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詩集

そら。

作者: ロースト

そら



初め視界に映ったのは光

眩しく、上に向けていた視線を逸らすが、どこを見ても光があるばかり。


仕方なく瞳をつむる。

だが慌てることはない。

ここがどんなところかは大体わかっているから。


これは夢だ。

今、自分は夢の中にいる。


最近はずっとこの夢を見る。

だから、もう慣れてしまった。


ここは階段だ。

螺旋階段。


そこに自分は立っている。


壁はタイルのようにつるぴかで、光を反射する。

反射された光は屈折を繰り返しながら建物内にこもる。

だからどこを向いても眩しく、目を瞑るしかない。


でも、この建物は天候に大きく左右される。

天候が曇り、光が弱くなれば見えるようになる。


だから自分は状況を確認できる。


通常より強く感じる光から、ここが高い場所にあることは予測できる。

さらに、階下をみれば、そこが見えない。


高さを実感して、思わずよろける。

高所恐怖症とまではいわないが、自分は高いところが苦手である。

いや、そうでなくともこの高さには皆恐怖を覚えるだろう。

断言できるほどに高い。


壁には一定間隔で配置された窓。

ここからの眺めは最高だろうが、私に除くほどの勇気はない。


上を見れば雲に隠れ、見上げることのできる太陽。

太陽に近い位置にあると思う。

だが、太陽の大きさは変わらないようにみえる。

それはこれ以上の大きさの太陽を見たことがないから想像力の豊富でない私には表現できないということか、はたまた太陽との距離はこれだけ高い場所でもあまり大差ないというのか。


ここは確かに建物内だというのにはっきりと太陽が見えるのは、天井には大きな窓が据えられているからだ。


いや、この表現は間違っているな。

天井自体が窓というのが一番近い表現だ。

おそらく、空を観測するためだろう。

だから光が直接に入ってき、視力に悪いまでの光が差し込む。

それでも空は窓によって大きく切り取られただけで、本物ではない。


太陽を眺め続けていると、雲が取れた。

反射的に目を瞑るがすでに遅く、瞳に入った光は脳に痛みを伝えてくる。

くらくらとし、壁に手をつき気分を落ち着ける。

もちろん目は瞑ったままだ。


油断した。

これでは余計に視力が悪くなってしまう。

もともと悪かったわけではないが、この夢を見るようになり一気に視力が落ちてきた。

現実にも影響を及ぼすこの夢はかなり性質が悪い。


さらに言えば、夢を見るたび階が高くなっているような気がする。

最初の頃はこの建物から抜けようと下に降りてみたり、上に何があるのか気になり上がってみたりしたが、位置は変わらず、景色も疲労も何も変わらなかった。

夢の中では移動することが出来ない。


水が吹き出る。

不定期に噴水が上がる。

おかしな話だ。

噴水など、一番下からこの階まで達するだなんて普通に考えて無理がある。しかも、水は自分のいる階を越え、さらに上まで上るのだ。

光が集まり、熱量の多いここでは上から降る水飛沫は気持ちいい。

だが、やはり不思議な話であるには変わらない。


はじめて見た時は驚き瞳を開けてしまったが、そのときは酷い目にあったのを覚えている。

水が光に反射していて綺麗だったが、光の強い刺激を受けうずくまってしまった。


そして唐突に目が覚める。

始まるのは日常。

夢のことなど、なかったかのような、平穏。

怖すぎるぐらい、不自然すぎるくらい何も変わらない。


夢は連続で、最近見始めた。

それは何を表すのだろうか。


現実では何も変わったことは起きていない。

何がきっかけとなったのか。

今までどおりの平凡な一日が終わり、また変わらない明日があることは分かっていた。

確かに変わらない明日があった。

それでも、自分の中でだけは変わった。


変わらない日常。

変わらない現状。

変わらないユメ。

変わったのは己。


キーワードは『変化』

自分は変わらないことに不満を持つのか。

自分は変わらないことに安心を得るのか。

それさえもわからない。


夢は自分の心を顕著に表す。

だが、自分はそれを読み取ることも出来ない。


何を求めて、

何を感じて、

何を探しているのか。


空を見上げる。

現実でも空は明るく、輝いている。

やはり眩しいが、痛いほどではない。

自分は空を見上げるのが好きなのだろうか。

なんとなく、そう思った。

なら、自分は空に憧れているのだろう。


明日も変わらない日々が来ることを祈りながら、

                 空を見上げる


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