最終話 魔剣士
聖獣が身を挺して邪神のシールドを破壊させる
残された竜輝達、最後の戦いに向けて、悲しみも悔しさも全て噛み締めて挑む
聖なる魔力が全て、邪神のシールドに集結する
激しい衝撃と共に邪神は爆発に包まれた
もうもうと立ち込める爆煙。その煙が晴れると邪神のシールドはそこにはなかった
「くっ……」
今まで弱気になっていた自分が情けないと拳を固く握り、地面を殴った
その拳で魔剣を手に取ると、その剣先を邪神に向ける
邪神は嘲る様な笑い声が聞こえてくる。それもそのはず、聖獣の存在が消えたからだ。邪神の目に映る彼らは虫けら同然
「早いうちに片付けてやろう」
闇の玉を生成させ、真下に向けて放つ
「くる…!」
聖犬は何重にも層となった聖なるシールドを張った
だがこのままでは邪神の闇を抱えきることは出来ない
すると、竜輝は魔剣を叩きつけた
吸収したマカルの魔力が岩魔法を暴走させた。地底からせり上がった巨大な岩壁が、聖犬のシールドを包み込むように重なる
バゴォォン!!
邪神の放った闇が岩壁に激突、凄まじい衝撃をあげながら削り、火花を散らしながら速度を落としていく。最後には耐えきれぬ岩壁が内側から弾け飛び、凄まじい爆発が戦場を覆い尽くした
砕けた岩壁が石塊となって竜輝達へ降り落ちていく
河井の目の前に落ちようとしたその時、石塊の動きが止まった
竜輝の魔力によって岩が浮遊した
石塊の多さ、竜輝の魔力が悲鳴を上げる。すぐさま手を前に押し出し、それに呼応した岩は邪神に向かっていく
邪神は手を前にして闇の波動を放つ
石塊達は木っ端微塵となって破裂していく
一方でリュウガとスゥイルを乗せた聖犬は邪神の周りを旋回していた。それぞれ魔力を込めた攻撃を放つ
命中はしていた。しかし、効いている様子はない
すかさず邪神はレーザーを放った
聖犬にかすめ、体勢を崩す
不安定な状況により、リュウガが聖犬の身体から落ちる。なんとか聖犬の足を掴み体勢を整えるが、目の前には攻撃を構える邪神の姿があった
その瞬間、竜輝の叫び声が響き渡る。その声に呼応し、地が揺らぎ始める
巨大な岩の柱が邪神の身体めがけて素早く伸びていく
「我が魔族の力を利用されるとは、情けない奴らだ」
魔力の纏った腕を振り切り、斬撃を放つ
斬撃が柱に直撃し、爆発した
すると、爆煙を突き破り巨大な岩柱が天を突く
ただの柱ではない、枝分かれしながら邪神を囲うように上空へ伸びていく岩柱だ
リュウガとスゥイルは足場として降り立つ。そのまま上に駆けていく
「スゥイル、我に挑むとはアホにも程がある。無駄な復讐に過ぎない」
スゥイルは何も言わずに近づく
邪神の挑発に乗らず、冷静に魔力を纏わせ斬撃を放つ
邪神は腕を前に構える。斬撃ごとスゥイルに向けて振り切る
足場が吹き飛ばされる前にスゥイルは飛び降りた
下の枝分かれした足場に手をかけ、素早く飛び乗る
しかし、邪神の眼はその素早い動きを捉えていた
邪神は闇の光線をスゥイルに放つ
他の足場を飛び乗りながら光線を避ける
「この足場が命綱というわけか」
邪神は再び光線を放つ。しかしその軌道はスゥイルを捉えていない。直前で曲がると地面に着弾した
バゴォォン!!
