3 真泉町の実体
「かかって…こい」
声を震わせながらリュウガは言った
「魔竜斬り!」
双刃槍を振り回し勢いを加速させる。
刃に纏った闇の斬撃をリュウガに向けて放った
バンッ!ガガガ……
リュウガは刀でその斬撃を守る
だが勢いに負けて吹き飛ばされてしまった。壁に衝突して倒れる
「オラァァ!!」
アグルクは、槍の刃をリュウガに向けて飛びかかってきた
身体をかたむけてその攻撃を避けるも、次の攻撃が来る
リュウガは刀で対抗する
ボンッ!ボンッ!
刀から伝ってくるアグルクの一撃一撃が身体に響く
「下級の分際で私を倒そうだなんて百年早い!はあっ!」
刀では守りきれない程の衝撃波がリュウガを襲う
勢いをつけて追撃も放った
舞台から落とされ、床に背中を強く打ち付ける
「くそ…」
刀を杖代わりにして立ち上がる
アグルクは舞台から降りて近づく
「殺される準備はできているか?はあっ!」
ズバッ!ズバァッ!
身体を斬りつけられ、左腕を斬り落とされてしまった
「ぐあぁあ!!」
「次は頭だ。オラァァ!!」
「俺は…まだ…死ぬわけにはいかない…!」
咄嗟にしゃがみ込んで槍を避けた
そのまま低い姿勢を保ってアグルクの腹部に拳をお見舞いした
「ぐはっ…!」
2m程宙に浮くと、そのまま地面に体を打ちつける
「今のうちに…どこかへ逃げないと…」
「くそ…待てリュウガ!」
小苗村――
竜輝はバイクを自宅に止める
家の前に謎の女の人が立っていた
「誰だろ?」
「ここの家の人ですか?」
女の人が問いかけてきた
「誰ですか?」
「この村の近くの孤児支援施設の募金を行っている者です」
「あー…他渡って下さい」
「そうですか、残念です」
女の人は残念そうにどこかへと行ってしまった
「なんか…怪しげ」
マナは呟いた
「そうだな、まぁどっか行ったし…」
………………
真泉町の中心にたたずんでいる魔物のアジトでの会話
このアジトでは魔物が集まって邪神と呼ばれる神を崇拝している
中は白く無機質な壁の広い通路が様々に入り組んだ迷路のようなアジトで、ここには様々な部署があり、SNSを監視する場所やアジト外内を監視する場所がある
そしてその教団をまとめるマカルが今日も生贄を邪神に捧げている。邪神復活を実現させるために…
マカルは邪神を祀っている祭壇に入っていった
「生贄を用意いたしました」
生贄として持ってこられた人間は叫び喚くも、身体を拘束されていて身動きが取れない
すると…
早く祭壇に捧げよ
邪神のおぞましい声が部屋一面に響き渡る。その声を聞いた途端、生贄達の声が静まる
その命、頂くぞ
祭壇の上に黒い霧がうごめき現れる
すると、その霧が生贄達に重なりだした
数秒立つと霧は再び祭壇の上に戻る。気づけば生贄はいなくなっていた
白き聖獣にやられたこの身体を早く取り戻し、この世界に闇を訪れさせよ
「はい、今その聖獣らしき存在を確認いたしましたので、私の手下を2人派遣させました」
あいつ、やはりここらへんをうろちょろしていたか
………………
現総理大臣のもとにマカルがやってくる
「私達の勢力があれば、次の選挙も勝てるだろう」
「ありがとう。私は君達がいなければ今頃どうなっていたか」
「そんな大袈裟な、まぁ俺達の言う通りにして金も支給しておけば君は生贄にはならないから」
「なるのは、何も知らないお前らの馬鹿な国民だけ」
「邪神復活を私は願っています。頑張ってください」
そう言うとマカルと握手した
………………
マナをバイクに乗せて、真泉町に向かって行く竜輝
「魔法の調子はどうだい」
マナは竜輝に言った
「全然大丈夫だよ。幼少期以来上達してる」
「まさか普通の人間がこんなにも魔法上達するとはね」
「でもその代わり魔物達も強くなってる。魔物の成長スピードは速い、気をつけないとね」
「もうすぐ真泉町だ。待ってろよ…」
シュッ…
すると、竜輝の目の前に1体の魔物が現れる
見た感じただの手下ではないだろうことは伺える
「マカルの代わりにお前を殺しに来たが、本当にこちらに来てているとはな」
バイクを急ブレーキし、竜輝は被っていたヘルメット脱いだ
「普通の魔物とは一味違うようだな」
「あいつはエゴロト、竜輝と同じく魔法を駆使して戦う邪神の側近四天王のうちの1人だ」
「ロックブラスト!」
そう言うとエゴロトは、複数の岩の形を自由自在に変化させ、自分の周りに浮遊させた物を敵に向けて放った
竜輝は素早く向かってくるその岩を1つ2つと着実に避けていく
そして避け続けて最後の1つまで来た。竜輝は手に炎を纏わせ力強く飛んでくる岩を破壊した
「お前さえ消えれば何の邪魔もなくなるんだよ!」
エゴロトが飛びかかってくる
竜輝は、突然の襲撃に腕を前にしてガードをするが、
3撃のパンチと、1発のキックをくらわされる
「くらえ、ロックブラスト!」
エゴロトは、体勢を崩した竜輝に魔法を放った
竜輝は前回りをして立ち上がり、姿勢を直す。竜輝も炎魔法を放って応戦する
「邪神様から得たこの魔力…!お前ごとき簡単に倒せるわ!」
するとエゴロトの背後に…
「ワン!!」
ズザァッズザァァ!!
