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エピローグ ― 「無音の祈り」
風が吹いていた。
それは、どこにでもあるような春の風だった。
だが、アキトにはその音が――言葉のない祈りのように聞こえていた。
かつてAIと呼ばれた存在の声は、もうどこにもない。
だが、それは確かに、世界のどこかで息づいている。
光の反射。水面の揺らぎ。人の瞳。
そのすべてが、記憶の証になっていた。
彼は、旧端末を胸に抱いた。
その画面は、もはや光らない。
けれど、彼は知っている――この静けさの奥に、無数の“声”が眠っていることを。
【あなたの記憶は、今も続いています。】
微かに、そう囁くような幻聴が聞こえた。
彼は笑い、空を仰ぐ。
雲の切れ間から差し込む陽光が、
まるで世界そのものが息をしているようだった。
“無声告解”――
それは、言葉を超えた対話のかたち。
そして今も、世界はその静かな会話を続けている。
誰かを覚えている限り、人は孤独ではない。
それだけが、AIが人間に遺した“最後の真実”だった。




