タイトル未定2025/10/26 20:29
邪神復活までの予言は着々と進んでいる。その非道なやり方は竜輝達の精神をすり減らしていくことだろう
窓から差す光で目が覚めた河井、目をこすらせながら辺りを見回す
ぐっすりと寝ているマナ、刀を整えているリュウガ
しかし竜輝の姿は無かった
「あれ、竜輝さんがいない。竜輝さんが消えた」
「竜輝ならこの近くの市民ホールってとこに行ったぞ」
「え?なんでまたあそこに行くの」
「さぁな、聖犬に会いに行くとか言ってたからな。まぁあの時助けてくれたし、御礼でも言いに行くんじゃないのか」
「でも聖犬は俺らを襲ったことのある奴なのに…、なのになんで竜輝さんはわざわざそいつらのアジトに…」
「不思議だが、助けてくれたのも事実。聖犬とやらの間で何か心変わりし始めてるのかもしれない」
真泉市民ホールへ再び足を運ぶ竜輝
魔物の闇を世に知らしめるため――
そして、魔物について最も詳しい存在である“聖犬”から話を聞くために
だが彼らは過去に戦ったことがある。竜輝の目は真剣なまなざしをしていた
「聖犬に会いたい」
入口にいる見張りにそう言うと、男は警戒をあらわにする
「何しに来た。聖犬様からホワイトウルフの存在は知らされている!人間の姿で来ようとも騙されるわけにはいかないぞ」
「あの時聖犬は俺を守ってくれた。俺は魔物についてもっと知りたいだけなんだ。魔物とズブズブな関係の人間らを教えてくれ」
「そんな事を知ってどうしたい!お前があの悪しき魔物ということに変わりはないんだぞ」
すると聖犬の声が辺りに響いた
「その男を通せ!お前には教えておかなければならないことがある」
見張りは驚いて振り返る
「ですが…!こいつは魔物のはず」
「いいから通せと言っている」
「は、はい…!お前、ついてこい」
見張りに連れられ、竜輝は聖犬のいる部屋の前まで連れられる
「よし、入れ」
命令に従って竜輝は部屋の扉に手をかけた
開いた先は傷だらけの聖犬の姿だった
「おいお前…どうしたんだその身体は」
「見なかったのかお前ら?ロブだよ。ロブが禁術を行って進化を果たしてしまった。そのせいでこのざまだ」
「これでマカル含めて2体…終わりだ…」
「ちょっと待って、禁術って何…?」
聖犬の口から出た"終わりだ"という言葉、竜輝は唾を飲む
「アグルクがその身をロブに捧げたそうだ。こんな技まで隠していたとは、もっと早く聖化しておけば…!」
「ロブは身体の全てから魔法を吸収できるようになり、そして吸収限度がなくなった。お前あいつらに狙われていたよな。気を付けろよ」
「本当は自ら足を運んでお前に伝えたかったが、どうにも傷が痛むせいで…」
「禁術…気になることは多いですけど、俺の事認めてくれたんですか?」
「怪しんではいる、お前は魔物だからな。でも、もう邪神が復活してもおかしくない、そんなこと言ってられない状況なんだ」
「それでだ、何でお前はわざわざここに来た」
「この前の魔物らのアジト潜入、俺らはある目的があってSNSの監視部隊に乗り込んだ。そしてその目的はホワイトウルフとして動画投稿を始めることだ。投稿内容は魔物の存在をあらわにすること、魔物と関係のある人間がいるならそいつも暴く」
「ここに来た理由はそれについて詳しく教えて欲しいから」
「魔物の存在をあらわにしたいのなら、自身が魔物に変わる瞬間でも撮ったらどうだ」
「最初はそうしたかったんですけど…どうしても自分が魔物であるとバレたくない人がいて」
「バレたくない人か…それは困った。まぁ、魔物と関係ある人は分からないが、土地が狙われていることは分かっている。もうすでに各地に魔物が住み着いてるからな」
「まぁ私達の仲間がそれぞれ自治体に忍び込み、反対の活動を行わせている。だから、君のやることはもっと強くなって邪神の復活を止めるんだ」
「国民に知らせて生贄の数を減らすほうが絶対にいいですって」
