55 逃れられない運命
全て利用されていた。それは竜輝達だけではない
マカルの冷酷な予言物語は結末を迎える
唐突に告げられた事実
竜輝はそれを聞き絶望に陥る。あまりにも奇妙な程の余裕の正体はこれだったのだと
生贄術は単なる報復ではなく、利用されていただけだったのだ
だがこの事実を知っているのは竜輝のみ、止めるには今しかない
瞬時に片足を下げ、体を後ろに向けた。マカルから逃れるためにひたすらに走る
「俺に真実を告げたことを後悔させてやる…!」
マカルは笑った。無駄なことに過ぎないと
「分身達、追え」
冷酷に放たれた魔弾は、凄まじいスピードとともに竜輝の横を並走した
次第にそれはマカルの分身へと姿を変える
「こんな足止め如き…」
瞬時に察知する竜輝、分身の手には禍々しい魔弾が生成されていたのだ
円を描くように回転し、分身の身体を真っ二つに斬った
斬られた分身は爆ぜて二つの魔弾へと分裂したが、もう竜輝にその手は通用しない。複雑な動きで魔弾を避ける
地面に着弾し土煙があがったその一瞬、マカルは竜輝の背後に詰め寄った
「予言は今日始まったものではない」
竜輝を蹴り上げて消えた
しかし、声だけは竜輝の耳に響き渡る
「人間達がロブに向かっていったのは単なる偶然か?いや違う、昨日向かわせたファルとフォル、そいつらを倒した後お前らは私達の存在を世に知らしめるために死体を見せしめにした。そしてその次に国会に乗り込んだ」
「だがそれでよかったんだよ」
「なんの話をしている…」
「あいつらは我らの存在を証明させる"証明役"だった。昨日散らばせたピース一つ一つに合点がいき、嘘だと思われていた事実が今日明らかになる。その時、最上級のヘイトが我々に向けられる。そのヘイトはやがて行動につながり、ロブを倒すために向かっていった」
そう言いながら再び蹴り飛ばして姿を消す。この状況をマカルは楽しんでいる
「ロブが早く死なないように竜輝とリュウガとで勢力を分け、スゥイルに生贄術を行い時間稼ぎをした」
「生贄術を受けたスゥイルは目に入ったものは全て切り刻む暴走状態に入ることは術の性質上知っていた。だから術を行ったタイミングで手下達をロブの方へ集めた。向かってくる人間はその手下達を道中で見つけ、自然とロブに集まってくる」
「あれだけじゃなく俺達はこの日のためにずっと利用されていた…?」
「俺でも倒せないロブを倒した時は感動したね。火炎瓶を使って倒すとは思いもしなかった」
「お前のためにロブを倒したんじゃない…!俺らはみんなを助けるため……」
竜輝達の行ったこと全ては邪神復活のための行動だった。その屈辱さが竜輝を襲う
「言っただろ運命なんだと、もうすでに予言の通り行動してしまったお前は後戻りはできない。聞こえてくるか、生贄に運ばれている人間の声が…!!」
再び姿を現し蹴り込もうとしたその時……
竜輝の力強い手がその脚を掴んだ
地面にマカルの身体を叩きつけて、自身の腕をマカルの首に食い込ませた
「やっぱり、俺を狂わせたお前を…殺す!」
一心不乱に顔面を殴った。殴っていても気は済まない、魔剣を手に取って顔面めがけて振り下ろす
その瞬間、マカルは姿を消した
竜輝の手が止まる。瞬時に持ち方を変えて後ろに振り切る…
ブシャッ…!
