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花子さんはラスボス


 結桜はボードに向き直って、本校舎の3階の普通教室から離れた女子トイレにグルグルと何重にも丸を付ける。それはもう隣の男子トイレが隠れる位の勢いでグルグルと。


「次でラスト!六つ目、3階女子トイレの花子さん!」

「ラスト?もう一つあるんじゃ?」

「七不思議は全部知ると、大変なことになるから知っちゃいけんって!ていうのは建前でー、七つ目は年によってあったりなかったりするんよ」

「年によって?何で?」

「それ自体が七つ目の不思議だから………ってこと?」

「のんたんその考えいいね!先輩たちも分からんって言ってたから、七つ目はそういうことで!」


 望は知っているんだろうか、それとも本当にないこと自体が不思議なんだろうか。望の表情からも、それを読み取ることはできなかった。


「んじゃラストね!本校舎3階一番端っこにあるあんまり使われてない女子トイレ、そこの3番目の個室の扉を3回ノックして『花子さんいらっしゃいますか』と声をかけると『はーい』と声が帰ってくると自然に扉が開いて、その中に真っ赤なスカートを履いた女子生徒がいるっていう話。因みに服装はうちの旧制服だって言う人もいるし、赤い色のスカートだと思ったら血に染まったスカートだったとかいろいろあるんよ」

「その子はいるだけ?」

「うーんこれも色々あってさ、怖くて逃げたから分からないとか、『遊びましょ』って言った人が朝気絶した状態で見つかったとか、ただ話しただけとか話す人によってまちまちなんよ」

「遊ぼうって言ったやつ度胸あんね」

「ねー。その人さ、花子さんと鬼ごっこしたけど捕まった後の記憶がないって言ってたらしくて。とりあえず、行方不明にならなくて良かったねーとは言っておいたけど」

「………なるの?」

「うちではない所ではそういう噂もあるんよ。神隠しにあったってね」


 小さくブルっと体が震えた。ちょっとだけ本当に怖いって思ってしまった。


「花子さんは全国的に有名な怪異だからね。派生がその分多いし、強いのは確かだね」

「でっしょー!てか、のんたんも意外と知ってんね!オカ研入らん?」

「んー」


 悩みながらこちらに視線を向けてくる。あたしに意見を求められてもな。


「のぞみがやりたいなら入れば?」

「さくちゃんは?」

「パス」

「そっか。せっかくだけど、ごめんね結桜ちゃん」

「むー残念!」


 あたしがオカ研に入ることは未来永劫ないと思え、オカルト馬鹿め。



 

「これでこの学校の七不思議は全部だよ!ご清聴ありがとうございました!」

「おつかれ、結桜ちゃん」

「よくしゃべったな。お茶飲む?」

「おおー!もらっていいん?」

「一応教えてくれたお礼」

「ありがとー!」


 結桜はあたしから受け取ったお茶を勢いよく喉に流し込む。どうせ結桜は水分もとらないでノンストップで話すだろうと思っていたから、用意しておいてよかった。


「ぷはー!生き返るー!」

「じゃ、そろそろ帰るか」

「え?うぉっ、もう下校時間じゃん!うちそんな喋ってた?」

「うん。ホントに好きなんだなーって伝わるくらい楽しそうに」

「のんたんにそう言われると照れるんよ~」

「行くよ」

「あ、待って待って!置いてかんでー!」



 少し足早に昇降口まで歩いてきてしまったが、結桜達はすぐに追いついてきた。


「早い!」

「遅い」

「そんな早く行かなくてもよかったんじゃない?」

「あーごめん」

「うちには!?」

「さっきのお茶でチャラ」

「ぬー!許すん!」

「どっち?」


 喋りながら靴を履き替えて、校門まで歩く。結桜とは帰る方向が逆なので、校門前で別れる。


「じゃ、今週の土曜日!忘れんで!」

「はいはい。またな」

「また明日ねー」

「まったねー」


 望と二人並んで帰る。今まで一人だったけど、望が来てから変わった習慣の一つだ。


「結桜ちゃんってホントにオカルト好きなんだね~」

「ああ、昔っから好きでよく休み時間に話してたよ」

「それって教室で?」

「うん。段々少なくなったけど、今でもたまに話してるよ。ただ、自分が話さないで相手の話を聞く感じ。結桜が話すと今日みたいに熱が入るからって、普段は抑えてるらしい」


 小学校低学年の時は今日みたいに熱が入ったように話していた。

 学年が上がるにつれてそういうことに興味がある子が減っていって、段々と結桜の話を聞く人は少なくなっていった。その空気を彼女も感じたのか、一時期学校でそういうことを一切話さなくなって元気がなかった時期があった。その姿があんまりにも苦しそうだったから、あたしが結桜の怪談を聞いてあげていたら段々と元気を取り戻して今の結桜みたいになった。正直ウザい時もあるけど元気がない結桜なんて結桜じゃないし、あのまま好きなことを諦めた結桜を見ているのも嫌だったから今の結桜になってよかったと思ってる。


「結桜ちゃんのこと、よく知ってるんだね」

「んー、まあなんだかんだ付き合い長いしな~。腐れ縁だと思ってる」

「ふふっ、いいな~」

「のぞみとだってこれから一緒に過ごせるんだから、もっと色々知っていけるよ」

「———————そうだね!」

「そうだよ。あ、今日夕飯食べにくる?」

「行く!」

 

 今日の夕飯は何にしよっかな?

 あ、豚肉があったし生姜焼きにでもしようか。



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