37 証明役
国会へ総理に会いに行く竜輝の前に立ちはだかる。双子の魔物、鱗粉を使ったトリッキーな技に竜輝達は翻弄される
――次の日
竜輝達は用意を終わらせすぐに百田へ向かった
百田は真泉の西方面、立之宮を抜けた先にある
「本当に正面突破するのか?」
神妙な面持ちでリュウガは問いかける
竜輝は静かに頷いた
「派手にやることで、今度こそ魔物の存在が世に知れ渡る」
「この先の神社を抜ければもう到着だよ」
マナは竜輝の後ろを進んでいたが、前足に光が走った瞬間、ふいに歩みを止めた。
これは聖獣に近づくことを示す。だんだんと増えていく魔力は今のマナの身体から溢れる程のもの
ザワザワ…ザワ…
神社の草木が怪しく揺れ出す
空を飛んで現れる二人の影
「ホワイトウルフさ〜ん?あなたの名前を借りて暴れさせてもらってます。これ以上は進ませないですよ」
一体の魔物が甲高い声で笑う
蝶の羽を震わせて飛行する人型の魔物、その隣に全く同じ風貌の魔物。双子だ
「マカルの命令で来やがったか、パパっと殺して先に進ませてもらう」
リュウガは刀を抜く
「私はフォル!空を舞う私達にあんたらの攻撃は届かないよ!」
「私はファル、かかってきな」
「攻撃が届かないと思って安心してるかもしれないけどなぁ、舐めんなよ!!」
竜輝とリュウガはそれぞれ武器を構える
腕をしならせ魔剣、そして刀を敵に向けて投げた
ファル達は驚きながらも華麗に避ける
武器がUターンして追尾を行う
「ファル、いくよ」
2人は風弾を生成して、真正面から来る武器を吹き飛ばす
「くそ、切り落とせなかったか。戻れ魔剣!」
「羽さえ切り落とせれば後は楽なんだけどな…」
独自行動を行う武器は2人の手元に戻っていく
「中級の位置に立つ私達がそんなもので殺されるとでも?"サソリ"に始まり、お前は何体中級を狩ってきたか知らないけど私達はそうはいかない」
「くらいなさい!催眠鱗粉!!」
ファルは光り輝く鱗粉を振りまく。そしてそれを羽で仰いで竜輝に送った
耳鳴りと目まいがした後、急激な眠気が竜輝を襲う
「くっ…吸い込んでしまった… 全員がこれを吸ったら俺らは終わる。みんな散らばれ!」
竜輝の身体をよろけながら叫ぶ。しっかりと剣を握って耐える
フォルの方は毒の鱗粉を広範囲に撒き散らしだす
魔剣を振って毒をかわす竜輝、しかし眠気の方が襲う
膝をついて一点を見つめ出す
「くらえ!!」
フォルは空を急降下し、その勢いで竜輝に突進する。
吹き飛んでいく竜輝を再び追って突進を仕掛ける。
攻撃を食らい続ける竜輝、立ち上がって気合のままに剣を振り下ろす。
フォルは避けて再び宙を舞った
「そんなよろけた攻撃で私を倒せるわけがあるか!」
「ゲホッ…ゲホッ…」
河井とリュウガの咳が聞こえる。既に毒が回り始めていた
竜輝の持つ魔剣が低く囁く
「我に秘められた技を駆使するんだ」
「技って一体…?」
「あの時喰らったエゴロトの魔力――ロックブラストだ。この技でどちらかの羽に穴を開けろ」
「わかった」
竜輝は剣を構え直し、天高く掲げた
「くらえ、ロックブラスト!!」
剣の周りを舞う岩がフォルに向かっていく
「ロックブラスト…?その技は確かエゴロト…」
ブシ、ブシッ!!
岩がフォルの身体を貫き、羽をも貫く
「ぐはぁっ!!」
フォルは血を噴き出しながら墜落する
後を追う竜輝だったがめまいのせいで姿勢を崩してしまう
「墜落したはいいけど…まだ身体に催眠がまわって走れそうにない。魔剣を投げればもしかして…いやでも」
「フォル!待っていろ、今行くからな!」
ファルは手を伸ばし急降下する
竜輝が魔剣を投げたところでファルのスピードには勝てない
だがファルの背後にリュウガの影…
顔面を掴み首元に刀を置いた
「それ以上動いたらフォルの首を切る。フォルだったか?俺と河井の解毒を行え」
ファルは動きを止めて心配そうに立ち尽くす
「分かっ…た……大丈夫だからファルは手を出さないで」
フォルは金色に光る解毒の鱗粉を放った
リュウガは、毒の触れた傷口にその鱗粉をつけてみる。すると瞬く間に浄化していく
「本物だな、よし河井は逃げてろ」
そして――
ズザァッ!!
