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いつから視えてた?


 

「「ごちそうさまでした」」

「よく食べたね」

「うん、さくちゃんの料理おいしかったもん!」

「そりゃよかった」

「お皿洗うよ」

「んー、じゃあお言葉に甘えようかな」


 望にお皿を洗ってもらって、あたしがそれを拭いて片付けた。

 ふと時計を見ると8時半、意外と時間がたっていた。まだ姉ちゃんは帰ってこないだろう。気になっていることを望に聞く時間はあるか。


「ねえ、のぞみ」

「なぁに、さくちゃん」

「今日のアイツ、何?」

「………あれは、怪異になりそこねた集合体」

「なり損ね………?」

「うん。怪異や妖怪は誰かに語られることでこの世にとどまることができる。でもね、認知されなかったり、そもそも話題にもならなかった怪異はそのまま消えてしまうの。今回のも襲ってきた、というよりは視える人がいたからはしゃいじゃったんだろうね。限度があるけど」 

「じゃあ日中に路地とかにいる奴らは?」

「それはただの幽霊。たまに生き霊とか弱い妖怪もいるけど、基本的にこちらが何もしなければ無害だよ」


 今日の襲ってきた奴は例外で、普段見えているのはただの無害な幽霊か妖怪。だからいつものは無視していれば大丈夫なのか。


「さくちゃん、日中でもはっきり視えるようになったのはいつ?」

「…………」

「大丈夫。今、ここには私たちしかいないよ。それに私が近くにいる限り、変な奴はこないから」


 望があたしの不安を見透かしたように、優しく語りかけてくる。

 

「今日の奴は?」

「アレは例外。鴉天狗(私たち)が守っているこの町で人を襲う馬鹿はいないよ」 

「………………中学2年くらいからかな、はっきりみえるようになったのは」


 なんとか絞り出した声は、少し震えていたと思う。 


「その前は、小さい妖怪がはっきりみえてたけど、幽霊は黒いモヤがみえるくらいだった。中学に上がってから、だんだんとそのモヤの形が分かるようになったんだ。

 小さい頃は妖怪みたいなやつとよく遊んでたんだ。他の人と関わるようになって、アレが皆には視えないものと分かってからは変な子だと思われたくなくて、視えても構わないようにして遊ぶこともやめた。

 そのまま中学に上がった。相変わらず視えてはいたけど、無視し続けてた。だんだんと黒いモヤが形になっていくのも、気のせいだと思い続けた。

 でもある日、帰り道で視てしまった。

 普段は見ないようにしてたんだけど、その日は何故か気になってソレに目を向けてしまった。ソレははっきりと人の形をしていた。ただ、普通の人とは違って生気がなくて、全身に血が滴っていた。

 そこは1年前に、交通事故で女性が亡くなった場所だったんだ。

 あたしはその女性と目が合う前に視線をそらして、走って家に帰った。怖かったのもあったけど、一番は認めたくなかったのかもしれない」

「…………」


 それを認めてしまったら自分が普通じゃないと認めてしまうような気がして、今までのことが全部無駄になってしまうような気がしたから。

 このことを誰かにしゃべったのは初めてだった。家族にも、親友にも話したことはない。

  

「それから、今でもハッキリ視えてる」

「そうだったんだ…………でも、これからは大丈夫!」

「なんで断言できるの?」

「だって、私がいるから!」


 むんっと胸を張って言う望。


「…………ははっなにそれ」

「もー真面目に言ってるんだよ!?」

「はいはい、頼りにしてますよ」

「うん!」


 今度はドンッと胸を叩いて、勢いが良すぎたのかちょっとむせていた。それが全然凜々しくなくて、また笑ってしまった。

 それでも、少しだけ頼もしく見えたのはあたしだけの秘密だ。




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