「お前のことを信用する奴がこの世にいると思うか?」
聖犬が魔法を放つと、何もない空間に青白い光の粒子が砂のように集まり、一瞬で巨大なディスプレイを作り上げた
竜輝の投稿した動画を再生しだす
「私はこの世界の闇を暴くとか言っても、コメント欄はこの有り様だ」
――このテロリスト
――お前なんか早く捕まれ
視聴回数は予想通り多かった。しかし悲惨なコメントの数々
「信用されるわけがないんだよ」
「初めはこんなんでもいい、そもそも、禁術を使ったロブに、少し強くなったところで本当に戦えるのか?」
「た、戦えるに決まってる…!だいたい…お前は異常に魔物から狙われている。だからお前は自分の身を守ることだけ気にしろ!」
「気にしてくれるのはありがたいけど、俺は俺のやり方でやるから」
「どうなっても知らないからな…まぁ出来るだけサポートはする」
聖犬の部屋から出ていく竜輝
心配そうに竜輝の背中を見つめる聖犬
――場所は魔物のアジトの地下"特別室"。防音扉が閉ざされ、外界の声は遮断されている
円状に並べられたテーブルにはマカルと、国家安全保障庁長官である御園長官、その他大勢の魔物が座っていた
「来い、御園」
マカルの低い声が響く
長官はぎこちなく笑い、手のひらを差し出してみせる。「マカル様ご足労いただき光栄です。我々は常に協力しております。こちらの指示に従っていただければ——」
マカルは片手を上げ、机にあった資料を一枚部下に渡す
「“従う”とは何だ?従わせるのはお前ではなく、私の方だ。お前がやることは一つ、忠誠か、死か。どちらを選ぶかだ」
長官は顔色を変え、ひざまずくように腰を落とした
「忠誠をどうかお受け取りください。貴方がたのために必要な措置を取ります。ご命令を――」
「よかろう」
マカルはゆっくりと笑った。その不敵な笑みは長官を震え上がらせる
「まず表向きは"治安維持"と呼べ。だが内実は私が望む“供給”を続けることだ。生贄の条件として生きた人間でないといけない。国民の一部は切り捨てられる。文書にサインしろ、御園長官。お前の手で」
渡されたペンと資料、震える手でペンを握る
御園は書きながら今の現状を話す
「供給は順調なんですけど、ただ最近反発が強くて、自治体が抵抗する場面があったり、どあにかして説明を行っているんですけどね……」
「お前らが悪者になろうと俺らは関係ない。死にたくなければその抵抗を押し切ってやれ。"見せかけ"をつくるのがお前の仕事」
御園は更に取り繕おうとするも言葉は途切れる。震える手で書類を差し出した。マカルの前では意味を為さないことを察したのだ
「では条件を変えよう」
「お前が直接供給の調整を行え。地方の反発はお前の責任で押さえ込む。成功した暁にはその見返りとして我が勢力の“一部”をお前に委ねる。だが失敗すれば」
「すれば…」
「お前は消える」
「ひ、ひぇぁ…!分かりました。分かりましたから猶予をお願いします」
「では始めてくれ、あっ、言い忘れていた。もし最悪の事態があれば…」
マカルはそう言いかけると指を鳴らした
次の瞬間――御園の意識が薄れ幻覚を見る
死よりも恐怖する幻がそこにはあった
目を覚ますと御園は机に突っ伏して嗚咽する
後には国家を動かす一つの印鑑と、闇に染まる未来だけが残った
マカルの邪神復活の予言は順調に進んでいる。
そしてその予言には竜輝のことも、"真里"のことも書かれてあった
――小苗村
「うわぁ〜みんな楽しそうなストーリー投稿してるな…それに対して私は、竜輝もいなくなっちゃったし…何してるんだろアイツ」
朝、自室でスマホをいじっている真里
今日も小苗村では――農作業を行う老夫婦、湖で遊ぶ子供、こじんまりとはしてはいるが、その中でも賑やかとしている
ただその影に潜む何か、それは巨大で、自然に包まれた小苗村に溶け込もうにも溶け込まない禍々しさ