リュウガはためらいもなく刀でフォルの首を切り裂いた
「約束が違うだろ!!」
「もう俺に良心は残っちゃいない。マカルの手先ならば全員殺す!!」
「ぐがあぁぁぁ!!」
怒り狂ったファルは周りに風を引き起こした。それに催眠鱗粉をのせて広範囲に撒き散らす
「まずはお前!!!」
ファルは物凄い勢いでリュウガに突進する
リュウガは刀を前にして攻撃を受け流すも、次から次へと来る突進に姿勢を崩してしまう
風を味方につけるファル、その速度は上昇していく
「フォルの復讐をここで果たす!」
「前から来る…(後数回で刀は折れるかもしれない。正面から来るのはチャンス!ここを逃せばもうないかもしれない…)」
リュウガは刀を構え、勢い良く投げる
「ゆっとくけどな、こっちだって復讐なんだよ!」
「守りを捨ててそうくるか…!」
しかしファルは周りに風を生成させ、刀の速度を弱める。刀を投げ捨ててそのまま突進を続ける
「くそ…駄目か…!」
迫る死
バゴォン!!
そのとき竜輝が岩壁を生み出し、間一髪リュウガを守った。
竜輝はリュウガを抱えて場を移動する
「後少しだったのに…くそくそくそ!!こうなったら、もう一人の方に目標を変える」
ファルの周りを舞う風はより強みを増す
みんなは木陰で身を潜めた
「………どうするいける?竜輝?」
「もちろん、マナはここでリュウガを見ていてくれ」
魔剣を構えて走った
正面突破を試みて剣を振り上げる
「催眠もまだ回っているというのに、タフな男だな!」
ファルは攻撃を軽く避け、空高く飛ぶ
「標的が自ら来るとは、お前には地獄を見せてやる」
すると、竜輝の周りの大気が狂い出す。
気づいた時には遅かった。竜輝の周りは鋭い風で包まれていた
ズザザザ!!
竜輝の装甲を切り裂き、竜輝の肌を切りつける
「くっ…だがこのレベルの風が舞ったところで、地獄と言うにはもったいない……本当の地獄とはこういうことだ!」
竜輝は魔剣を振り回し風を切り裂いた
そうして魔剣をゆっくりと振り上げる…
狙いを定めて振り下げ、斬撃を放つ
はずだった…
竜輝の姿勢が崩れ落ちる
「なんだ…この急激な眠気…は」
「バカめ、あの鋭い風に催眠鱗粉を乗せておいたのさ!!」
「竜輝!!」
走って寄ってくるマナ
「マ…ァ…」
虚ろに瞳が落ちていく
ファルは勢い良く急降下する
「お前の負けだよ、失せろクソが!」
カッ…!
すると竜輝の目が開く。剣を構えて一撃を放つ
「待て…止まらな…!」
ズバァッ!!
ファルの腹部が斬り裂かれる
ドサッ、ドサッ…
体を地面に受け付けて倒れる
「グハァッ!!何故だ…何故仕掛ける前に…!」
「マナのホーリーキュアのおかけだ」
「それは…自分自身にしかかけられない技のはずだと聞いた…」
「マナは聖獣に近づくにつれて他者にもかけられるようになったんだ。このために催眠を誘発させたってわけ、じゃなきゃ正面から行かないわ」
竜輝は両手で剣を持ちゆっくりと近づく、強く叫びながら剣を振り下ろす
スパンッ!!
その勢いでファルの左翼は切り落ちた
「これでお前は飛べない」
「何…する…つもり」
竜輝はファルの足を斬り落とした
落ちた翼から出る鱗粉をこそぎ集め、ファルの口へと詰め込む
「あがっ…!やめ…ろ…何をする ぐぶぉっ!」
「吐くな!飲み込みやがれ!」
「あぁ…自分の技で自分が……」
次第にファルは眠りに落ちていく
リュウガと河井が戻って来る
「ちょうどいいところに魔物が来てくれたんだ。少し寄り道していこう」
竜輝の声は冷たい
ファルを引きずりながら北の方を練り歩き始める。歩いたところにはファルの血がベッタリとついている
「河井は遠くで見ておいたほうがいい。俺らの仲間だと顔が知られれば困るだろ。マナ、ついていてくれ」
「なるほどね、竜輝のしたいことが何となく分かった。それじゃあ影で見てるよ」
河井とマナが離れ、竜輝とリュウガは交差点に出ていくと、人々の悲鳴が上がった
「前にチャンネルを開設したホワイトウルフだ。今から魔物がいることを証明、そしてその魔物をここで殺す」
「今日中に闇を暴く動画生配信するつもりだから、お前ら絶対に見ろ」
――あの羽が生えてるのが魔物?
――いや人間じゃないあれ?もうすでにボロボロだよ…なんて残酷
「残酷に見えるか?だがな、アイツラはもっと残酷だ。止められるのは今のうちなんだよ!」
竜輝は魔剣でファルの心臓を貫いた
ファルの死体をそこに捨て、竜輝達はその場から離れていった
「これからが本番だ。しかし中級相手にこんな手こずっているようじゃダメだ。もっと強くならなければ…」




