34 拐
何も知らない国民達に真実を伝えるために着々と準備を始めていた矢先、竜輝にとって最大の壁が立ちはだかる
朝の静けさが破られる
大学の支度をしていた真里は、朝食を済ませ、上着に袖を通そうとしていた。
そのとき――外から、地面を割るような轟音が響いた。
「な、何……?地震?」
胸の奥がざわつき、真里は玄関を飛び出した。
家から出るとその光景に目を丸くする。遠くの通りで、黒い塊のような巨体が暴れていたのだ。
2メートルをゆうに超える影――そう、ロブだ。
あまりの光景に真里の足は地面に縫い付けられたように動かない。
だが、ロブがゆっくりとこちらへ顔を向ける。その目が真里をとらえた瞬間、全身が凍りついた。
「や、いや……!」
停めてあったバイクに視線を向け、走り出そうとする
だが次の瞬間――ロブが目の前に現れた。
バキバキ……!
巨大な手でバイクを握りつぶす音が響く
「本当にこの村にいたとはな。予言通りだ」
ロブの低い声が地を這うように響く
「可哀想なものだ。(竜輝が俺たちに反発するせいで、こいつの命まで危険に晒されるのだからな)」
一方その頃――
「どうだった、竜輝?」
帰ってきた竜輝にマナは話しかける
「目的の情報は特に得ることはできなかった。でも、ロブが禁術というものを使ったらしい」
「禁術、なんだそれ?聞くだけで危なそうだと分かるけど」
「力のためにアグルクが自分の身をロブに捧げたらしい。聞いただけで絶望するような話だよ。……でも、俺は俺でやれることをやるさ」
竜輝は机にノートパソコンを置き、佐武の例のUSBを差し込む。
映し出された映像には、潜入した時の魔物のアジト内部――倉庫の一室が映っていた。
カメラは机の上の散らばった資料達を映し出す
「この散らばった資料、何か手がかりになるかも……」
映像の隅を凝視していた竜輝はある一点で手を止める
「これは……総理と握手している写真?“何かに合意”と書かれてるが、肝心な部分が紙で隠れてるな……でもこういうやつだよ。そうそう」
そのとき――
ピコン
竜輝のスマホの通知音が響く。画面を見ると、真里からのメッセージだった。
> 『化け物が村に現れた早く来て』
「…………?!マナ、真里が危ない!」
「え?」
「化け物に襲われてるって連絡が…!俺、行ってくる!」
「それなら私も行く。目的地は小苗村だよね…!」
「うん!」
竜輝は剣を持って駆け出した。
リュウガが呼び止める
「竜輝!……行っちゃったか。ならマナ、これを持って行け」
彼は自作の鞘を手渡した。
「幸運を祈る」
マナは鞘を噛んで、竜輝の背に飛び乗る。
竜輝は魔物の姿へと変わり呟いた。
「動力変換」
足元から爆炎が噴き上がり、その勢いで空を裂くように飛翔した。
小苗村の惨状――
しかし、到着したときにはすでに遅かった。
村は焼け野原と化し、真里の家も、竜輝がかつて暮らした家も、瓦礫の山に変わっていた
「こんなことになるまで破壊したのは誰だ……!」
竜輝の胸の中に怒りが沸き上がる。
一方でマナは辺りに漂う不穏な気配を感じ取り、眉をひそめた。
「竜輝……何か来る」
空気が重くなる。まるで全身を握り潰されるような圧迫感。
そして低い声が響いた。
「この姿会うのは初めてかな?ようやく会えたよ」
「な……お前、どうしてここに……!」
現れたのは、以前よりも巨大化し、禍々しい装甲を纏うロブだった
禁術によって膨れ上がった闇はここらの空気を制圧させている
「マカルの予言は正しかった。この村に“真里”という女がいると聞いて来たが、本当にいたよ」
「真里をどうした!どこにやった!!」
「そんな怖い顔してどうした?あーあ、真里と一緒に細々とここで過ごしていたらこんなことになっていなかったのに、第一お前は何も知らず人間として過ごせていたら、その隣にいる"犬"に出会わなければ良かったのにな!ハッハッハッ!」
「ふざけるな…!!真里をどこにやったか聞いてるんだよ!」
竜輝は背中に背負った鞘から剣を抜いた
キィン…!
怒りに任せて斬りかかるが、ロブの装甲に弾かれてしまう
「度胸だけは認めてやろう。ちなみに、あの女は死んではいないぞ」
するとロブは背後を向き、呼びかける。
「――マカル様!」
ロブの背後、空の高みに黒い影が現れる。長いマントが風に揺れ、マカルが姿を見せた。
その手には気絶した真里の姿があった
「おい、真里……!やめろ!行かせるな!!」
竜輝が走り出すが、ロブが前に立ちはだかる。
巨大な拳が唸りを上げて振り下ろされた
バゴンッ!!
「ぐはぁっ!!」
感じたことの無い凄まじい衝撃に、竜輝は地面を転がった。
「竜輝!竜輝――!」
マナの声が遠のいていく。
「お前の未来はリュウガと同じだ。ここでその女を殺してもよかったが……それでは予言に反するものでね…。ではまた会おう、竜輝」
マカルの笑い声が空に響き、闇へと消えた。
竜輝は地に伏せたまま拳を震わせる。
「マカル……お前……! うぅっ…!!」
マカルの笑い声が脳裏にこびりつく。竜輝は頭を抱えて悶絶する
「こんなのどうすればいいんだ…」
マナは流石の脅威に後退りしだす
だがロブが前に出て吠える
「今度こそ戦いの続きだ。二人まとめてかかってこい!」




