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魔犬士  作者: チョコ
33/49

タイトル未定2025/10/26 20:29

邪神復活までの予言は着々と進んでいる。その非道なやり方は竜輝達の精神をすり減らしていくことだろう



窓から差す光で目が覚めた河井、目をこすらせながら辺りを見回す


ぐっすりと寝ているマナ、刀を整えているリュウガ

しかし竜輝の姿は無かった


「あれ、竜輝さんがいない。竜輝さんが消えた」


「竜輝ならこの近くの市民ホールってとこに行ったぞ」


「え?なんでまたあそこに行くの」 


「さぁな、聖犬に会いに行くとか言ってたからな。まぁあの時助けてくれたし、御礼でも言いに行くんじゃないのか」


「でも聖犬は俺らを襲ったことのある奴なのに…、なのになんで竜輝さんはわざわざそいつらのアジトに…」


「不思議だが、助けてくれたのも事実。聖犬とやらの間で何か心変わりし始めてるのかもしれない」

 




真泉市民ホールへ再び足を運ぶ竜輝


魔物の闇を世に知らしめるため――

そして、魔物について最も詳しい存在である“聖犬”から話を聞くために


だが彼らは過去に戦ったことがある。竜輝の目は真剣なまなざしをしていた

「聖犬に会いたい」

入口にいる見張りにそう言うと、男は警戒をあらわにする


「何しに来た。聖犬様からホワイトウルフの存在は知らされている!人間の姿で来ようとも騙されるわけにはいかないぞ」


「あの時聖犬は俺を守ってくれた。俺は魔物についてもっと知りたいだけなんだ。魔物とズブズブな関係の人間らを教えてくれ」


「そんな事を知ってどうしたい!お前があの悪しき魔物ということに変わりはないんだぞ」


 すると聖犬の声が辺りに響いた

 

「その男を通せ!お前には教えておかなければならないことがある」


見張りは驚いて振り返る

「ですが…!こいつは魔物のはず」


「いいから通せと言っている」


「は、はい…!お前、ついてこい」

 


見張りに連れられ、竜輝は聖犬のいる部屋の前まで連れられる

「よし、入れ」

命令に従って竜輝は部屋の扉に手をかけた


開いた先は傷だらけの聖犬の姿だった


「おいお前…どうしたんだその身体は」


「見なかったのかお前ら?ロブだよ。ロブが禁術を行って進化を果たしてしまった。そのせいでこのざまだ」

「これでマカル含めて2体…終わりだ…」


「ちょっと待って、禁術って何…?」

聖犬の口から出た"終わりだ"という言葉、竜輝は唾を飲む


「アグルクがその身をロブに捧げたそうだ。こんな技まで隠していたとは、もっと早く聖化しておけば…!」

「ロブは身体の全てから魔法を吸収できるようになり、そして吸収限度がなくなった。お前あいつらに狙われていたよな。気を付けろよ」

「本当は自ら足を運んでお前に伝えたかったが、どうにも傷が痛むせいで…」


「禁術…気になることは多いですけど、俺の事認めてくれたんですか?」


「怪しんではいる、お前は魔物だからな。でも、もう邪神が復活してもおかしくない、そんなこと言ってられない状況なんだ」

「それでだ、何でお前はわざわざここに来た」


「この前の魔物らのアジト潜入、俺らはある目的があってSNSの監視部隊に乗り込んだ。そしてその目的はホワイトウルフとして動画投稿を始めることだ。投稿内容は魔物の存在をあらわにすること、魔物と関係のある人間がいるならそいつも暴く」

