25 vs聖犬
マカルの手によって壊された真泉市民ホールは、聖犬の手によって占領された
一方で、平華教との決別を決めた河井は竜輝と新たな旅に出る
真泉下層集落――竜輝の家にて
「あなたは…魔物なんですか?」
人間姿に戻った竜輝が静かに頷いた
「だったらどうして僕の事を助けたりしたんですか?」
「俺は元々人間として生きていたんだ。魔物だとは知らなかった。だがある男が俺の魔物である部分を目覚めさせたんだ。だけど俺は魔物を倒すという考え方自体は変わっていない」
「だがお前、ホワイトウルフを知らないとはな」
「あそこ、テレビとかの情報源が無かったから……僕があそこにいる間にこんな事が起きていたなんて」
「あそこというのは平華教のことか?」
「そうですけ…ど、別に平華教に入信していた訳ではなくて…!魔物に、ちょっと嫌なことされた腹いせで、ちょうど真泉に乗り込んできた平華教に仲間になりたいと言っただけなんです」
「分かった分かった。落ち着け、それより、ここの首長が平華教が学校を破壊したとか言ってたんけど、平華教にいたってことは何か知ってるよね」
「うん、その時僕も行かされた。それに、あいつらは相田達を駒にしてアジト潜入までしたからね」
竜輝とマナは驚いた顔で見合わせた
竜輝は再度河井の方を見て聞いた
「潜入だと?あの魔物のアジトに?」
「学校を破壊した人を特定するために視察人が市民ホールに来たんです。そして、佐武がそいつを返り討ちにして、選ばれた3人がその視察人のパスを取って侵入という流れです」
「パスで入れたのか、でもそのパスが本当の物だとしてもあいつらのセキュリティを前にしたら無意味なはず」
「疑う気持ちは分かります。私もおかしいと思っていて、魔物達は潜入出来たものの、電波を逆探知して平華教の居場所を突き止めたと思うんです。だから潜入した時点で、いや、視察人が来た時点で平華教が潰れることは決まっていたんです」
「あの流れ星は相当強力な魔物が放ったものだろうな。やはり魔物の方が一歩先を進んでいるのか…」
「ちなみに、潜入した際の動画とかは持ってたりしないのか?」
「USBに保存しているとは言っていたので、あるにはあるんですけど…真泉市民ホールの中かと」
「それだ、それがあればSNSを監視している部隊の場所が分かるはず。俺はそこをまず破壊したいんだ」
「(この人本物だ…この人なら僕の人生託してもいいかも…)」
そう思った河井は、考えるよりも先に口が開く
「僕を仲間にしてください!!」
「………無理だ。お前はあの攻撃を前にして魔物と戦おうというのかお前は?」
「え、いや…僕は仲間を駒扱いする平華教にうんざりしてて、この流れ星を気に決別したんです!だから新たに竜輝さんと共に戦いたい」
「本当に死ぬぞ。見た感じ170cmもないじゃないか」
「僕なら平華教から奪った武器があります。並の人間ではありませんよ!」
「じゃあ、お前が捕まった〜とかなっても助けないからな、いいな」
「助けなくても結構です!」
「ん〜(まぁUSBの在り方とか知ってそうだしな…)じゃあ今回だけだぞ!」
「ありがとうございます!!」
河井はテンション上がってはしゃぎだした
「落ち着け落ち着け」
マナがゆっくり竜輝の元に歩いてくる
「大丈夫なの?」
「まぁ今回限りだから…」
竜輝は少し嬉しそうだった
「仲間ができてよかったね。ちょっと嬉しそうに見えるよ」
「嬉しいだなんて…」
朝――真泉市民ホール 一階
一晩かけて、壊された真泉市民ホールが光の力で修復していた
「ここは平華教から我が光の教団のものとなった。魔物からはマークされ続けるだろうが、アジトにすぐ近いというのはメリットでもあるだろう」
「必ず魔物は殲滅させるんだ。いつ攻められてもいいように武器の準備をしてこい」
聖犬が信者を取り仕切る
ジーーーッ……
その様子を建物外から覗いていた竜輝と河井
マナは集落でお留守番
「なんだかマナと同族みたいな奴が取り仕切り始めたみたいだな…だがあそこは過去に俺の事を襲った。俺が魔物だから…」
「竜輝さん、佐武の部屋は確か3階なので、秘密の部屋にあるはずです」
河井は平華教団員の頃の装備を着て武装している
「ここを正面突破するのは不可能レベルだ。3階くらいなら俺が壁登って行ってやる」
竜輝は魔物態に姿を変えた
「凄い、一瞬で黒い装甲が身にまとった…!」
「背中に乗れ、行くぞ!」
バッ!!
