肝試しに行かないかい?
今日は5限目で終わりだったので、帰りの支度をしていると後ろの結桜から声をかけられた。
「今度オカ研で肝試しすることになったんだけど、いかないかい?」
「………………」
「うん。一応聞いただけだからそんな睨まんで?」
結桜を無言で睨むと、半笑いでごめんごめんと平謝りしてくる。
オカルト好きなのはいいんだけど、こうやって誘ってくるのはやめてほしい。本当はそういう曰くつきの所にはいってほしくないけど、結桜は言ってもやめないし。仕方がないから場所聞いて、本当にヤバいところだったら止める。あたしがガチで止めたところにはいかないから多めに見ている。それに結桜の趣味を奪うわけにもいかない。
「んで、今度はどこ行くの?」
「ここ、学校。部活の新入生歓迎のために、毎年レクリエーションとしてやってるんよ。後輩にカメラ渡して七不思議の場所の写真を撮って、その写真を現像して後で皆で見るんだって~。先輩たちも噂はあるけど、本当に視た人はいないって言ってたし安全だと思うよ~」
「へえ~」
学校にもちらほらいたりはするけど、今の所害はないから大丈夫かな?
それにしても学校の七不思議か~、定番だよね。
「結桜ちゃん、それ私もついて行っていい?」
「ちょおっのぞみ!?」
「おお!!いいよいいよ!先輩たちに言っとくよ!!」
望が行くというもんだから、驚いてさっと望の近くまでいって小声で話しかける。
「なんでついてくの?」
「んー、一応巡回も兼ねて行こうかなって」
「巡回?」
「うん。この学校の怪異に悪い子はいないけど、いたずらっ子が多いからね。ケガさせないように注意はしておこうかなって」
「あー」
「あと友達に会いに行こうかなって」
「え?今じゃだめなん?」
「うん、暗くないと会えないの」
暗くないと会えない?もしかして怪異と友達なの?
いやまあ望自体が鴉天狗だし、人ならざるものだから分からないでもないけどさ。
「昔からの友達なんだけど、最近忙しくて会えてなかったからね」
「そうなんだ………」
昔からの望の友達………会ってみたい気もするけど、夜の学校に行くのか~。その前に夜道を歩かなくちゃいけないのか~、うーん…………。
「もしかして、さくちゃん会ってみたい?」
「え!?あ、いや、でも、うーん……」
「夜出歩くの心配?」
「…………うん」
「前も言ったけど、私と一緒なら相当変な奴以外はこないよ。あれ以来、鴉とか他の仲間からの報告もないから大丈夫だと思う。それに、さくちゃんが会いたいっていうなら私が守るよ?」
首傾げながら守るよって可愛く言われてるのに、不思議と安心感があるのは何故だろう。
「じゃあ、ちょっと行ってみようか「本当!?」……結桜うるさい」
「あぁんヒドゥ~イ」
「きもっ」
「それは傷つくわ~」
「ごめんね?」
「いいよ?」
「「…………っぷ、はははは!」」
「ん?なんか面白いことあった?」
「なーんも?」
「ねー」
望が突然笑い出した不思議そうにあたしたちを見てたけど、こればっかりはなんて説明したらいいかわからない。よくあるじゃん?友達と変なやり取りして、なんか笑ってしまうこと。
「じゃあ、今週の土曜日校門前ね!あ、後で七不思議について教えるから!じゃね!」
「ばいば~い」
「また明日」
今日もオカ研があるらしく、上機嫌で結桜は教室を出て行った。
うむ、放課後なのに元気なこって。
「あたしたちも帰ろっか。あ、買い物、付き合ってくれる?」
「もちろん!」
わーお、わんこのお耳と尻尾が見えるよ。お昼不機嫌だったのが嘘みたいだ。
他愛ない会話をしながら、下駄箱まで行き靴を履き替え、学校から出る。
「今日何食べたい?」
「んーっと……………」
ん-っとから、かれこれ1分は考えこんでいる。
「悩んでるね」
「だって、さくちゃんのご飯全部おいしいから決めらんないだもん!」
「お、おう」
素直に嬉しいけど、このままでは今日の献立が決まらない。
「肉と魚どっちが食べたい?」
「魚!」
「じゃあ、魚コーナー見て献立決めよっか」
「うん!」
今日は何事もなく帰れた。良きかな、良きかな。
