36 暴く闇
ロブの脅威、マカルの脅威、そしてこれから生まれるかもしれない脅威を前に、竜輝は真里のことを切り替えて前に進まなければならない。
前に進む用意をしろ
真里が目を覚ますと、そこは高貴な装飾で整えられた部屋だった。
真っ白でふかふかなベッドの上に、彼女は一人で横たわっていた。
静まり返った部屋の外から足音が近づいてくる。
部屋の扉が開くとそこからマカルが姿を現した。
「んぅ…マカルさんすいません…こんな場所まで用意してもらって」
「それは構わない。ただ…大変申し上げにくいことに、あなたの両親はあの化け物によって殺されてしまったようだ」
真里は唖然として固まる
「昨日の夜調査によって分かった。村の人全員も、奇跡なのか…君だけが生き残ったみたいだよ」
「嘘だ…なんで…」
「そうだ、竜輝に連絡してたはず…(あれ、スマホがない。もしかして落とした…?)あの…竜輝という男の人に会ったりしましたか…?」
「そんな人は知らないな。まぁ外は危険だから、ここでじっとしておいたほうが身のためだ」
去ろうとするマカルを真里は呼び止める
「待って!みんな死んだのに、私だけじっとするなんてできない」
「あの化け物を見てまだそんな事を言うか。あの時君は何かできたか?」
「出来なかったからこそ力が欲しいんです。私だけ生き残ったこの奇跡を信じたいです。超能力は私にも使うことは出来ますか?」
「君は奇跡を信じるんだな……だが、ただの人間が超能力を身につけることは非常に困難だ。身につけたいのであればまず必要なことは信じることだ」
「疑わず、私の仮面の奥の目をじっと見続けるんだ」
小苗村を出た竜輝とマナ、草木の茂った山をゆっくりと下っている
「竜輝、これからどうする…?」
竜輝の目から光は消えていた
ただ旅路をゆっくりと歩き続けている
「真里は一体どこに行ったんだ…この先俺はどうすればいい」
「多分アジトに連れ去られたと思うけど、今の状態じゃただ返り討ちにあうだけ…」
「なら真里が生きていることを願いながらこれから生きていかないといけないのかよ…!くそ」
「それはそうだけど…」
「(無理だ…弱気になってはいけないのはわかってるのに、どうすればあの化け物達を…!)」
竜輝の視点は定まらぬまま歩みを進めていた
どれだけ歩いただろうか、竜輝達は真泉の集落へ辿り着けた。だが安心したのも束の間、家の目の前に"マカル"が立っていた
竜輝の目が開く
「マカル…!!」
竜輝は剣を振り上げ無我夢中に走った
不敵な笑みと共にマカルの姿が霧のように消える。一瞬にして竜輝の背後に現れる
「安心したまえ、真里はまだ死んでいない」
振り返って剣を振り回す
「オラァァ!!」
「分身相手に気が狂ってどうした。ふはは」
分身は霧になって後ろに下がる
「マカル!これ以上竜輝の目の前に現れるな」
マナが牙を煌めかせ襲う
だが分身は何事もないかのように避ける
竜輝は叫びながら剣を振る
「村も、この集落のことも、何故分かったんだ…!!」
竜輝の攻撃を避けながら喋る
「邪神様復活の予言、その通りに動いているだけだ。その過程であの女の居場所もお前らの居場所も分かった。それだけ」
「なんだと…!」
「我は愛を奪いそれを捧げ禁術を行った。お前らの未来はお前らが思う以上に暗い」
「デタラメを…俺の未来が暗いなんて…真里をどこへやった!!」
「女神があんなにも容易く破壊された理由が分かるか?それは使い古した女神を新たに切り替えるためだ」
「そんな…こと、させてたまるかよ…!!」
「どれだけ足掻こうとなるんだよ。あの女は殺さない、それだけは言っておこう……」
シュッ…
マカルの背後から風を切る刀の音が響いた。分身の首が斬り裂かれる
崩れ去るマカルの先に見えたのはリュウガだった
「分身を斬ったのは久しぶりだ。だがこいつがいるということは、バレたか」
竜輝の顔はより一層険しくなっていた
「マカルの能力によって何もかも明らかにされている。そのせいで真里は連れ去られた」
「真里は…大丈夫なのか?」
「あいつは、真里を女神にさせるために死なせないと言っていた。ただあいつらの言葉がどれだけ本当かは分からない」
「女神……ダメだそれだけは、お前は俺の子だ、だからといってここまで同じ道のりを歩ませてはならない」
「マカル、ロブ、そしていずれはスゥイルまでも禁術に手を出すだろう。直接真里を助け出すよりも、他に何か方法があるはずだ…」
すると竜輝の口が開く
「その選択肢を増やすために俺はSNSを始めた。あの時の写真、マカルと握手を交わしていた総理に全てを聞き出す。真実が何であれ誰が言うかが全てだ、国会答弁中に乗り込んで全ての闇を吐かせてやる」
「河井に言っておいてくれ、この集落を出るからついてくるなら準備をしておけって」
深夜2時半――
ネットニュース会社〈安西〉編集者の安西
望月から貰った魔物についての資料を一枚一枚確認している
「魔物についての記事を書こうとする編集長なんて……頭のネジが三本は取れてるんだろうね」
資料を1枚めくって確信する
「これは斎藤が隠し撮りした魔物の写真。そして数年前未確認生物特集として記事を書いた時の幸運をもたらす双子妖精……似ている」
「そういえばあの後、未確認生物は人工的に作られたものでした。みたいなブームで未確認生物はメディアでは見なくなったけど、隠すためだったかもね〜」
安西は久し振りにハラハラする計画を立てていた。失ってしまったジャーナリズム精神が安西の血を騒がしていく
安西は安西なりの闇を暴く計画を立てていた。絶対に部下には口に出さない、命の危険は自分だけでいい




