七不思議ツアースタート
それからは特に何事もなく、約束の土曜日の夜。あたしと望、結桜は学校の校門前に集まっていた。
「さ~て、やってきました!夜の学校!!」
「結桜うるさい」
「夜はお静かに」
「さっせん!」
結桜のテンションが異常に高く、いつも以上にウザい。まあ、かなり楽しみにしてたし致し方ないか。
「おい、お前ら」
「あ!たなちゅうよっす!」
「先生をつけろ」
「「田中先生、こんばんは」」
「おう。ほれ、鍵。体育館と音楽室、あと美術室は必ず鍵かけろよ。俺は化学実験室にいるから全部周ったら来い」
「あんがとたなちゅう先生!」
田中先生はこれから周る場所の鍵を渡してくれた。
「あ、お前ら最後に屋上行け」
「何かあるんですか?」
「七つ目だよ」
「え?」
田中先生はそれだけ言い残して、さっさと校舎に戻っていってしまった。
「屋上に七つ目の不思議があるってこと?」
「どうもそうらしい」
「これは俄然楽しみですなぁ!!」
うっわ、また結桜のテンションが上がってしまった。でもこれだけは再度言わせろ。
「「夜はお静かに」」
「さっせん!!」
うるせぇ。声響いたわ。
「まずはこの二宮金次郎!相変わらず座ってんね!」
「だね。特に変わったところはなさそうだな~」
じーっと銅像を見ていたけど、特に変化はなかった。
「とりあえず写真撮る?」
「あたし撮るよ」
「のんたん、一緒撮ろ!」
「いいよ。さくちゃんはいいの?」
「いいいい。はい、撮るよー」
「いきなり!?」
写真を撮られるのは好きじゃない。端に何か映り込むことが多く、嫌な気分になるからだ。
ファインダーを覗き込んでシャッターを切る。フィルム式なので現像しないとうまく撮れたか確認できないが、それも楽しみらしい。
「撮れたと思う」
「センキュー。現像が楽しみだねぃ」
「…………」
望がじっと二宮金次郎を見ていた。何か変わったところでもあったんだろうか。
「のぞみ、何かあった?」
「いや、最初手上げてたっけかなって」
「え?あれ!マジだ!本から手ぇ離してる!」
言われてみれば最初はしっかり本を両手で持っていたのに、今は片手だけで持っている。その手も中途半端な所で止まっている。まるで、写真を撮るときに手を上げて終わったからその手を降ろしてる最中だったみたいに。
「これ、1回金次郎さんに背中向けてみない?」
「おっけー!朔も早く早く」
「わかったわかった」
皆で金次郎に背を向けて、数秒たってから振り返ってみると。
「戻ってる」
「動いた!これ動いたんよ!」
今の二宮金次郎は両手で本を持った、最初の姿に戻っていた。
ぴょんぴょんと結桜が飛び跳ねながら喜んでいる。七不思議が本当だったことが嬉しいのはわかるけど、もう少し静かにしてほしい。あたしら以外人がいないから声が響く。
「結桜ちゃん嬉しそうだね」
「そりゃあもう!先輩たちの嘘つきめ、本当じゃないか!ありがとー!!」
「情緒不安定か」
怒るのか感謝するのかどっちかにしろ。
もう次に行こうとすると、望がまだ近くで二宮金次郎を見つめていた。
「もうちょっと大げさに動いても大丈夫だよ」
「のぞみ、次行くよ?」
「うん、今行く!」
望が二宮金次郎の近くで何か話していたが、小さすぎてわたしには聞こえなかった。




