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魔犬士  作者: チョコ
7/22

7 汚染された場所

職員の密告で施設について教えてもらった竜輝達

しかしその日の夜にその職員は殺されてしまった

最後のありがとう、この言葉が竜輝達を立ち上がらせる



 

午後9時頃――

 


夜の孤児支援施設に忍び込んだ竜輝とマナ

誰もいないのを確認し、そのまま門をよじ登った

慎重に静かに歩き、建物の中に入っていく…



だが、敷地内の木陰、その一本一本に目を輝かせている職員が立っていた


慎重に侵入していく竜輝達を舐めるように目で追っている。その光景は不気味な程、異様だった

 



 

だが、それに気付かず竜輝達は中へ中へと入っていく…

  

「そう簡単には見つからないだろうが、この施設がおかしいというのは確定している。だから最悪力ずくでも探し出すしかない」

竜輝は言った 


「逆に夜入る方が正解だったりするかもね、多少は暗いけど」


手がかりは窓から差してくる月の光と、少しの街灯の光だけ

それだけを頼りにして歩いていると…


何やら背後から気配を感じ出す 

 


 

すると…

「おかしいなぁ、関係者以外は立ち入り禁止のはずなんだけどねぇ…!!」

竜輝の背後から、その声と共に劇薬が飛んできた



竜輝は顔を横に傾けてその劇薬を避ける

「やはり来たか…」

後ろを向いてすぐさま何発も火炎弾を放つ

 


  

館長は、指と指の間に挟んだメスを何本も飛ばし相殺させる

館長の姿はペストマスクをつけており、顔が分からないようになっている

「君のせいで1人、ここの職員が死んじゃったよ。余計なことしちゃったね」


「お前が勝手に殺しておいて、俺のせいにするな」


「真実を教えようとするやつは消すのが当たり前、それが基本だ。そして次はお前らの番…くらえ、ポイズンスモッグ!」

辺りに紫色の霧が漂い始める



「私にかかればそんな技は無効化される!」

「ホーリーキュア」

マナは自身の体内に抗体を発生させ、その霧を物ともせずに突進していく


「流石は聖獣だけあるな…」

館長はそう呟くと後ろに飛び、マナの噛みつきを避ける

着地すると同時に数本のメスをマナに向けて投げつけた


すばしっこく避けるマナには当たる気配もない

まだマナの抗体は生き続けている。そのうちにマナは攻撃を仕掛ける



「あっちこっちと避けやがって鬱陶しい…!こうなったらいでよ、手下達」

魔物と化した子供達がその声と共に現れる



突如として現れた魔物達の拳が何発もマナに攻撃を与える


 

急いで竜輝のもとに駆け寄るマナ

「くそ…本性表しやがったな…」



 

館長を守るように魔物が前にはだかる

「こいつらは俺の手駒だ。ヒッヒッヒ…」

魔物達が毒霧を吸い込まないように、館長はガスマスクを魔物達に手渡した。

館長は、マスクの裏でニヤリと余裕そうな笑みを浮かべる


そして館長はメスを両手に装備し始め、再び飛ばしてきた



 

 チッ…

「うっ、」

竜輝の頬と腕をかすんでしまった

多少の傷にみられたが、そこから毒霧が入り込むたびにジリジリと痛みが伴う


マナのホーリーキュアは自身に使うことしか出来ない

竜輝は直ちに霧を晴らすため、火風を起こし霧を飲み込ます

だが、毒霧は焼き尽くされるどころか火を媒介しさらに毒をまき散らし出した



  

「ふふふ…この時が来たようだ」

館長が指を鳴らすと、窓一面シャッターが閉まりだす

「さぁいつまで保つのか見ものだ。いけ手駒達!!」

魔物達が竜輝に飛びかかってくる



 

