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額の傷



「すごいねー、黒鳥さん」

「そだねー」

「一気に人気者だよ」

「そだねー」

「……元気ない?」

「それはいつも」

「ちゃんと話聞いてたんだ」


 

 あれから、黒鳥さんはずっと質問攻めだ。

 席は結桜の右後ろだったから、休み時間もずっと人が集まってしゃべっていた。お昼も途切れることがなかったので、ちょっと鬱陶しかった。



「放課後、俺達が学校案内するよ!」

「ちょっと男子~、そこはうちらがやるから早く部活行きなさいよ~」

「いいじゃんいいじゃん、な、行こうぜ?」

「えっと……」

「ほら、黒鳥さん困ってんじゃん」

「あー、すまん」

「そうだ、黒鳥さんは誰がいい?」



 皆よってたかって、なーにやってんだか。 

 まあ、無理に引っ張っていこうとしないところはいい事だと思う。

 あたしには関係ないな、さっさとスーパーよって帰ろ。



「結桜、かえ「さ、梧桐さん!」ろ?」



 え、今の声、黒鳥さん?



「おやおや、朔をご指名とは。黒鳥さんお目が高い!」

「結桜っ!?」

「あちゃー、梧桐をご指名かー」

「しょうがない、梧桐さんに譲るかー」

「え、ちょ、皆?」

「じゃあ、梧桐、しっかり案内しろよー!」

「また明日ね、黒鳥さん!」



 えええ~!?ってもう皆部活行っちゃったよ!早っ!

 黒鳥さんも何であたしを、…………そんなわんこみたいなキラキラお目々で見ないくれ。お預け食らってる犬みたいで心が痛い。



「ゆ、結桜~」

「あ~、うち今日部活あるから。頑張れ?」

「一緒には行ってくれぬと申すか!?」

「武士か」

「あのー」

「はぁあい!?」

「ごめんなさい、急に呼んじゃって。迷惑、ですよね?」



 だからそんなシュンってしないでよ。こっちが悪いみたいじゃんかー。 



「あーいや、別に迷惑じゃない。あたしでよかったら案内するよ」

「本当!?」

「うん、いいよ」

「お~。じゃあ朔、また明日~」

「ん、また明日」



 さて、引き受けちゃったもんはしょうがない。ちゃっちゃっと案内して帰ろ。



「行こ、黒鳥さん」

「うん!」



 校内を案内しつつ、黒鳥さんの行動をチラチラと見る。

 なんか、最初のイメージと全然違う。

 最初は大和撫子って感じだったのに、話してみると人懐っこいわんこ?みたいな感じだった。今もキョロキョロして、私が先に行こうとすると小走りで後ろを 追いついてくる。



「んで、ここが図書室。これでよく行くところは全部かな」

「ありがとう、梧桐さん」

「どーいたしまして……。あのさ、今度から嫌だったらちゃんと言いな?」

「え?」

「いや、あの時なんか嫌そうだったから。それに断ったくらいで嫌いになるようなやつらじゃないから」

「……よく、見てますね」

「ん?普通じゃない?」



 あんなに囲まれて、皆から話しかけられるのは普通に嫌だろう。お昼休みもなんだかんだ大変そうだった。

 それにあのテンションのまま、放課後も一緒にいられるのは疲れると思う。これは私の主観だが、黒鳥さんは人懐っこいけど大勢と長時間わいわいやるのは苦手とみた。


 会話しつつふと黒鳥さんの顔を見ると、うっすらと傷痕が見えた。

 古傷のようだが、彼女の顔にはミスマッチで余計痛そうに見えた。



「ここ、傷痕?痛くない?」

「……あっうん、昔の傷なので今は全然痛くはないです。小さい頃に不注意で怪我しちゃって。でもその時、すぐに手当してくれた子のおかげでこれくらいで済んだんです」

「そうなんだ。優しい子だね、その子」

「―ッ……うん、優しい、です」



 そう言った黒鳥さんが、少し寂しそうに見えたのは気のせいだろうか。




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