ただいま混乱中
あの毛玉がいなくなって気が抜けた後、すぐに黒鳥さんを探すためあたりを見回した。
どこにもいない、血の気が引く。
「黒鳥さんはッ!?」
「あー、ちょっと待ってね」
バサッと黒い羽が舞ったかと思うと、その中から出てきたのは黒鳥さんだった。
「え、は、え?」
「あはは~、混乱しちゃうよね。黒鳥望は人に化けてるとき。私は昔さくちゃんに助けてもらった、鴉天狗の望だよ」
「……………はー」
まだ混乱してるけど、黒鳥望と私が助けた鴉天狗は同一人物(人ではないけど)だった。とりあえず無事でよかった。
「さくちゃんが無事でよかったよ~!」
「ちょ、のぞみ!?」
「優しいのは変わらないけど、もっと自分も大事にしてよ!」
「え、あ、はい、すんません?」
心配してくれたのはわかったけど、いきなり抱きつかないでほしい!
私の心臓に悪い。それに、む、胸があたっとるんですよ、お嬢さん?
「さくちゃん」
「な、なに?」
「大丈夫だよ、もう怖いのいないから」
よーしよーしと頭を撫でながら、望がいう。
自分では気がついていなかったが、無意識のうちに震えていたらしい。そこでやっと自分が怖がっていたことに気が付いた。
撫でられているうちに震えは治まってきたが、うるさい鼓動だけは望から離れた後も治まってくれなかった。
聞きたいことは山ほどあるが、とりあえず放り投げてしまった買い物袋を拾う。
ペットボトルなど比較的硬い物は無事だったけど、野菜は形が崩れているものが多かった。葉物は周りの葉っぱをとればなんとか大丈夫そうだ。
「買ったもの、ぐちゃぐちゃになっちゃったね」
「あ~、しょうがないよ。全部持ってって、無事なものを探そう」
「手伝うね」
「ありがとう。そういえば、のぞみは家族と一緒?」
「ううん。他の仲間は、大体山を塒にしてるよ。一部、私みたいに人間の中に紛れ込んでいるんだけど、大半は鴉の姿で巡回してる」
「じゃあ、一人暮らし?」
「そだよー」
女子高生の一人暮らし。
ないことはない。ただ、ここら辺だとかなり珍しいだろう。未だにご老人はイ○ンではなく、ジャス○で通じる地方都市だ。
「……大人に見える仲間の誰かが、家にいた方がいいんじゃない?」
「あ、それは大丈夫。普段、周りの人には妖術でいるように見せかけてるから。ただ、たまに家族の誰かは来るけどね。私は妖術だけでも良かったんだけど、お父さんが私の一人暮らしは心配だーって言って、駄々こねてついてこようとしたの。
お母さんと妹が説得してくれて、月一様子を見に来ることで許してもらったんだけど、その説得に時間がかかっちゃって。それで、こんな微妙な時期になっちゃった」
「Oh……」
娘が心配なのは分かるが、大人が駄々こねるなよ。
てか、妖術って。いやまあ目の前に鴉天狗がいるから納得するけどね。サラッと言われすぎて突っ込むことすらできず、何故かアメリカンな反応が出た。
ぐぅ~
「……のぞみ?」
「あ、えへへ~」
「うちで食べてく?」
「いいの!?」
「いいよ。あたしの手料理で良ければ、だけど」
「さくちゃんの!やったー!」
「あんまり期待しないでね」
あたしが作れるのは簡単な家庭料理なので、そこまで期待はしないでほしい。
まあ、家族以外に食べてもらうのはお菓子以外では初めてだから、いつもよりは頑張ってみますか。




