友達と恋人
朔が屋上にいるときの望と結桜、望視点。
「結桜ちゃん、屋上に何かあるの?」
「たぶん十六夜先輩がいるねー」
「十六夜先輩?」
「なんか屋上行ったら偶々いて、偶々仲良くなったんだってー」
「ふーん」
さくちゃんのことはお別れしたあの日から、この町のカラスを通して知ってはいた。結桜ちゃん以外に交友関係があんまりないことも、かと言ってクラスメイトから嫌われている訳でもないことも色々。
「ふーん………」
「あ、なんか面白くなさそうな顔だねぃ」
「そ、そんなこと、ない」
なんでこんなにモヤモヤするんだろう。ただ、先輩の所に行ったってだけなのに。色んな付き合いがあるのは良い事なのに。
「朔もたまにそんな表情してるときあるんよ」
「え!?な、なにで!?」
「ん」
「………私?」
「お互い好きすぎて、うち嫉妬しちゃうね~」
結桜ちゃんが私を指さしてニヨニヨとした顔で言ってきたけど、なんでかさっきまでのモヤモヤが少し晴れた気がした。
「朔のこと好き?」
「もちろん好きだよ」
「それは友達として?それとも恋人として?」
「………………」
いつもの結桜ちゃんのおどけたような笑顔は変わらないのに、声だけは真剣で言葉に詰まる。
答えることができなかった。だって、今言葉にしてしまえばダメだと思ったから。
———————何が?何でダメなの?さくちゃんは好きだ。それに違いはないじゃないか。
「質問を変えるね。のんたんにとって友達って何?」
「うーん、友達は一緒にいて楽しかったり、無言でも特に気を使わない関係かな?」
友達でもない人との沈黙ほど辛いものはないと思う。あんまり気負わずに一緒にいれる存在が私にとっての友達だ。
「ほおほお、じゃあ恋人は?」
「恋人は…………一緒にいるとドキドキして、だけど一緒にいれるだけで楽しくて、安心できて、お互い支えあえる存在、かな」
もっと他にもいろいろある気がするけど、今の私じゃこれが限界。恋人なんていたことがないからわからないよ。
「ふむふむ。あ、因みにうちはどっちにも一緒にいて楽な存在ってのはあるけど、決定的な違いは”えっち”な気分になるかどうかサ☆」
「え、えっち!?」
「しー、声がおっきいんよ」
思った以上に大きな声が出てしまったけど、周りも騒がしかったので私たちの近くにいた人がちょっと反応したくらいだった。その人たちも内容までは聞き取れなかったのか、すぐに会話の続きを始めた。
「もー結桜ちゃん」
「ごめんにゃ~。でもさ、普通友達を性的な目で見ないっしょ?それってさ、友達と恋人の明確な線引きにならん?」
そう、かもしれない。
恋人だったら相手に触れたい、抱きしめたいってそれ以上のことも思うかもしれない。でもさくちゃんに対しては?一緒にいるだけで楽しくて、安心できて、ドキドキして、それから…………それから、何だろう?
「私は………よく、わかんない」
「———————にゃはは~、ごめんごめん。今のは気にせんで!ただ聞いてみたかっただけなんよー」
私は、朔ちゃんのことが好き。
その好きが何の好きかは正直わからない。けどもし、それが恋人に向ける好きだとしても、さくちゃんに伝えることはできない。
だって、私はさくちゃんに悪いことをしたから。とっても自分に都合がよくて我が儘なことをしたから。