足場が次々と沈みだしていく。地上で煙を上げながら破壊していく
スゥイルは足場が沈み終わる前に素早く他の足場に飛び移る
聖犬が急降下を始める。河井を救出させるためだ
同族の敵対によって邪神の視線がスゥイルに向かう。
その隙に聖犬が河井を救出させるため急降下を始め、そしてリュウガは死角から斬撃を放つ
斬撃が直撃するも、邪神の身体の傷はすぐに治っていく。それどころか、すぐさま魔弾を生成させ始める
邪神の顔を通り過ぎる影、今度は竜輝の魔剣が火を吹かす
魔力を纏わせ斬撃を放った。邪神は腕を前にして身体を守る
邪神の反撃の一閃
レーザーが竜輝の腕を貫く。凄まじい痛みが身体を走るが魔剣を持つ手は緩まない
「全員で迎え撃つぞ」
3人は魔力を纏わせた武器で斬撃を放つ
「迎え撃つだと…?笑わせる!」
そう言うと放たれたのは闇の波動、斬撃ごと消し去る威力、足場が破壊され崩れ落ちる
まだ止まりはしない、邪神の周りを竜巻が渦巻いた。発生する雷が3人に直撃する
竜巻が起こした自然の雷は竜輝達の動きを硬直させる
声にならない悲鳴をあげながら落下し始める
視界、聴覚が鈍くなる竜巻の中、先に目を開けたのは竜輝だった
荒れ狂う気流に身を投げ出し、落下していくリュウガとスゥイルの手を掴み取る。直後、さらなる雷が彼らを飲み込もうとした瞬間、聖犬が割り込み、その背に3人を乗せ、死地から強引に離脱する
「邪神が新たな進化を見せた。手遅れになる前に倒さなければならない。一旦全員を地上に降ろす」
聖犬は激しい風を切り裂き、竜巻の圏外へと滑り込むように着地した
地面に降り立った三人は、息をしながら自分たちを飲み込んでいた竜巻を仰ぎ見る
聖犬が竜輝に近づいていった
「今の竜輝の魔力、それでしか邪神は倒せないかもしれない」
竜輝は魔剣を静かに持ち上げてじっくりと見つめる
魔物を食らって成長する魔剣、全ての魔力を解き放った時、魔剣は原型を保っていられるのかどうか
それだけが頭をよぎっていた
だが、勝手に魔力が魔剣を纏い始める
魔剣の意思表示を受け取る竜輝
「準備は出来た」
竜輝がそう言った瞬間、竜巻の中から紫色の光が煌めく
「攻撃が来るぞ…!」
その掛け声を聞いて全員は他方に散らばる。すると、彼らがいた場所に闇の光線が着弾した
「竜輝!ならば私に乗って邪神の懐まで潜り込むぞ」
体勢を立て直し、聖犬は大きな翼を広げる
竜輝は迷いなくその背中に乗ると、荒れ狂う竜巻の中へ飛び込んでいった
聖犬は荒風と雷に揺さぶられる。それでもスピードは落とさない
「竜輝…あいつをどうやる」
「あいつの首元を狙う。シールドがなくなった今、近づけば決められる自信がある」
立ち向かう邪神
進化した魔力を輝かせ、光線を全方位に放つ
聖犬は避けながら近づく
それぞれ光線が追尾しだす。同じ軌道に乗った光線同士が爆発、その中でも何撃もの光線が聖犬を追いかける
爆風も加わり、聖犬の平衡感覚が狂い出す
聖犬は五重のシールドを展開して身を守ろうと試みる。しかし、闇の光線が一撃でそれを破壊する
「駄目だ…まだ攻撃が止まらない…」
竜輝は迫る光線を魔剣の腹で受け流すが、その衝撃で吹き飛び聖犬の身体から落ちてしまう
聖犬は手を伸ばす。間一髪で竜輝はその手を固く掴んだ。聖犬の背中に再び乗り込もうとしたその時
生まれた一瞬の隙、聖犬の脚に光線が命中して弾け飛んだ
「聖犬…!」
「大丈夫だ!翼さえ破壊されなければ…脚くらいなんてこと無い…!行くぞ!!」
血を垂らしながらも聖犬は加速する
気付けば邪神の首元に到達
竜輝の一息ついて覚悟を決めた。聖犬の背を蹴って高く跳躍する
「マカルの魔力で増幅されたエゴロトの魔法、お前は自分の生み出した分体に殺されるんだよ!!」
竜輝の気合の入った叫び声が空を響かす
ドンッ!!
