54 思惑
一瞬の制御不能が起こした爆発が、幸いにも竜輝を生かした。生贄術生還した竜輝だが心に開いた穴は塞がらない
真泉へと向かっていく聖獣達を見届けるしかないのか…
倒れ込む竜輝、空に向けて震える腕を伸ばした。何か
掴もうとするも、掴めるのは冷たい空気だけ、虚無感からゆっくりと腕を下ろした
首だけを振って辺りを確認する。その目に映る荒廃したビル群を見て絶望した
「なんだこの状況……いったい何が起こった…」
竜輝は急いで立ち上がった
強制的な生贄術、そして、その間の記憶がないこと、この破壊は自分が引き起こしたのだと悟る
息遣いが荒くなり、うずくまって地面を叩き始める
「なんで俺がこんな目に…!!みんなどこに行ったんだよ……まさか……みんなまで…?」
すると、突如として闇の渦が現れた
竜輝の目線の先にはマカルの姿があった
「これはお前が引き起こした破壊。覚えてるはずないだろうが…」
竜輝は魔物態へ変貌する。殺意のままに足が動いた
ビュンッ…!
素早い一閃がマカルを捉える
「(生贄術で受けた姿は聖獣によって撃ち破られた。だが後遺によってわずかにその魔力が身体に残っている…)面白い戦いになりそうだ」
バシィィン!!
マカルはその攻撃を杖で受け止めた
「ずっと付き纏いやがって…!次こそはマカル、お前を殺す!絶対に殺す!」
「お前をずっと付き纏っているのはお前が邪神様復活の鍵だからだ。お前は人間じゃない、我等と同じ種族。邪神様復活に協力することになる運命だ」
「そんな運命、俺が破壊してやる!!」
竜輝の拳がマカルの身体に命中する
もう一撃を食らわそうとするがマカルは杖で受け止めた
「これは効いた。だがこれで狼狽える程ではない」
マカルは回転しながら飛び、その勢いのまま回し蹴りを食らわせる
後退る竜輝に向けて魔術を放つ。地上から伸びる鎖が竜輝の両腕を捕らえた
「ぐっ…お前らの思惑通りにはさせない…!」
魔剣がひとりでにマカルに向かっていった
迫りくる鎖を斬り刻みながら素早い剣技を舞う
マカルは後ろに下がりながら軽くかわした。杖を振り回して牽制する
「あのときと同じ、その手段はもう知っている」
笑いながら杖をかざすと、マカルの背後から闇の光線が放たれた
それは竜輝に向かっていく。おもわず魔剣の動きが止まった
だが、その隙を突かれ魔剣は鎖に繋がれて地上に拘束されてしまう
バァァァン!!
竜輝に命中した光線が爆破した
「くっくっ…術を受けてもなおこの程度。拳以外の攻撃がない分、魔術の多い私の方が当然上か」
倒れている竜輝の目に、空に漂う2本の光が見えた。それは真泉へと向かっていく
「俺に構っている暇はないように思えるが、マカル」
「まだ焦るときではない。私はお前の大切な物が無くなっていく様を見届けるまでだ!」
竜輝は立ち上がる。挑発には乗らない。マカルの方が圧倒的に不利な状況だからだ
しかし、マカルの表情からは奇妙なくらいの余裕がうかがえる
「(あんなに崇拝している邪神の復活が阻止されようとしているんだぞ…)気でも狂ったか…?」
「ふっ…ふっふっ…ふっはっはっ!!」
「何がおかしい…」
「本当に面白くてしょうがなくて、お前らは本当に我らの手の上で転がされているようだな。もう少しその無様な姿を見ているとしよう」
「大丈夫だ。そんな虚言に付き合ってる暇はない。そのまま強がって死ね…」
キィンッ…!!
魔剣が鎖を斬った。その勢いのまま再びマカルに襲いかかる
「ほぉ…今度は破壊してやる」
魔剣に向かって放たれる鎖
鎖同士が束になり、斬ろうにも微動だにしない
その時竜輝は叫んだ
「戻って来い魔剣…!」
魔剣は吸い付くように竜輝のもとに戻っていく
魔剣を力強く振り下ろして、地面を振動させた
ゴゴゴ…!!
地面から岩が連なって隆起する
バッ…!
マカルは高く跳んで攻撃を避けると、飛び出た岩の上に瞬間移動し、上空から竜輝を見下ろした
杖を高く掲げ、追尾する魔弾を放った
竜輝は連なる岩を上手く利用し、マカルに近付く。魔剣に魔力を溜め、斬撃を放った
マカルはシールドを張って斬撃から身を守った。しかし、崩れる足場で岩から飛び降りる。マカルは隙を見せずその間も光線を放ち続けた
竜輝は再び魔剣を振り下ろす。今度は目の前に巨大な岩壁を召喚させ、光線から身を守った
一呼吸置いて休憩する暇もない。再び向かっていった
一瞬でマカルの背後に立つ
察知してマカルは杖を背後に振り回した
しかし、竜輝は姿勢を屈めて魔剣を持つ腕を伸ばす
ブサッ!!
魔剣がマカルの腹部を貫いた。しかし、その感触はあまりにも軽すぎた
マカルの笑い声と共に、その身体は分裂する。闇の弾に変わると、竜輝の至近距離で破裂する
バァァァン!!
吹き飛ばされる竜輝
本当のマカルは岩壁のてっぺんに佇んでいた
しかし次の瞬間…
ドガァァン!!
真泉にて巨大な爆発が起こった
マカルはゆっくりとその方向を見る。しかしその表情に焦る様子は1つもない
竜輝は魔剣を立てて身体を起こした。竜輝は呼吸を整えて言う
「お前の負けだ…」
「復活の予言を受けた私が何故この状況になっても抗わないのか……そもそも予言など無いのか?それとも、聖獣に負けるのが怖いのか?いいや違う」
マカルは岩壁から身を投げて地面に着地する
勝ちを確信していたのは竜輝ではなくマカルの方だった
「私達は本来ロブを生み出す為の研究施設を作るために付近の土地を買い占め、奪い取った。だが研究が終わればその土地の利用価値はなくなる。そこで予言は言った。"余った土地に邪神様の祭壇を移すよう"分かるか、今あそこに祭壇は存在しない」
マカルは続けて言った
「余った土地はどれだけあると思う?今から探し出して間に合うと思うか…?」
「だけど、生贄が集まらなければただの時間稼ぎにすぎない…」
「君のおかげで目標人数は達成されましたよ」
「どういう…ことだ…」
「お前が生贄術を受けた姿に人間達はパニックに陥る。ロブを倒すために集まった人間、向かう最中だった人間、そいつらを"避難"という口実で祭壇まで誘導。お前が聖獣に瞬殺されることは分かりきっていた。だからその間に市内、市外に避難勧告を要請させ、避難することを煽った」
「だから俺が…鍵?」
「予言の通りにしても、予言から外れたことをしても、今日聖獣が降臨するという運命は変わらなかった。その中で邪神様の復活をするには聖獣の標的を我々に向けさせない事、お前は利用されていたんだよ」
マカルは腕を広げて高らかに言う
「ここからが本当の戦いだ。さぁ来い竜輝!」




