしていたら、皆の声が遠くに聞こえ、吉田さんと中川さんに酔ったから帰ると言うと、自分達も帰ると言うので一緒に出た。

歩いているとだんだん眠くなり、足もだるくなって来てしゃがみ込んでしまった。

「ごめん、酔っ払った」二人に謝ると、中川さんが「吉田、俺が背負うから、靴持って。タクシーが来たら拾て」

「かっこ悪いし、そんなん、男の人におんぶなんか、してもらわれへん」

「ええから、はよ!俺達かて酔うてんねんから、いつ動けんようになるか判れへんねんから」

もう私も限界だったので甘える事にした。

「有難う、このお返し考えとくは」

ボウとした意識の中で、前に何人かの女の人が立っているのが目に入った。

その中の一人が誰か気が着き、あわてて背負われた肩に顔を隠して、立ち去ってくれるのを祈った。本当にドラマの様に、中川さんが彼女の前で止まって、ずって来た私を背負い直した。

「ちょっと、あなたち、その子を知ってるんだけど何処へ連れて行くの?」時チャンだ。

寝たふりをして彼らに任せる事にした。

「この人を知ってるんですか?」吉田さんだ不機嫌な声で聞いた。(良いから早く行こう。)

「私の隣に住んでいた人よ。だいぶ酔ってるわね、女の子をこんなに成るまで飲ませて、何考えてんのよ」私の顔を覗き込んでる気配がしている。(あっちへ行って。)

「吉田タクシーまだか、つかまれへんか?」(お願い、中川さん動いて。)

「彼女は私が車で送っていくは、男の人が送っていくより良いでしょ。」

「それはそうですけど、知らない人に預けるわけには行きません」(中川さん頑張って言って。)

「その子の名前は、吉野 優、年齢23歳、アルバイトは5月からしているはずよ、これでどう?」

「解りました。じゃお願いします。念のため名刺を頂けますか」(中川さん、お願いなんかしないで。)

「ちょっと待てて、アッそうだ、この子にはお世話になったから、この子に代わってお礼をさせて」

(お礼は私がします、貴方はあっちへ行って。)

「いえ、俺達はいいです」私をこの人達は置いていくんだ・・・

「私の店で飲んでいって、もちろん御代はいりません。何でも飲んで、さあ行きましょう」

「おい、吉田どうする?」

「折角ですし、中川さんも重いでしょう、入りましょう」やっぱり置いていくんだ。

店に入ると、時チャンが店の人に「その子は私の部屋に寝かせて、二人にお酒をお出しして」と言っていたが、中川さんと吉田さんがソファに私を寝かせてくれた。

「さあ、店のほうへどうぞ」時チャンが二人を連れて行った。

店に入って、なぜか安心している自分が不思議。

酔いがまわって目をつぶっていると、時チャンが入ってきて、毛布を掛けながら「久し振りに会えたら、その人は知らない男の背中の上。それも見せた事のない酔っ払った姿で、俺はどうしたらええんやろナ」

「ごめん。寂しかったから」目を閉じているのに涙が流れた。

手で涙を拭いてくれながら「ご免はこっちの方や、家まで送るからゆっくり寝とき」

大好きな匂いと、横の人の気配で目が覚め、部屋の天井で何処かすぐに解った。

懐かしい寝顔、暖かいベッド、これで二人何も無いなんて、誰が信じるだろう。

誰も信じるはずが無い。

ベッドをそっと抜け出し、今のマンションとは話にならない位の大きな風呂場、酒の臭いを消す為に、香料の入った沐浴剤を多くいれて湯船につかり、浸かりながら何をどう言って帰ろうか考えていると「もう起きたん?風呂で寝たらあかんで」「うん、大丈夫」私の癖を良く知っている。

風呂から出ると新しい下着や洋服が置いてあった。

前だったら優しさに腹が立っていたが、今はこの優しさを離したくない。

「下着も洋服もぴったり、彼女の?」作ってくれたジュースを飲みながら聞く。

「そうや。俺の出て行った彼女のや!」笑いながら、ゲンコツで私の頭を押す。

「ナア・・・時ちゃん」

「うん? 何?」CDを選んでいる彼に素直に言おうと思う、自分の気持ちを。

「心が寂しいて解る?」

「解るよ」ショパンのノクターンがかかった。

「一人で生活始めて私それが解った。私の愛情を渡せる人が居ない寂しさも」ショパンが私に言わせる。

ソファに居る私の側に座り、私を見ないで次の言葉を待っていた。

「ずーと側に居て、結婚して」申し込んだ。

「ずーと側に居る。でも結婚はでけへん」意味が解らない。

「家を出るときに親達に結婚する、子供も作るってゆうてたやん」

私の方へ身体を向け「結婚ゆう事は、子供を作るような事をするゆう事やねんで」

「そんな事分かってる、すきやから愛しているから自然なことや」

「・・・・・俺にはでけへん」・・ああ、やっぱりそうだった。この人はそうだった。

自分はなんて酷な事をこの人に、この愛は叶えられないと解っていたのに。

不思議に涙が出ない、別の処が心が、大声で泣いている気が狂たように。

「ごめん、そうだったね。今の話は聞いていない事にして、ずーと死ぬまで」

「俺にはお前だけや。家を出るときはお前にすがって生きるしかなかった。でも今は俺の心の深いところまでお前や、人に触れて欲しくない闇の部分にもお前が居る」

「子供なんか作らなくても良い、いつか、もしかしたら、そうなるかも知れない。・・・結婚したらって、思ってしまっただけ」

「一生お前だけしかおらへん、結婚して、ずーと一緒にいたい。でもそれをしたらお前の女としての人生は無くなる。よーく考えて。それと親にも優にも言ってない、背負っていかんなあかん重たい物が有るねん、お前だけがそれを聞く権利がある。言わなくて済めば良いと思っていたけど。聞く決心が付いたらゆうて」

「うん、そうする。頭の中が考えることが一杯有って弾けそう」

「そうか、弾けそうか」声を出して笑っているが辛いだろうな。

「いつも御免」優しく笑いながら抱きしめて。

「こうしてお前が居てくれるから」

「こうして時ちゃんが居てくれるから」二人は私次第で、ずーと一緒に居られると思った。

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