魔剣の軌道はマカルの腹部を裂いた
「ぐふっ、くそ…」
「ダメだ構ってる暇はない…俺は先に進まないと…」
竜輝はマカルを置いて先に進む
「この広大な土地に隠された祭壇を、その時が来る前に探し出すのは無理な話だ…!」
すかさず治癒を行いながら追いかける
「お前はロブに引き寄せられた人間を祭壇に連れていくと言っていた。ならばロブと戦っていた方に向かえばいいだけだ」
「いいやお前は間違っている。生贄はその場にいた奴らだけではない"向かう最中だった奴ら"もだ!お前はネットにてどれだけの集団が形成されたと思う?そいつらが全員必ずしもお前の言う方面から来るかな?」
「私達が奪い取った土地は1つだけではない。その無数の集団を保管するためにも各地にあるんだよ。1人では止められない。だから諦めろ!共に邪神様の復活をその目に焼き付けろ!」
マカルの猛攻が続く
放たれる光線が肌をかすり続けながらも、地を踏みしめながら走った
「絶対に今からでも間に合うんだ…!!」
大きな声を上げて自信を振るい上がらせる
しかし気づけば視界に広がっていたのは血で赤く染まった地面だった
………………
走っても走っても無意味に思えてくる。探しながらもマカルの攻撃を避けなければならず、魔力と体力だけが消耗していき、力の差が広まるばかり
みんないなくなった自分が今度は肉体的にも辛い思いをする?第一生贄になるって言ったって、俺の言うことを聞かなかった人達のせいだ
だって、前もそうだった、俺がホワイトウルフと呼ばれていた時も。あの時はマリの存在が俺を踏みとどめた。しかしもう俺に踏みとどめる様な存在はいない……
そうやって正義は淘汰される
運命に抗うことなく、前を進むのを止めた
「グガァァ!!」
怒りで痛む身体を起こした。目を見開き、マカルを鋭く睨みつける
………………
「運命を受け入れる選択、それでこそ我ら"魔物"」
マカルは手を空へ伸ばした。それに連動するように螺旋状に渦巻く鎖が地面から現れる
飲まれることを恐れずに竜輝は走る。足を踏み込み歯を食いしばって魔剣を振り込んだ
ガンッ!!
剣の一撃が鎖の進行を力ずくで止めた
だが、マカルは既にその先を読んでいた
回り込んで近づく彼の足跡から魔力が溢れ出し、無数の闇の光線が全方位から竜輝を狙い撃つ
竜輝は瞬時に魔力を込み岩の斬撃で鎖を斬る。振り切った勢いそのまま、マカルからの攻撃を斬り裂いた
しかし、まだ光線は生成され続けている
「光線に視線を移そうとしているわけか、その手には乗らない」
竜輝は姿勢を低くかがめる
ビュンッ…
竜輝の上を魔力の纏った杖がかすめた。マカルの気配…
後ろに足を突き上げマカルの顔面を蹴り込む
そのまま腕を伸ばして首を掴み、向かってくる光線にその身を放り投げた
「思考が全てこちらに向いているせいで…やはり読まれたか」
マカルは中で杖を向け、光線の軌道を強引に変えた
竜輝は残像を残しながら近づく
「殴らせろ!またあの時の感触を…この拳に味あわせろ!!」
ドドドッ!!
怒りの乗せられたこの拳、凄まじいスピードでマカルは殴られた
しかし、途中で竜輝の腕が固まる
竜輝の顔を覆いかぶすようにマカルの手が伸びる
「この痛み…こんな屈辱は初めてだよ!」
目視できる対象を自由に動かすことが出来る念動力、竜輝の身体が拘束された
「くそ…こいつにはこの能力があるんだった」
竜輝の魔剣を持つ手が自身の首に向かった
危険を察知して魔剣は一人でに抜け出し、マカルへと襲いかかった
「こんだけ近ければ念動力は当てやすい」
向かってくる魔剣をさばきながら、右手の念動力でで竜輝を宙に浮かす
「鬱陶しい、お前は鎖で遊んでおけ」
魔剣が鎖に追われているのを尻目に、左腕に念動力を纏わせる。マカルの視界に映るビル、すかさず念動力を放った
地が唸る程の轟音と共にビルが浮き上がる
マカルは両方の手の平を大きく広げた
口角を吊り上げ、勢いよく合わせた
パァンッ!!
バゴォン!!
念動力で動かされたビルが、竜輝を飲み込みながら粉砕する
拘束の解けた竜輝の身体は、瓦礫と共に地上へと叩きつけられていく……