全ての魔力を放つ、それは一瞬だった
突き刺した剣の先から、邪神の体内神経に沿って岩が枝分かれしながら伸びていく
内側から打ち破られる身体、吹き出る黒い血
邪神の動きが止まり、竜巻が空に溶けるように消えていった
「ガッ………アァ…」
「やっ…邪神の動きが止まったぞ…!」
聖犬に呼びかけるその竜輝の顔は希望に満ち溢れていた
だが、全ての魔力を放出したことで魔剣が消滅し始める
竜輝は空に突き放されてしまう
パシッ…!
降り立ったのは聖犬の背中
「竜輝が邪神を討ち取った。一旦降ろすぞ」
聖犬はゆっくりと地上に降り立つ
乱れる呼吸を整えながら、竜輝は横に寝かせた
「竜輝自身も魔力を使ったようだな。だがそのおかげで邪神は死んだぞ」
「でも、これも全部マナのおかげです。やっとこれで、俺の復讐が終わる」
だが、そこで河井は言った
「だけど、邪神の身体は宙に浮いたまま、生命活動が続いてなかったらあんな巨体、重力に負けてるはず」
その瞬間だった
邪神の身体がドロドロに溶け始める
自身の身体を犠牲にして神経系の回復を試みる
燃える様に焼け付く身体、関節を動かせば身体に残った岩が肉を突き刺す
自身の重みに耐えきれず浮遊能力がなくなる
溶け始めた身体が地面にぶつかり、粘液を辺りに散らばせる
「魔の再生能力を舐めるな……消し炭にしてやる!!!」
邪神はぎこちない動きで腕を空高く伸ばす
邪神自身も全ての魔力を解き放つつもりだ
「死ねぇぇぁぇ!!」
「俺らが…!!」
リュウガとスゥイルは高く跳び、斬撃を放つ
斬撃は邪神のドロドロな腕をいとも容易く斬り裂いた
「グァァァッ…!!何故我が…こんなのおかしい……こんな小僧如きに!!」
「勝負はあの時点で終わっていた。"無駄な"足掻きだ」
そのスゥイルの言葉に邪神の気が触れる
「黙れ、この世に魔がある限り……必ず私はまた降り立つ…この屈辱……グァァァア!!」
ボロボロになり、そこに邪神としての尊厳は伺えない。枯れるほど発狂し、蒸発するように邪神の身体は消え去っていく
荒廃したこの場所に残ったものは何もない。
ただ、邪神を貫いた巨大な岩だけはその戦場に唯一残り続けていた。
復興が続く中、人々はこれを「英雄の柱」として残し続け、これからの世代に語り継がれることとなる
――2日後
ザッ、ザッ、ザッ…
「ただいま……ごめんなさい」
今は何もない小苗村、竜輝は1人で思い出に浸る
だけど、どうしてもその場にいるのが辛すぎた
思い出せば思い出そうとするほど涙が溢れてくる
「もう俺は泣かないって決めた。でも、ここにいたらなんだか不思議と……」
言葉が喉元で詰まる
小苗村を背に竜輝は歩き出した
その瞬間、竜輝の足元が止まる。少し考え込むと…
「たまには帰ってくるから」
そう呟いて歩き出した
「邪神はまた復活する。それを防ぐために今のうちに残党を倒しにいく。俺の旅は終わらない」
なんとか最後まで書き終えることが出来ました
規模感が大きくなると、表現するのがなかなか難しくなりますが、自分は上手くいく作品になりました
次のタイトルはまだ未定ですが、5月10日月曜日の午後に投稿しますので、そちらもよろしくお願いします
訂正5月11日




