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三題噺もどき5

風船

作者: 狐彪
掲載日:2026/11/07

三題噺もどき―きゅうひゃくろくじゅうよん。

 




 昨日の雨が嘘のように晴れ渡っている。

 朝は打ち水をしたような状態で、いつも以上に寒かった。

 ただでさえ朝晩は冷え込むというのに、余計なことをしてくれた。

 今は、すでに太陽は真上に居る。

「……」

 土曜日の昼間だが、なんだか人が多い。

 今日は何かこの辺りでイベントでもしているんだろうか。

 子供が片手に風船をもって歩いている。

「……」

 ふわふわと浮かぶそれを嬉しそうに振り回している。

 隣で手をつなぐ親は若干ハラハラしているように見えた。

 紐から手を離してしまえばこの世の終わりみたいなものだからな。

「……」

 私は、土曜授業が終わって帰るという所なのに。

 なんだか楽しそうで羨ましい限りだ。

 羨ましがったところで、どうにかなるものでもないが。

「……」

 風船に喜んでいたのはいつごろまでなんだろう。

 そもそも風船を貰った記憶なんて残っているものだろうか。

 あまり記憶にないんだけど……それなりに商業施設やマルシェみたいなモノには連れて行かれていたけれど、風船をもらった記憶はない。

「……」

 案外そういう所では風船配ってないんだろうか。

 たまに行く商業施設では、ピエロみたいな恰好をした人が、風船で犬を作っていたりしているんだけど。あの業態になったのは最近だったりするんだろうか。

「……」

 テーマパークとかは、逆に(逆に?)行くような家ではなかった。

 どちらかと言うと、キャンプとか海や川のほうがよく行っていたような気がする。

 だから、そういうところで配られるような風船を貰ったような記憶もない。

「……」

 単にねだるような子供じゃなかったか。

 それかまぁ、後処理が面倒だから親がもらわないようにしていたかだろう。

 浮かんでいる風船は帰りに車の中で視界の邪魔になるし、浮かばなくても途中で割れてしまったりしたら子供が面倒だろうし、作られた犬は気づけば一本の棒になっていたりするんだろう。

「……」

 浮かんでいるものはいつか浮かばなくなるし。

 浮いていなくてもいつか萎んでいくし。

 犬はチャンバラの道具になる。

「……」

 その辺考えたら貰わない方が親としては楽かもしれない。

 つい先ほど風船をもらってニコニコしていたあの子供も、誤って手を離してしまえば号泣だろう。何事も思うようにはいかない。

「……、」

 しかしホントに人が多い。

 自転車で通ろうにも、危なっかしいことこの上ない。

 通学路の途中に広場があるから、そこで何かしているんだろう。

「……」

 遠くにアナウンスのような声も聞こえてきた。

 こんにちはーみたいな挨拶と共に、司会進行役であろう声が徐々に大きくなる。

 こんな所でショーみたいなことはしていないだろうし、マルシェ的なことをしているのかな。母が食いつきそうだが、今日は普通に仕事に行っていた。

「……」

 人がぞろぞろと出たり入ったりしている所に近づいていく。

 そっち側だろうと思い、私はいつも渡る横断歩道を無視して、道路を挟んだ反対側を走っている。まぁ、こちら側もそれなりに人はいるが、あの出入り口を通るよりはマシだろう。

「……、」

 はぁ、なるほど。

 これは確かにこの時期になればここでやっていた気がする。

 秋の企業なんちゃらみたいなやつだ。

 いくつかの企業が集まって、何かの体験ができたり商品開発の何かを食べたりできたはずだ。有名な企業というよりは、中小企業だろう。あまり詳しいことは知らない。

「……」

 これってこんなに人が来るんだ。

 過去に何度か行ったことがあるが、そんなに人混みが凄かった印象はない。

 時間帯によるんだろうか。

「……」

 もう行くことはないだろうなぁ。











 お題:挨拶・雨・風船

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