いつものスーパーで魚以外にも、野菜やストックしてる調味料も買った。買い物は大抵一人で行くので、多くは買えないしボトル系の重いものを持って帰るまでが大変だ。望が一緒だといつもより重いものも野菜もたくさん買えるし、望は夕飯を準備しなくてもいいと何気にwin-winだと思ってる。
「今日は赤魚の煮つけにします」
「はい、先生!」
「のぞみ、毎回手伝わなくてもいいんだよ?」
現在、キッチンに立つあたしの隣に望がやる気満々で立っている。
因みに二人とも部屋着に着替えている。制服汚したくないし、何より窮屈だからね。
「一応お客さんだし、休んでていいよ?」
「んー、でもさくちゃんと一緒になんかしてたい」
「ん、そっか」
この子は無自覚なのかな?だとしたら末恐ろしい。頑張ってスンってしてるけど、心の中は滅茶苦茶ニヤけてます。
こんなに綺麗でかわいい子に、一緒になんかしたいって言われて断れる人がいたら見てみたい。
「さくちゃん?」
「あっ、じゃあ、わかめを水でもどしておいてくれる?」
「わかった!」
「全部入れないで、二握りくらいでいいからね」
「う、うん」
あの反応、一袋全部入れようとしたな。増えるわかめは尋常じゃないくらい増えるから、一袋もやってしまったらサラダも何なら明日の朝もわかめを食べる羽目になる。今日は煮つけとみそ汁に使うから多めでもいいけど、さすがに一袋は多すぎる。
さて、煮つけの準備をしよう。と言っても赤魚の下処理をして、煮汁を作るだけだが。赤魚を煮ている間に、豆腐の味噌汁とネギ、後は浅漬けと……長芋としめじがあったな、あれを鶏肉と炒めよう。
「さくちゃん、このわかめすごいね」
「ん?ああ、一袋入れなくてよかったでしょ?」
「うん」
妙に望が静かだと思ったら、ずっとわかめ見てたのか。
小さいボウルだが、半分くらいがわかめで埋まっていた。思い知ったか、増えるわかめの威力。
戻したわかめの水を少し切ってから、半分ずつ煮つけとみそ汁に加える。あとはもう少し煮れば完成だ。
「のぞみ、お皿とお茶碗出してくれる?」
「いいよ!」
勝手知ったる何とやら。細かい指示をしなくても大皿ととりわけ用の小皿、煮つけ用の少し大きめの皿、お茶碗とお椀を手際よく出していく。まあ、それくらいここでご飯食べてるからね。毎日ではないけど、少なくとも週3日は来ていると思う。あたしも姉がいないと一人なので、望がいたほうが作り甲斐がある。
「準備できたよ!」
「ありがとう。じゃあ盛り付けるから、それ運んで」
「うん!」
大皿に炒め物、魚用の皿に煮魚、お茶碗にご飯、お椀にみそ汁と次々に盛り付けて運んでもらう。浅漬けはタッパーでいいや。
「さくちゃん、早く!」
「はいはい。じゃあ、いただきます」
「いただきます!」
まずは炒め物、うん、無難な出来だ。長芋は最後の方にいれたのでシャキシャキのまま、しめじと鶏肉はしっかりバターと醤油を絡めたので長芋と一緒に食べるとちょうどいい塩梅だ。煮物もちょっとしょっぱくていい、ご飯とあう。浅漬けは箸休めとして最適な塩加減、そのままでも食べやすいくらい。
望も夢中で食べてくれているらしく、終始顔がほころんでいる。毎回美味しそうに食べてくれるので、作り手冥利に尽きる。
「「ごちそうさまでした」」
「今日もおいしかったー!」
「よかった。今日は何が一番おいしかった?」
「んーとね、どれも美味しかったけど炒め物がよかった!」
「お、そうか。じゃあまた今度作るね」
「うん!じゃあお皿洗うから、お茶の準備よろしくー」
「りょーかい」
もはや定番と化しいている望の皿洗いとあたしのお茶の準備。大概は緑茶で、デザートがあるときはそれによってお茶を変える。今日は特に何もないのでいつも通り緑茶だ。
「終わったよー」
「ありがとう。お茶もはいったよ」
「ありがとー」
二人でお茶を一口飲み、一服する。だるーんとしたこの時間が好きだ。話をするときもあるけど、ただただ無言の時もある。望と一緒ならそれも苦じゃない。
「ねえ、さくちゃん」
「なーにー?」
「ちょっとお散歩しない?」
「え?」




