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朝の風景



 ピンポーン



 翌日、朝から家のチャイムがなる。

 今、あたしはちょうど靴を履こうとしているところだったので、一旦やめてインターホンを見にリビングに戻る。

 インターホン越しに少しそわそわと立っている望が見えた。その姿が待てをしている子犬のようで、ちょっと笑ってしまった。


「どした?」

『一緒に学校行こ!』

「ふふ、ちょっと待ってて」


 朝から元気なこった。

 再度靴を履き玄関を開けると、先ほど見た時と同じ姿勢で望が立っていた。


「おはよう!」

「はよ」

「一緒に行こ!」

「ん。いってきます」


 家の扉を閉めて、ガチャっと鍵をかける。

 ちなみに姉ちゃんは、今日は午前休みで午後から研究室に行くのでまだ寝ている。


「お姉さんは?」

「まだ寝てる」

「昨日私がいたから疲れちゃった?」

「いや。最近卒研で忙しいから、寝れるときにいっぱい寝るんだって」

「そっか」


 そこからは他愛ない話をして、エレベーターに乗り1階まで降りる。

 エントランスから外に出ると、ブロック塀に数匹のカラスがいた。



 カアーカアー



「うん、おはよう。今日もパトロールご苦労様」


 望がそういうと再度短くカアとなき、一斉に飛び去って行った。


「何、あのカラス。挨拶しに来たの?」

「みたいだね。別にいいのにねー」


 望は何ともなしに言う。カラスからの挨拶は日常茶飯事なのか。


「人前ではしない方がいいよ」

「しないから大丈夫!……さくちゃんの前だけ」

「お、おう、それならいいけど……」


 何回か同じことを言われたことがあるのか、してないと言ったときはちょっと面倒くさそうだった。

 最後の一言だけは、あたしにギリギリ聞き取れるくらいで少し恥ずかしそうに聞こえた。そんな感じで言われると、なんかこっちまで照れる。

 ちょっと微妙な空気になってしまっていたので、後ろからの接近に気づくのが遅れてしまった。



「おはよ~」

「おっはよう」

「おはようございます」

「おはよう、黒鳥さん。さては朔にタラシ込まれたな~?」

「人聞きの悪いこと言うな」

「タ、タラシ……?」


 こいつは毎朝失礼な挨拶をしないと気が済まないのか!

 ほら、望が微妙な顔でこっち見てる。


「いーや、朔は人タラシだね。目の前に困ってる人がいたらすぐ助けする癖に、話すのが苦手だからって名前も告げずに立ち去って。これで何人タラシ込んできたか……」

「別に誰彼構わず助けてるわけじゃないし!ただ手伝っただけで、タラシ込んでない!」


 結桜がよよよと泣き真似をしながら、大げさに話す。

 手伝ったのはクラスの子とか姉ちゃんの後輩とかで知ってる子だったし、名前を言う必要はないと思っただけだから!話すのが苦手なのはあってるけど!

 

「あんたが名前言わないせいで、小中とうちが何人からプレゼント渡せって頼まれたと思ってんの?」

「あ、あれはただのお礼でしょ!?」

「あらあら、アテクシ知ってましてよ?そのプレゼントの中にラブレターが混じってたってこと。あーたが呼び出されて告白されてるのも見ましてよ?」

「何キャラだよ。それにそれは全部が全部そうだったわけじゃないし、全部丁重にお断りしたって言ったじゃん」


 確かにプレゼントの中に放課後ここに来てくださいとか、付き合ってくださいとか入ってたことはあったけど、全て断っている。

 知り合いだろうと、お互いよく知らない人と付き合うとかないわ。そういう人って結局うわべだけしか見てなさそうだし、正直疲れそう。


「知ってる知ってる。んで、黒鳥さんはどうタラシ込まれたのかにゃ~?」

「だーかーらー!違うって言ってんじゃん!」

「……さくちゃんとは小さいころに怪我したところを助けてもらって、それからよく遊ぶようになったんです。私が引っ越しで遠くに行くことになってしまったので、長らく会えませんでしたが。別に誑し込まれた訳じゃないですよ?」

「ほえ~、幼馴染ってやつだったかい。そいつぁすまんかったね」


 望がちょっとムッとしながら言うと、結桜はいや~失敬失敬と、自分の頭をポンポンと叩きながら謝る。お前はおっさんか。

 望が言ったことは半分本当で、半分嘘。さすがにカラス助けたら、鴉天狗でしたってことは言えないっしょ。引っ越しの話も望が飛んで自分の家族のもとに帰ったけど、それから会っていなかったのは本当。


「でも、朔から一度も幼馴染がいたって聞いたことないよ?」

「あー、小学校に上がる前に引っ越しちゃったし、別に聞かれなかったから」

「会ったとき気が付かんかったん?」

「昔とずいぶん変わってたからね」


 まず、カラスと鴉天狗の時の姿しか知らなかったからね。ほぼカラスの姿で、鴉天狗の姿を見たのもお別れの時の一回きりだ。しかも逆光でよく見えなかったし、これだけの手篝ですぐわかる人がいたら教えてほしいもんだ。


「でも、思い出してくれた。すっごく、嬉しい」

「へぁっ!……う、うん」


 ふわっと花が咲くような微笑で望が言う。

 不意打ち過ぎて変な声が出てしまった。


「ありゃりゃ~?うちはお邪魔かな~?」

「っそういうんじゃないから!違うから!ニヤニヤすんな!」

「どういうことですか?」


 あ~もう、ウザイ!朝から無駄に体温高くなったんじゃんか!




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