「ここに来た理由はそれについて詳しく教えて欲しいから」


「魔物の存在をあらわにしたいのなら、自身が魔物に変わる瞬間でも撮ったらどうだ」


「最初はそうしたかったんですけど…どうしても自分が魔物であるとバレたくない人がいて」


「バレたくない人か…それは困った。まぁ、魔物と関係ある人は分からないが、土地が狙われていることは分かっている。もうすでに各地に魔物が住み着いてるからな」

「まぁ私達の仲間がそれぞれ自治体に忍び込み、反対の活動を行わせている。だから、君のやることはもっと強くなって邪神の復活を止めるんだ」


「国民に知らせて生贄の数を減らすほうが絶対にいいですって」


「お前のことを信用する奴がこの世にいると思うか?」

聖犬が魔法を放つと、何もない空間に青白い光の粒子が砂のように集まり、一瞬で巨大なディスプレイを作り上げた


竜輝の投稿した動画を再生しだす


「私はこの世界の闇を暴くとか言っても、コメント欄はこの有り様だ」


――このテロリスト


――お前なんか早く捕まれ


視聴回数は予想通り多かった。しかし悲惨なコメントの数々


「信用されるわけがないんだよ」


「初めはこんなんでもいい、そもそも、禁術を使ったロブに、少し強くなったところで本当に戦えるのか?」


「た、戦えるに決まってる…!だいたい…お前は異常に魔物から狙われている。だからお前は自分の身を守ることだけ気にしろ!」


「気にしてくれるのはありがたいけど、俺は俺のやり方でやるから」


「どうなっても知らないからな…まぁ出来るだけサポートはする」


聖犬の部屋から出ていく竜輝

心配そうに竜輝の背中を見つめる聖犬



 


 ――場所は魔物のアジトの地下"特別室"。防音扉が閉ざされ、外界の声は遮断されている

円状に並べられたテーブルにはマカルと、国家安全保障庁長官である御園長官、その他大勢の魔物が座っていた



「来い、御園」

マカルの低い声が響く


長官はぎこちなく笑い、手のひらを差し出してみせる。「マカル様ご足労いただき光栄です。我々は常に協力しております。こちらの指示に従っていただければ——」


マカルは片手を上げ、机にあった資料を一枚部下に渡す

「“従う”とは何だ?従わせるのはお前ではなく、私の方だ。お前がやることは一つ、忠誠か、死か。どちらを選ぶかだ」


長官は顔色を変え、ひざまずくように腰を落とした

「忠誠をどうかお受け取りください。貴方がたのために必要な措置を取ります。ご命令を――」


「よかろう」

マカルはゆっくりと笑った。その不敵な笑みは長官を震え上がらせる

「まず表向きは"治安維持"と呼べ。だが内実は私が望む“供給”を続けることだ。生贄の条件として生きた人間でないといけない。国民の一部は切り捨てられる。文書にサインしろ、御園長官。お前の手で」 


渡されたペンと資料、震える手でペンを握る

御園は書きながら今の現状を話す

「供給は順調なんですけど、ただ最近反発が強くて、自治体が抵抗する場面があったり、どあにかして説明を行っているんですけどね……」


「お前らが悪者になろうと俺らは関係ない。死にたくなければその抵抗を押し切ってやれ。"見せかけ"をつくるのがお前の仕事」


御園は更に取り繕おうとするも言葉は途切れる。震える手で書類を差し出した。マカルの前では意味を為さないことを察したのだ

 

「では条件を変えよう」 

「お前が直接供給の調整を行え。地方の反発はお前の責任で押さえ込む。成功した暁にはその見返りとして我が勢力の“一部”をお前に委ねる。だが失敗すれば」

 

「すれば…」


「お前は消える」


「ひ、ひぇぁ…!分かりました。分かりましたから猶予をお願いします」


「では始めてくれ、あっ、言い忘れていた。もし最悪の事態があれば…」

マカルはそう言いかけると指を鳴らした


次の瞬間――御園の意識が薄れ幻覚を見る


死よりも恐怖する幻がそこにはあった


目を覚ますと御園は机に突っ伏して嗚咽する

後には国家を動かす一つの印鑑と、闇に染まる未来だけが残った



マカルの邪神復活の予言は順調に進んでいる。

そしてその予言には竜輝のことも、"真里"のことも書かれてあった



 ――小苗村

 

「うわぁ〜みんな楽しそうなストーリー投稿してるな…それに対して私は、竜輝もいなくなっちゃったし…何してるんだろアイツ」


朝、自室でスマホをいじっている真里

 

今日も小苗村では――農作業を行う老夫婦、湖で遊ぶ子供、こじんまりとはしてはいるが、その中でも賑やかとしている




ただその影に潜む何か、それは巨大で、自然に包まれた小苗村に溶け込もうにも溶け込まない禍々しさ


 

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