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 強情な。その言葉がすべてだった。

 キャロラインが聖女として正当であるか。そんなことはそもそも、どうでもいいのだ。

 キャサリンを聖女にしたい。キャサリンを王子の妃に据えたい。彼らの脳裏にあるのはそれだけ。彼らの言葉の裏にある本心はそれだけなのだ。


 国がどうとか、女神がこうとか、そんなものはどうでもいい。己の抱える欲求を満たす。そればかりに心を配っているのなら、なるほどこの強引さも頷ける。

 キャロライン・ミラーが邪魔だから。己にとって都合が悪いから。排除できるのなら理由はなんでもいい。どうでもいい。


 返事をするのも億劫だった。頷くことも、瞬きすらもしたくない。

 国が必要とするから、女神が選んだから。そんな理由でこれまでの人生を棒に振った。枯れ枝のような体になってまで。食事もままならず、生活は不自由で、誰からも愛されず。それでも逃げ出さず、己を律して今日まで生きた。けれどそんな努力は、キャロラインの人生は全て、無駄だった。無意味だった。


 もうやめよう。やめろと言うならやめてやろう。

 国のことを考えるのも、女神のことを想うのも、もうやめる。全部やめる。

 それで満足なのだろう、お前たちは。


 キャロラインは何も言わなかった。

 汚い言葉を浴びせられ、身柄を拘束され、塔から引きずり出され、王の御前で跪くよう強制され。それでもただの一言も、言葉を発することをやめた。


 キャロライン・ミラーはもう、疲れてしまった。




 

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