8 魔のヒエラルキー
孤児支援施設を裏で操っていた館長が倒されたが、数ある脅威の中の1つに過ぎない
そこで"あいつ"が動き出す。竜輝達を本気で潰すつもりだ
望月の勤務しているネットニュース配信会社
ここはこの会社の編集長 安西 が設立したこじんまりとした会社
「おぉ望月君、実は今回の事についてなんだけど…」
安西編集長が神妙な顔で言った
「魔物について…ですよね」
「そうそれについてだ。一部界隈では悪く話題になってるらしく、真偽は分からないけどデマ情報として投稿が消されてしまったそうじゃないか」
「いや、事実なんですけども…魔物がいた証拠もしっかり撮れてますし」
「疑いたくはないんだけど…この会社も小さいからさ、いったん手を引くのもありだと思うんだ」
望月は邪神の幻影に襲われたことを思い出した
「そうですよね。じゃあ…私は普通の仕事に戻ります」
「ありかとう、力になれなくてごめんな」
昼になり、望月は外にある自販機で缶コーヒーを買った
「迷惑かけられないしな…この会社も言っちゃ悪いけど小さいところだし、そこで自分がでしゃばってネットニュースとか書き出したらダメだもんな」
グビッ、
「あぁ苦い。いつにも増して苦い」
ゴクゴクとコーヒを飲み干し、ゴミ箱に缶を捨てた
そうしてスマホをいじっているとふと誰かからDMがくる
それは、ただの一般ユーザーからのものだった。
話を聞くうちに、魔物についてネットでつぶやいた知り合いが謎の影に殺されたと伝えにきたそうだ
「詳しく知りたいので今から添付する住所に来て下さい。ちなみになんで私にDMを?」
何か情報を得られると思い、望月は速攻で返事を返した
あなたのすぐ消された魔物についての投稿を見て、私の知り合いが人間に化ける魔物を見たことあるって言ってたんです。それで知り合いが便乗してその様な投稿をしたら殺されてしまい…
一応その画像を送りますね
「画像…」
ドキドキしながらその画像が来るのを待つ望月
ポン…
1つの画像が添付されました
すぐさま望月は送られてきた画像を見た
「あの時見た魔物の顔と全然違う。だが人型という点では同じか。魔物にはそれぞれ個体差があるということなのか?」
「ひとまずお礼の返信だけでも…」
そう思って送信したが、なんの返信も来ない
それに加えて既読すらつかなかった…
「あれ、既読がつかない?もう会話終了かな?」
すると急に望月のスマホを持つ手が震えだす
なんと望月のスマホ画面が黒ずんでいったのだ
「まさか、あいつが来る…!」
望月はスマホを投げ捨てて急いでその場から逃げた
タッタッタッ…
「人間に化ける魔物、この情報さえあればいい…」
………………
深夜――
立之宮の飲み屋街にて
酔っぱらいのおっさん2人が夜道を徘徊している
「次はあの隠れ家で飲み尽くそう」
ひとけの少ない隠れ家までの道を歩いている
「いいですね、会社でのストレスをパッと発散しましょう」
「しかし、税金が高すぎて手取りに納得できませんよね」
「だからあの隠れ家に行くんだろ。安くて最高なんだから」
「でも手取りが良かったらもっといいところに行けるかもしれないんですよ」
「もうそんなこと考えるな、考えるだけ無駄だし面倒くさい」
そこで酔っ払った上司が何かを見つける
「それよりもこの黒い塊なんだ?」
「よし、お前持ってみろ」
2m程の黒い塊を見つけた様子
周りが暗く酔っ払っているので詳しくは分からない…
「嫌ですよ。だって絶対重いでしょそんなの」
「いいからいいから」
「分かりましたよ…ふん!ぐぁぁあ重い」
「アハハハ!重いなんて最初から分かってたって!アハハハ!」
酔っ払ってツボの浅くなった上司は笑い転げている
「笑いすぎですって」
すると急にその黒い塊が動き出した
手を広げ、静かにその手を近付ける
「触ったな」
触ってきた会社員の頭を掴み、瞬時に潰してしまった
「笑いすぎてお腹痛いよもう」
頭部が無くただただ立ち尽くしている部下
「何か言ってよ」
上司は立ち上がって後輩の肩に手を置いた
だが、その重みで後輩は倒れてしまった
「ひ、ヒィ!何だよこれ…!頭が…頭が…」
「私の名前はロブだ。お前はリュウガという奴を知っているか」
「だ、誰だよそれ」
「そうか、じゃあお前も同じ様にしてやる」
「や、やめろ…!やめろ!」
ブヂャ!!