「この魔物は、あの子供達…」

今朝、砂場で遊んでいたあの子達の姿が思い浮かんでしまい、つい握り拳が緩んでしまう…


「竜輝、仕方ない倒すんだ!光牙!!」

マナによって1体2体と魔物の身体が切り裂かれる



「うっ、くそ…毒のせいで身体が麻痺する」

躊躇しているうちに身体に毒がまわっていく

「ぐはっ、ぐあっ!!」

3体の魔物に囲まれる竜輝、身体が思うように動かず何発も攻撃を食らってしまう


だがそこにマナがやってくると、すぐにその魔物を片付けてくれた

「このままじゃ本当に危ない…いったいどうすれば」


 ヒュンッ…!

 グサッ!

マナに数本のメスが突き刺さる



「ふふふ…どうだい私の技は?」

「竜輝は毒を吸い込み上手く戦えなく、そこの犬は定期的に毒を回復しなければならない。だから魔力がどんどん減っていく。そして逃げることは出来ない、完璧だ」

「ほら、私の駒はまだ何体もいるぞ。ゆけ!!」



「くるぞ、竜輝!」

 

「分かった…はっ!オラァ!」

竜輝は麻痺する体で必死に魔物と戦っている。するとそこであることを思い出した

「あの手下が被っているガスマスクを奪えれば…」

 


1体の魔物が竜輝めがけて走ってくる

竜輝は勢いよくそいつの首を掴み、ガスマスクを強引に取った

「はあぁ…はあぁ…これさえあれば」

立っていた竜輝だが、毒の痛みからか膝をついてしまう

「早く、付けないと……」


  

 

すると…

「そのガスマスクは…使っちゃ駄目、中に爆弾が隠されてるか…ら」

最後の命を振り絞って竜輝に伝えようとするその魔物


「爆弾…?」

ガスマスクの装着部を見ると、そこに小型の爆弾が付いていた

急いでガスマスクを宙に投げる

 


「くそ…この失敗作が、あいつ諸共爆破して死ね!」

館長がスイッチを押すと、そのガスマスクが爆発した

「ただの道具の分際で喋ろうだなんてもっての他」


 


爆発によって小さい瓦礫が竜輝の肌をかすむ、爆風によって倒れてしまった

横を見ると、さっきの魔物が絶命して壁に寄りかかっていた


魔物になってしまった子供達を助けるすべが無いのは知っていたのに、やっぱり助けられないのだと知ると、何ともいえないくらいの罪悪感と怒りが襲いかかってくる


竜輝は痛む身体を起こし、怒りの眼差しで館長の方を見た

「人間はお前らの道具じゃねぇんだ。こんなことされて黙ってられるかよ!」

竜輝の怒りから発せられる炎の熱が辺りの毒霧を蒸発させた



竜輝は炎を拳に纏わせ、目の前の毒霧を裂きながら館長めがけて歩いて行く




身構える館長

だが館長はただの薬使い、武術なんて知りもしない。慌てて手元にある劇薬を好き勝手に投げる


 

竜輝はその劇薬を避けながら走って行く


 パリン…パリン… 

「くるなおま…」


 バゴンッ!! 

 


館長は竜輝に殴られ床に叩きつけられる。館長は再び竜輝に身体を起こされ殴られた

最後は力のこもった一撃をくらわされる

 バゴーーン!!

「ぐふぁっ!!」

壁にぶつかると、そのまま穴が空いて館長は外に放り出された



竜輝は外に出ると澄み渡った空気を一呼吸する。体が少し軽くなった気がした



 ザッ、ザッ、

「もう動かねぇか」

ボコボコに変形している館長はピクリとも動かない

それでもしばらく竜輝はその場を見下ろしていた

怒りと、少しの後味の悪さをかみしめながらマナの元へと戻っていく


 

澄んだ夜風が毒をかき消し、

暗い施設の中に少しだけの静寂が戻り始めていた



「行こうマナ、これでまだ終わったわけじゃない」

2人の影が闇の中に消えていった…



 

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