29 地下落下2
魔物の肉体を食らった怨念が形を変えた剣はどれだけ禍々しい物であっても、竜輝を救う一筋の光であることに変わりはなかった
ズザァッ!!
岩壁を十字に斬って、力強く蹴る竜輝
向こうにいるエゴロトの驚いた顔がよく見える
「おいお前!怨念の野郎は一体どこに行きやがった」
「お前を殺す手伝いをしてくれたよ…!」
竜輝は剣を肩に担いで言った
「なるほど、そんなへなちょこの剣で戦おうと言うわけか!!ハッハッハ!!くらえ」
そう低い声で呟くと、再び嵐のように無数の岩を放った
竜輝は強く剣を握ると豪快に振り切る
ズバァッ!!
空を斬るその一撃は、飛んでくる岩を跳ね除けた
これならいけると確信した竜輝は剣を振りながら走っていく
エゴロトは対抗するために岩で剣を生成させる
「こいよ、かかってきやがれ!」
互いの剣が当たり火花が散る
激しい激闘の末、竜輝の剣がエゴロトの剣を貫く
激しく砕け散る岩を見てエゴロトの表情は唖然となる
間髪入れずに剣がエゴロトの顔をかすむ
シャッ…
「顔から…血が…」
地面を蹴って距離を取る
「俺は四天王だから強いはずなんだ。本気の力を食らえ!」
エゴロトは魔力を溜めて特大の岩を生成させた
狙いを定め、それをこちらへ投げてくる
「力任せで手荒くなるけど、付いてこいよ」
竜輝は腕に魔力を溜め込んだ。動力に変換されるその魔力、勢いが剣に伝わりそのまま岩と対峙しようとしている
バゴーーン!!
響き渡る衝撃音
ヒビを入れながら徐々に剣が入っていく
「うおぉぉお!!」
力のこもった一撃、振り切って岩を真っ二つに斬り落とす
その斬撃がエゴロトに当たると、勢いのまま天井に体を打ちつける
「ぐはぁっ!!」
たまらず血を吐き出すと、そのまま落ちて倒れる
「よし、この調子だ」
「ふふ…ふふっ…俺を倒すことにしか目が無いお前、自分が斬り落とした岩が後ろの2人を襲っていることにも気付かない」
我にかえって後ろを振り向く竜輝
目の前には瓦礫の山があった
「嘘…だろ」
ボロボロ…
何やら瓦礫の山から物音がする
すると、瓦礫の中から河井の手が出てきた
「こっちはマナさんの魔法で耐えれています!それより竜輝さん後ろ!」
竜輝の身体に飛びかかるエゴロト、覆いかぶさると岩で武装した拳を振りかざしてきた
竜輝の持っていた剣を蹴り飛ばし一方的に拳を振るう
「馬鹿が!あんな仲間見放していればこうはならなかったのにな…!!銃を構えようと無駄だぞ!そこの小僧!」
「俺は死なない!なぜなら四天王だからな」
ナラバ殺してやろう
怨念の剣がカタカタと震える
剣から黒いモヤが溢れ出していったのだ
「ぐあっ…!く、苦しい」
モヤが宙に浮くと同時にエゴロトも宙を浮く
立ち上がると竜輝は攻撃の構えに入る
「エゴロト!お前の負けだ!」
ブゥオンッ!!
強く繰り出されたその一撃はエゴロトの腹部に向かっていく
バゴーーン!!
激しい破裂ともにエゴロトは吹き飛ばされていく
地面を擦りながら意識が朦朧となっていく
「俺が死のうと…邪神様の復活は…途絶えない。邪神様の復活には…お前が、お前が決め手となるから…な…」
「止めたければ…自害だ。全てはシナリオ…この世界は何もかも決められている…だ…」
モヤがエゴロトの死骸を追う
エゴロトの肉体を欲す怨念達は勢いよく食らった
「何してるんだ…?」
この剣がモット強くなるように魔力を食らってルンダ
コイツハ大量だ
「なるほど…」
「ところで、本当に俺達と共に戦ってくれるんだよね」
当たり前だ
「良かった。それじゃあ、エゴロトは死んだからここから早く出よう皆」
後ろを見ろ。マズハあいつらを助けるのが先だろ
「あっそうだった」
――スゥイルの心は揺れ動いていた
リュウガはスゥイルを仲間にしたいと考えている。だがスゥイルは悩んでいた
「スゥイルの子供をこちらに避難させて、共にマカルを倒すしかない」
「マカルがこの地にいる以上、避難出来る場所などない」
「分身を生み出し闇を変幻自在に操る。なによりも、禁術を成功させさらなる闇を強めた彼に勝てるのは聖獣か邪神のみ、勝てるとでも思ってるお前はおかしい」
「でもこのまま隠し通すのも辛いんだろ?どうせ俺みたいになるなら足掻くべきだ」
トコトコ…
悩みながらスゥイルが近づいてくる
すると
ズザァァ!!
リュウガの腹部に鋭い爪を振りかざした
「すまないリュウガ、俺は任務を果たさなければならないんだ!」
そして、蹴ってリュウガのことを吹き飛ばす
「俺らは出会ってはいけなかった」
リュウガは地に背を付けその場で倒れてしまう
「足掻け、足掻いて俺のようになって欲しくないから…」
「足掻いてるよ。俺にとっては任務を遂行させてバレないことが足掻きになる。俺の為に死んでくれリュウガ!!その身を俺に捧げろ!!」
ブサッ!
「グハッ…!!」
独自行動した刀がスゥイルの背中に刺さる
リュウガは勢いよく立ち上がる
「死んでたまるか…こっちだって守るもの、復讐があるんだよ。だけど、いつかお前と分かち合えることを願いたい」
そう言うとリュウガは走り出した
タッタッタッ!!
刀を手元に戻した後、リュウガは走って開いた門の中へと入ってしまった
スゥイルは腹部から身を垂れ流しながら立ち尽くした
「捧げろよ…自分の様になって欲しくないんだったら…俺の為に死んでくれよ…」
「くそぉ、なんであいつも…」
――城壁の上
マカルがその様子を再び見下ろしていた
「スゥイル、戦う意思を持ってくれて嬉しかった。今回だけは見逃してあげよう。だがしかし、リュウガは行ってしまったようだね。こうなったら、もうそろそろ見せても良い頃かな」
マカルはテレパシーでィザァンプと通信をつなげる
「ィザァンプ、今からリュウガがそっちに行くから頼んだよ。もちろん失敗はダメだからね?」
「全てはシナリオ通りに事を進めるんだ。真実を知らせてリュウガをどん底に突き落とす。最後はさらなる絶望だ」
――例の物は設置させていただきました
「それでいい、君も任務を遂行したら見逃してあげよう」
――見逃す…とは?
「あぁごめんごめん、君のことでは…なかったよ。ふふふ……」
「ふははは!!ふははは!!」
全てはマカルのシナリオ通り、いや、邪神のシナリオ通りに過ぎない