………………
次の日
誰もいない昼間の公園…
傷をおさえながらリュウガがベンチに座る
「魔力の消費と供給が追いつかない…」
渋く低い声が響く
腕にまかれた包帯を取って傷の様子を見る
「再生するのにも時間がかかる…」
再生しきっていないその手で煙草を掴み、火をつけた
ガサガサッ…
リュウガの背後に何者かが忍び込む
姿を現したのはマカルの手先だった
「見つけたぞリュウガ!」
咄嗟に後ろを向いたリュウガは、殴りかかってくるその手先の拳を掴んでカウンターを食らわせた
ドサッ…
「や、やめろ…!!」
「俺もお前を殺したくはない。それは俺も魔物だからな」
「俺はマカルに雇われただけなんだ」
「多額の金を積まれてか」
「そ…そんなことは」
「金に釣られてしまったお前に言っておく、お前でさえ邪神の道具に過ぎ無いからな」
「俺は妻をマカル達に殺されてしまったことで目覚めたんだよ。壊すべきは邪神を崇拝する魔物達だと」
「早く来てください…ロブ」
「ロブ?」
ブサッ!!
リュウガは刀で魔物を突き刺した
そして背後を見る
すると
トコトコ…
「探し続けてようやく見つけた。君がマカルの言ってた反逆者とやらか。見るからに弱そうだがな」
マカルの命令に従ってそこにロブがやってくる
黒い装甲を身に纏った屈強な見た目で、2mもの身長が見たものを怖がらせる
「誰だお前は…」
「私はロブだ!お前を殺す!!」
勢いよく走り出しリュウガに向けて拳を振り下ろした
リュウガは後ろに下がりその攻撃を避ける。ロブの拳は地面に当たり、大きな音を立てて地面をへこませた
急いでリュウガは刀を構える。刀に魔力を纏い立ち向かった
ロブは怖気づくことなくそのままリュウガの刀を握り掴んだ
「お前の魔法をいただく」
刀に纏っていた魔力が全てロブに吸収されていく…
「馬鹿…な…」
「お返しだ、ハアッ!!」
ボガーーン!!
魔法弾をくらいリュウガは吹き飛ばされた
ロブはリュウガを追って追撃を試みる
1撃2撃と攻撃を続け、最後に膝蹴りをしてリュウガを空高くへ蹴り飛ばした
背中から地に落ちるリュウガ
「くそ…なんなんだこいつ、強すぎる」
「私と張り合うことは出来ない」
「あいつは魔力を吸収してきた。だから魔法を使わず戦えばいいだけ」
「この刀でお前を斬り殺してやる…!」
「この装甲を見てもまだそんな事を言えるのか…?お前はただ、マカルを裏切ったことを後悔すればいい」
「オラァァ!!」
キンッ!キンッ!
リュウガの刀はロブの硬い装甲に弾かれるだけ
「魔法が使えなきゃこんなもんか」
ロブは刀を手で弾き、
ガシッ!
リュウガの首を力強く握った。そしてゆっくりと持ち上げる
「助かる道はない」
バンッ!バンッ!
「ぐ、グハッ…いけ、今のうちだ…」
「ん?」
すると、リュウガは刀に魔力を纏わせ独自行動出来るようにした
ロブの背中はガラ空き、勢い良く刀が突き刺さる
「グハァッ…!!吸収されない隙を作ってそのタイミングで魔法を使うとは…」
リュウガを手から離し、片膝をついて体勢を崩した
「戻ってこい刀」
刀がロブの背中から抜け出すと、リュウガのもとに戻ろうする。しかし…
ガシッ!
独自行動中の刀をロブは力強く握った
「こんなの1本刺さったくらいで怯むことはない…!」
膝蹴りをして刀を半分に折ってしまった
だが、半分に折られようとも独自行動は続いていた。2本の刃がロブを襲う
「このうちに、ここから去るしか無い…」
リュウガは速やかに立ち去った
………………
地下通路の視察に行った総理大臣
「地下通路の建設が終わったようですね」
「過去最高の税収になったから思ったよりすぐ終われた。俺達のためにこの国民からは搾れるだけ搾り取っておけ」
「メディアはもう私達の物だ。ネット規制は私達が済ませている。闇が暴かれようとも届きはしない、好きに暴れろ」
するとマカルに、アグルクから通信が入る
「例の、館長サソリとの連絡が取れない…」
「白犬使いの脅威が顕著に表れだしている。下級魔物達にも魔法の習得をしなければならない」
「じゃあそのための学校を1からつくるしかないな」
「それでは遅い、元あった場所を改装し直ちに下級共を呼び込むんだ」
「教育内容は必ず俺らを超えないレベルの知識、予定は3校くらいだな」
「まぁまだサソリが死んだとは限らない。アグルクは姿を確認しに行ってくれ」
「分かった」