河井を背中に乗せて空中を飛んだ
「うわぁ…!高い…!」
「河井静かにしろ!あいつらにバレるだろ!」
そうして、3階まで上がった辺りで河井が指をさす
「あっ、この部屋が佐武のいた部屋だ」
竜輝は壁に飛び移って勢いよく窓を開けた。
中に入ると、部屋は昨夜、奇襲にあったとは思えない程綺麗な内装であった
「もういいだろ、降りろ」
「あっそうだった」
河井は竜輝の背中から降りると、部屋中を走り回った
「USBの隠し場所はどこだ〜!」
「むやみに走り回っても見つからないぞ。とはいえ、もうあの連中に取られている可能性もあるからな…」
そこで河井が何かを見つける
「このベット横にある机、引き出し部分に鍵がかけられてるよ」
「マジか、でも今から鍵を探すのは時間がかかる。強引に開けるか」
竜輝は引き出しに手をかけた。力を入れて強引に引くと、バキバキと音を鳴らしながら引き切った
確認すると、中には錯乱された小物、そしてその中に謎のUSBメモリがあった
竜輝はそれをすぐに手に取ると、河井を背中に乗せるよう指示した
「意外と早く終わったな」
河井が竜輝の背中に乗ろうとしたその時、部屋に光り輝く何かが現れた
その光から、竜輝めがけて光線が放たれる
竜輝はその攻撃を避け、その光の方を見た
光から声が聞こえてくる
「早速魔物の奇襲ですかお二人で、だいぶ自信があるようですね」
「ん?片方、ホワイトウルフとやらじゃないですか」
「その名を口に出すな!ちっ、河井は先に逃げろ」
「逃げようにも出口の扉はあの犬に防がれてるし…」
「何をもたもたしてるんですか?魔物らしくないですね。それなら私からいかさせていただきます」
大きな光の弾を生成すると、それを河井に向けて放った
「くそ…」
バッ、
竜輝が拳を構え、河井の前に出る
バゴーン!!
光の弾は消滅した。しかし、竜輝の拳の装甲はドロドロに溶けていたのだ
「これ以上は助けないからな河井!」
そう言うと竜輝は天井に穴を開けて、空を飛んだ
聖犬も壁をぶち破って後を追った
「天罰を…!」
聖犬の周りに無数の光の弾が生成される。聖犬の合図と同時に、その弾から光線が放たれる
「動力変換!」
竜輝は脚に炎魔法を溜め暴発させる。その勢いで光線を避ける
だが、うねる光線が竜輝を追尾し続ける
バンッ!バゴンッ!
一発二発と攻撃を食らってしまう
「ガハアッ!!」
痛みに耐えながらも竜輝は、次の攻撃を避けるために上空に飛ぶ
「キツ過ぎる…河井を逃すためにも一発くらいはあたえないとな」
「まだ攻撃は止まりませんよ」
聖犬の雄叫びとともに、再び光線が放たれた
ヒュンヒュンッ…
避けても避けても光線がうねって追ってくる。何回も避け続けると、聖犬と竜輝との間に隙が出た。竜輝は聖犬の方を向いて、猛スピードで向かった
竜輝の背後には無数の光線が追っている
竜輝は拳に力を入れて聖犬に向けて放った
「オラァァ!!」
だが…
ゴンッ!!
聖犬の前に現れた光の壁がその攻撃を遮った
「私を容易く倒せると思うな…」
「俺は邪神を殺す魔物だ!!他の奴らと一緒にするな」
「嘘を付くならもっと上手く付け、そんな見た目で何を言ってもな」
竜輝の背後に光線が迫りくる
バゴーン!!
爆発すると、竜輝は墜落していった。
ドサッ、
河井の目の前に落ちる竜輝、
体の痛みに耐えながらも立ち上がる
「うぐっ、大丈夫…逃げられるだけの体力はまだある。河井乗れ」
破壊される市民ホールの1室、物音を聞いて教団員が騒ぎ始める。聖犬の命令がない今、教団員は動けない。
だが、1人の教団員は歩きだす…
眩い光が再び竜輝の目の前に現れる
光が竜輝を包むと、河井と竜輝を引き剥がした。
そして、この1室内の床に竜輝を強く叩きつけた
「こうなったら、僕だって…」
河井は持っていたハンドガンを構えて銃口を聖犬に向けた
「私に挑もうとしたのが運の尽きだ。ホワイトウルフの活躍もこの一撃でおしまい」
聖犬の爪が鋭く伸びる。その爪を竜輝に向けて振り下ろそうとする
ガチャッ…
そのタイミングで部屋の扉が開いた
そこからナイフを持った佐武が聖犬に向けて走っていった
「危ない!」
河井の銃口が佐武の方を向く。そして次の瞬間
バァァン!!
銃声が響き渡った
聖犬は驚いて背後を向いた。するとそこには血を吐いて倒れる佐武の姿があった
竜輝はすぐに立ち上がって河井の手を掴む
その隙に2人は情報を持って逃げる
「一体、何が起きたんだ…」
「佐武があいつのことを襲おうとしてたんだよ。隙を与えられたらいいなと思ってやった」
「そんな銃弾じゃどうせあいつは倒せないし、いい判断だったかもな」
「逃げられましたか…魔物のくせに私のことを助けるだなんて一体」
佐武は倒れながら聖犬のことを睨みつける
「この犬が…!こんな犬如きに駒扱いされるなんて御免なんだよ!!」
「河井、あいつはいつも俺の事を邪魔してきやがる!!なんなんだよ」
「あなたは分かり合ってくれないんですね…じゃあ洗脳を強めましょう。あなたも戦って、駒扱いした人の分、業を背負いなさい」
聖犬の目がカッと開く。すると…
学校潜入、そしてアジト潜入の時のメンバーが佐武の目の前に映る。その一人一人の顔は白いモヤで隠れていた。
駒としてみていたことで、名前も顔も一切覚えていなかったのだ
シュウゥゥ……
白い渦となってメンバー全員が佐武の身体の中に入っていく
「戦いたくない!やめろ、やめろ!!」
白い渦が入りきると、佐武は完全に洗脳されてしまった




