40 脱出迷宮
無限に生き続ける異形は何故ィザァンプの世界に囚われているのか、河井はこの戦いに勝つことが出来るのか
変わりない異形のビームの威力、異形との攻防戦は長期に及んだ
だが、竜輝達の度重なる攻撃を食らったことで異形の身体は崩れつつあった
「以前よりもあいつの身体は小さくなってはいるけど、依然として攻撃は放ってくる。こいつの能力が不死身とかだったらこの時間はだいぶ無駄になる。河井を探しに他の方に行ったほうがいいかもしれない」
マナはそう推測する
「じゃあこの一撃で沈まないようなら諦めるしかないかもな。いくぞ」
リュウガが走り出し、それにマナが続いた
止まらない斬撃が異形を襲う
異形はだんだんと弱まっていき、次第に動きが止まっていく
「動きが、止まった?」
彼らは怪しみながらも後ろを向いてさっき歩いていた道に引き返そうとする
だがその時、異形の方から声が響く
「ィザァンプ……!」
ただ、異形は急に後ろの壁に突進しだす
ボガンッ!!
竜輝はその音に驚き振り返る
「また息吹き返したのか…でも何か様子が違う」
突進したところには穴が開き、穴の先は奥へ進めるようになっていた…
異形は気が変わったかの様にその道を歩み始める
「ィザァンプ…!ィザァンプ…!」
………………
「風と散れ」
ィザァンプの放つ風の斬撃が河井を襲う
「無理だってば…!」
河井は魔剣を前に構えてその攻撃を防ぐ
「無理じゃない、かわしきれなかったら死ぬぞ」
とは言ったものの、魔剣もこの状況はまずいと踏んでいた
「常人がこんな奴相手にすること自体おかしいんだ。そうだ魔剣さん、剣になれたってことは鎧とかにもなれるってことでしょ」
「剣を維持して防具になるとしたら兜が限界だ」
「鎧は無理か…じゃあそれでお願い」
「分かった」
魔剣の体積が縮まると、そのぶんが兜へと変形する
河井はすぐさまその兜を被った
「お前を殺し次第、わしは竜輝達をここに置いて消える。この迷宮を彷徨うがいい!!くらえ!!」
地鳴りのような振動が起き、河井に向かって地面から岩が順々に連なって飛び出す
河井は剣を構えて防ごうとするが、衝撃に耐えきれず吹き飛ばされる。
縦幅五メートルほどしかない狭い洞窟の通路。河井は天井に頭を打ち、そのまま地面へと落ちていく
「大丈夫か河井!」
魔剣の返答に河井は軽い返事しか出来なかった。
「まずいぞこれ…!」
「お前らがいなくなって無事明日を迎えることができれば、スゥイルの子は守られる。必ずここで役を果たす」
有効な技と知り、再びィザァンプは岩の技を放った
突き出てくる岩が河井に向かっていく
「避け…ないと…」
走って攻撃を避ける河井
「頭隠して尻隠さずとはまさにこのことだな。この攻撃は避けられるまい。くらえ!!」
ィザァンプの魔力が暴走する
風魔法による斬撃が河井の身体を斬りつける
「うっ、痛い痛いよ」
「正気を保て!」
魔剣の叫びも虚しく、風が止んだとき河井は地面に倒れ伏していた
「竜輝達に感化されて自分も特別な存在だと勘違いしてしまったようだな。角は生えていなければ肌の質感も違う、お前はただの人間なんだよ」
「うっ、くっ…」
それでも河井は立ち上がりスナイパーライフルを構える
「威勢がいい小僧じゃのう!!やれるものならやってみぃ!」
バンッ!!
放たれた銃弾はィザァンプの胸元を狙う
「最初と同じ事をするだけじゃ時間稼ぎにしかならん」
しかしィザァンプは自身の前に風を発生させ、銃弾の威力をなくした
バッ!
傷だらけの身体で河井は立ち上がった
「行くぞ魔剣!!」
河井の叫びと共に魔剣が放たれた
魔剣は魔力を消費して独自行動へと移る
「一か八かといったところか。だが甘い!」
ィザァンプは自身の前に岩の壁を現す
「今のうちに滅却の炎を…」
だが魔剣は軌道修正してィザァンプの背後を取る
それを察知した瞬間、ィザァンプは姿を消してしまった…
次に現れたのは河井の背後
「いや危ない、あのままでは貫かれていたから一旦ここの世界から抜けさせてもらったわい」
ガシッ!
疲労困憊の河井を掴み上げ、容赦なく蹴りつける
「魔法では味わえないものだね」
河井が人質になっている手前、魔剣は下手に行動することができない
だが兜は再び剣の形へと変形し、ィザァンプの顔面へ向かって飛翔した
避けきれずに右目を貫かれたィザァンプはそのまま剣を通過する
河井は拘束が解けた瞬間、走って距離を取った
「小賢しい!!滅却の炎!!」
ィザァンプは貫かれた魔剣を燃やし尽くし、次の標的を河井へと定めた
足元を揺らがせ、岩でできた手が地面から現れる。そして河井の身体を強く掴み上げた
「これでお前は終わりだ…終わりだ!!」
その時だった
「お前の仕業だな」
ィザァンプの背後から聞こえてくる低い声…
ィザァンプが声のする方を向くと、そこには魔物の姿となった竜輝が拳を構えて立っていた
「何故お前がこ…」
ブゥオンッ!!
次の瞬間、竜輝の一撃がィザァンプの顔面を粉砕させる
ブチャァッ!!
頭部が変形したまま吹き飛び、首から上を失った身体はゆっくりと地面へ倒れ込んだ
ィザァンプの死と同時に、河井を拘束していた岩は崩れ落ちていく
さらに、空間に亀裂が発生し始める
魔剣は急いでィザァンプの魔力を喰らい尽くす
まばゆい閃光が竜輝達の視線を覆うと、気付けばそこは国会の内部だった
「竜輝さん…どうしてあそこが分かったんですか」
疲れ切った河井が竜輝に聞いた
「異形…いや、あの人がここを教えてくれたんだ」
「異形?人?」
「あの人はロブを生み出す研究材料の1人らしくて……失敗したことによって異形になってしまったそうだ。異形故にィザァンプの能力であそこに幽閉されていたらしい」
「じゃあその人はどこに行っちゃったの?」
「その人は俺らとの戦いによって死んでしまった…でも最後の力を振り絞って居場所を教えてくれたのだろうな」
タッタッタッ…!!
すると奥から誰かの走る音が聞こえてくる
近づくにつれ、それが総理大臣であることが判明する
「助けてくれ!マカルが俺のことを殺しに来るんだ!」
一方その頃――魔物のアジトでは異様な事態が起きていた
無数のゆりかごと赤子が突如として出現していたのだ
アジト内を歩いていた下級魔物達はそれを見て不思議がる
「おいなんだよこれは…!」
アジト内が混乱に陥る中…
装甲の擦れる音と共に大きな足音が聞こえる。その音が聞こえると部下達は恐縮しだした
「スゥイルの子供がこの中にあるらしいんだけどさ、手伝ってくれない?」
その声の主はロブだった




