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花子さんと駄弁る



「あーもう!サイアクー!せっかく怖くしようと気合入れたのにさー!まぢありえってぃーなんですど!?」

「いやちゃんと怖かったですよ?」

「そうそう!雰囲気バッチリだったんよ!」

「アンタのせいで台無しよ!」

「まあまあ」

「のっちー、アンタなら分かるでしょー!?」

「ええぇ?分かるような分からないような?」


 結桜を落ち着かせた後、今度は花子さんがキレてしまったので3人で宥めている最中だ。

 今の花子さんはさっきの血まみれの制服から、学校指定のワイシャツに真っ赤なカーディガンを腰に巻いている。長い黒髪はサイドテールになっていて花子さん感は全くない。むしろギャル?


「まぢサイアク—————————!!!」


 花子さんのイメージ、全然ちゃうやん。とりあえずこのギャルを宥めよう。






「紹介するね、私の友達のさくちゃんと結桜ちゃん」

「朔です」

「結桜だよ!よろー」

「知ってると思うけど、あーしが花子さんだよ!さっちーとゆらっちね、よろ!」

 

 とりあえず落ち着いた花子さんに自己紹介。

 あれから花子さんは暴れはしなかったけど、トイレなのに声がわんわん反響して少しだけ耳が痛い。あれだけ騒いだのに本人は何もダメージがない、むしろスッキリしたのか上機嫌だ。今も結桜とハイタッチしている。


「ねねね、さっちーってのっちが言ってた朔ってことでおけ?」

「え、多分?」

「そうだよー」

「——————のっち、よかったね」

「うん」


 望が花子さんにあたしのことをなんて話していたのかわからないが、二人の様子から悪いことは言われていないみたいだ。ちょっと気にはなるが、別にいいや。


「さて!久々の来客だし、なんか聞きたいことある?」

「え、何でも?」

「あーしに関係することでも何でもいいよ!今なら答えたげる!」

「じゃあさ、花子さんは何でそんなギャルギャルしいんよ?普通花子さんのイメージっておかっぱワンピースじゃん?」

「イメージふっる。あーしはね、ギャルが好きだからギャルしてんの。花子さんでも、あーしの好きを貫きたいの」


 自信満々で言う花子さんは、怪異だけどとても眩しく見えた。


「てかさー、今時おかっぱなんていないっしょ!ましてやあーしんとこ高校だしぃ?」

「学校ごとに違うんよ?」

「違うね。小学校はワ〇メちゃんみたいな赤いスカート履いてる子多いけど、中学校以降はそこの制服が多いわ。てかそもそも中学校以降ってそんな噂にならないしさー。あーしレアっしょ!」

「確かし~」


 花子さんと他の花子さんトーク、何だこの状況。

 結桜も普通に話してんじゃねーよ、友達か。


「ねえねえ、もいっこ噂について聞いていい?」

「おけおけ、何でも聞いてー」

「遊ぼうって言ったやつは結局どうなったん?」

「あーアレね。聞きたい?」

「すんごい!」


 花子さんは得意げな顔をして話始めた。


「遊ぼうって言ったやつとはね、この学校全体で鬼ごっこすることになんの。ルールは簡単、丑の刻が終わるまでにあーしにタッチされたら終わり」

「…………それだけ?」

「それだけ。だたちょーっと怖がらせたり、悪い子には怪我させたりするかもだけど~、死にゃあしないよ」


 花子さんは怪異らしい背筋がゾッとするような顔で笑っていた。さっきまで興味津々で聞いていた結桜でさえ顔が少しひきつっていた。


「そ、そうなんだ~。じゃあ、気絶してたところを朝見つかった子は?」

「あーしにタッチされた子ね。あーしに捕まっても気絶するだけだよ。つーかさ、あーし達は神隠ししたり怪我させたりはするけど、基本殺しはしない」

「え、そうなの?」

「うん。だって、死んじゃったら語れないじゃん。結果的に亡くなった人もいるけど、あーし達は殺さない。止めを刺すのは、いつだって生きている人間だよ」


 そう最後に吐き捨てた花子さんは、後悔とも呆れとも憐みともとれるような複雑な表情をしていた。




 


「ゆらっち写真撮りたかったんじゃないの?」

「え、撮ってええの?」

「もち!最初はあれだったけど、フツーに話してくれたからそのお礼」

「やった!」


 結桜と花子さんのツーショットを撮ったけど、なんか友達感というかコレジャナイ感がすごいと思う。今までの怪異もそうだったけど、何でこんなにフレンドリーなんだ?


「あのー、できればさっきの姿でも撮りたいなーって」

「え、アレ?スベッてなかった?」

「全然!むしろあっちの方が先輩たち喜びそうなんよ!」

「そう?じゃちょっと待ってて」


 花子さんはくるっとその場で一回転すると、最初に見た血まみれの姿になっていた。


「これでいい?」

「最高!朔、撮って撮って!」

「はいはい」


 今度は花子さんが個室の中に立って、結桜が扉をあけたときのような構図を再現して撮った。うん、こっちの方が怪異らしいだろう。


「ありがと!」

「どいたまー。てかさっちーは一緒に写らないの?」

「え、いや、あたしはいいよ」

「ふーん」


 探るような視線から逃げるように花子さんから顔を逸らす。

 怪異と一緒に撮っても、他のものが写りこむ可能性があるから嫌なんだ。それで双方嫌な気分になったら嫌だし、やっぱりあたしは写真に写るべきじゃないと思う。

 顔を逸らして考え事をしている間も花子さんから視線を感じていたので、逸らしていた顔を戻すと案の定じっとこちらを真顔で見つめていた。


「…………」

「あの、何か?」

「何でもない!それよりさ、現像した写真あとで見してよ!」

「う、うん」


 花子さんが何か言おうとしていたみたいだったので訊こうとしたけど、はぐらからされてしまってそれ以上訊くことができなかった。




 サッチーで電脳コイルのあれが思い浮かんでしまいました。「ボクサッチー、よろしくね」って、あれ怖かったな。


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