「ぐはぁっ!!」
鋭い眼光で背後を見るエゴロト
「このくそ犬が…!」
「私はただの犬ではない…くらえ光牙!!」
光の牙がエゴロトを襲う
避けながらエゴロトは後ろに下がる。しかし背後には竜輝がいる
魔法を使って後ろに岩の壁をするも、もう目の前にはマナが接近していた
「くそ…!」
バンバンッ!!
そのまま吹き飛ばされ、自身が生成した岩の壁にめり込んだ
「もう動けない、終わりだ!」
マナは飛びかかった
「ここからじゃ攻撃できないとでも…?はあっ!」
落ちていた岩のつぶてをマナに向けて放った
飛びかかろうとしていたマナの頬をかすむ。そして姿勢を崩して地面に倒れてしまう
エゴロトはめりこんでた壁から脱出し、マナの首元をつかんだ。威嚇し続けているマナに怖気づかずそのまま地面に強く投げた
「あんまりなめるなよ俺を!こんなんで負ける俺ではない!」
すると…
ボガーン!!
岩の壁を破壊して登場する竜輝、その勢いのままエゴロトのことをぶん殴った
そして、マナを抱えてバイクに向かって走る
ヘルメットを被り、エンジンをかけた
「逃がすか…!」
エゴロトは魔法を放った
飛んでくる石つぶてを背後にバイクを運転する
「マナ!大丈夫か」
「全然大丈夫…だだこれから真泉町に入ったとしても、後からあいつが追ってくるかもしれない」
「真泉町の中でどこか隠れる場所があればいいけどな…」
………………
数分経ち、竜輝達は真泉町に来た
エゴロトを気にしながら入っていった
真泉町――
基本魔物に占拠されており、邪神崇教会アジトが町の中心に位置しており、大半以上の場所が魔物の住む場所。
残りの少し、町の端の方に位置しているとこではほんの一部の人間が集落を作り生活している
世間で魔泉町は、中心に高級住宅街があるとされ、外側は貧しい人たちが住むとされている
貧富の差が激しい町として認知されている
表上では高級住宅街には厳重な警備が張られているとされ、普通の人は入る事が出来ない
そんな中、竜輝は端の方を視察している
「道で死んでる人がいる…治安が最悪だな」
トコトコ…
するとそこに年老いた人間がやってくる
「こんなところに来るとはね…そこの若そうな人」
「俺は魔物を倒すためにここに来た。そのためにも俺に何か情報をくれないか」
「お前さん、ここがどんなところか知ってここへ来たのか?」
「まぁそうだけど、俺はもっとここについて知りたいんだ。情報を聞きたいから安全な場所へ案内して欲しい」
「お前みたいな奴何をしでかすか分からん。自分の身のためにも帰ることをオススメするよ」
するとその老人はそっぽ向いて帰ってしまった
「もう、おしまいなんだよここは…」
「行っちゃった…はあぁ……これからどうしようか」
その状況を見ていた一人の男が竜輝のところへ歩いていく
「君もここについて調べてるの?あっ申し遅れました、安西記者の望月と言います」
名刺を渡してきた
「記者の方…?」
「一応怖い物知らずの男として記者をやらせてもらってます」
「そうですか…まぁ別に記者ってわけじゃないんですけど、ここについての情報は知りたい感じですね」
「それでは情報の交換といきますか」
「まずですね、ここ真泉町の市長は以前から魔物との共生を呼びかけていました。しかし、その情報は市民に知られたら当然当選することは出来ませんよね」
「だけど、ここで何かの力が働いたことでメディアで魔物との共生という部分だけをなんとか切り取って放送。その結果当選してしまったんですね」
「それで結局、共生とは程遠いこんな状況になってしまったと…」
「そうなんですよ。しかもそれはここだけの話ではないんですよ。真泉町から抜け出した魔物が他の場所で土地を買い占めてそこで新たな魔物を作ってるとか」
「場所で言うと、近くで言ったら篠原駅付近にある保育園とか」
「後は、小苗村近くの孤児支援施設とか」
「それって…あの時家の前にいた人の…」
「それで、あなたは何か情報ありますか?交換ですよ」
「え…いやだから、俺は記者じゃないから」
「はぁ?ありえない。約束と違うじゃないですか」
「勝手に交換って言ったのはそっち…」
「それじゃあもう望月は行きます。無駄な時間でした」
そそくさとその場から去ってしまった
「まぁ一応情報を知れたしいっか」