21 偽りの町
魔物に追われ、聖犬と呼ばれる崇拝者からも追われることになり、小苗村には居られないと判断した竜輝は真泉町の下層に行くことを決めた
その日の夜小苗村にて、竜輝とマナは村を出る準備を行っていた
竜輝は古びたリュックサックのジッパーを開け、水筒や食料を詰め込んでいく。中身をひとつひとつ確認するその手はどこか焦りを隠しきれていなかった。
「もう村長に話はしたよ」
マナは頷いた。少し離れた場所で荷物の整理をしている最中だった。月明かりが差し込む窓辺でマナはひと息つき、ふと竜輝の方を振り返る
「それはありがとう。でも、行く先は真泉だから、いつも以上に引き締めてかないとね」
「ラーメン屋のテレビで見た壊された"謎の学校"もしかしたらあそこの集落にいる人達が起こしたものかもしれない」
「ホワイトウルフの演出の様に見えるけどね…」
「真偽を確かめるつもりだ。なんせアジトが1番近くにあるんだからもっといい情報があると見てもいいだろう」
「そういや、真里には言ったの?」
「あぁ…それが言えてないんだ。心配させたくないというか、言い訳が見つからないというか…なんて言えばいいか分からない」
「どのくらい真泉にいるかも分からないのに、このままじゃ遠距離になっちゃうね」
「す、すぐ戻るつもりだから…でも、あいつが俺を待ってくれるのか、それだけがちょっと不安だ…」
「まぁこんなことどうでもいいよ!支度は終わった?」
「終わってるよ」
「じゃあもうすぐしたら行こうか」
………………
夜に光り輝くネオン、リュウガは立之宮の最も栄えている繁華街へと足を運んだ
「何体か分からない程魔物を斬り殺した。だが、ホワイトウルフのアジトは突き止めることができた」
「竜輝をホワイトウルフの首謀者にするだなんて、この俺が許すわけないだろ」
人目につかなそうな薄気味悪い路地裏に入っていく
地下一階――
扉を開いた先にあるのは大爆音のクラブ会場
ボロ切れのフードを被ったリュウガはここには似つかわしくない場所だった
入るとすぐにリュウガは呼び止められる
「あなた入場許可ありませんよね、そんな汚い格好までして、ここに入るのやめてもらえせんかね」
「それは無理だな、ホワイトウルフは壊滅しないとならないからな」
すぐさま刀を構える
スパンッ!
呼び止めた魔物を真っ二つにした
鳴り響く悲鳴、屈強な魔物達がリュウガに向かって走っていく
「ただの下級如き、俺と対等に戦えるはずがない!」
「ここを取り仕切る奴を出せ!!」
ズザッ!ズバァッ!!
向かってくる下級魔物をこれでもかと斬り裂く
「こいつやべぇぞ。俺らじゃ太刀打ち出来ない」
リュウガの背後から魔物が襲ってくる。固く握ったその拳がリュウガの背中に当たった
だが…
リュウガは後ろを振り返ると、襲ってきた魔物の腕めがけて刀を振り下ろした
「ここはホワイトウルフの奴らの遊び場か?」
リュウガの眼光に怯えるその魔物
固く閉じようとしていた口が開く
「こ、ここは…児童売…」
ブジャッ!!
暴露しようとするその魔物の脳天を剣が貫いた
「言うなゴミが…はっ!」
急に現れた魔物が剣を振り回した
チッ、
リュウガの身体に剣が霞む
ここを取り仕切る魔物、モノへが現れた
「騒ぎを起こせば、またホワイトウルフの仕業としてテレビに報道されることだろうよ!!」
「ホワイトウルフなんてのは下級の小物にすぎない」
モノへの剣がリュウガに向かっていく
だがモノへの遅い斬撃はリュウガに当たりはしない
「死ねぇ!!」
リュウガの刀がモノへの脇腹をえぐった
ズバァッ!!
「ぐはぁっ!!」
「弱すぎるだろ…」
「この様なところはここ以外にも無数とある!!今頃その女達は俺達魔物に犯され続け…」
グサァッ!!
醜く吠えるモノへの開いた口に刀が突き刺さった
「途中で殺されたあいつの証言からするとここは児童売買所」
「魔物共!俺は今から動く奴を斬り殺す!隠している子供達を開放させる!!」
………………
真泉の下層集落――
「ま〜たここに人間がやってきた…あいつらと合流するためか?もうお願いだから帰ってくれ」
下層集落の首長が杖をついてやってきた
竜輝の姿が見えるなりため息をついた
「合流?いったい何のことだよおじいさん」
「平華教のことだよ。お前らの仲間が内部にある魔の学校を破壊したからもううんざりなんだよ……」
「あのニュースでやってたやつ…?!」
「まさか、ホワイトウルフと名乗っていたか?」
「あれはホワイトウルフの仕業じゃない。あれは平華教の残党が起こした虐殺だからのぉ…そもそもホワイトウルフは魔物集団、魔の学校を破壊する必要がないだろ?」
「でもな、他の集落もそうじゃが…魔物に楯突くと集落丸ごと皆殺しになるんじゃ。でもな、あいつらが学校を破壊したせいでこの集落の命も残り短いかもしれない…」
「ということは、俺はこの集落にいられないのか…」
「この集落に居ようなんて思う者は、もうほとんどおらん…よほどの訳ありか、死に場所を探してるかだ。あんたもなんか訳ありか?」
「魔物に身を追われここに逃げ込んできたので、情報も知れたらなと」
「魔物に身を追われる?ほぉ、まぁいいが…」
「情報についてなら真泉市民ホール跡地に平華教の残党がいるはずだから、何か情報を得たい場合はそいつらに聞くといいよ」
首長の案内によって、
元々河井が住んでいた家に案内された
「元々人が住んでたように見えますけど…」
「ここはの、河井という人が住んでいたのだが、急に消えてしまったんじゃよ」
「まぁこの村も長くはないと思うし、いいよ」
「そんな感じなんですね」
「じゃあ荷物を置いたら平華教のもとにいきますか、マナ」
「ワン!」
首長は家に戻り、竜輝達は荷物を置いてまずはご飯を食べた
そして、首長が教えてもらった道をたどって竜輝は真泉市民ホールに向かう
「おーい!この中にいるんだろ、平華教の生き残りが」
「なにやらおかしな雰囲気だね。でも気配は感じる。私達の素性を知るためにあえて出てこないつもりか」
ヒュッ…
目線の先に誰かの走る影が見えた
「何か見えた。こんなに徹底して姿を隠してるくせにこんなへま犯すか?」
「竜輝の思っている通り、視線をあそこに集中させるためだろうな。てことは…」
「後ろだ…!」
竜輝は咄嗟に後ろを向いて拳を振るった
バゴンッ!!
黒い衣装に包まれた人間の顔面に竜輝の拳がめりこむ
ボンッ!!
その人間は壁にぶつかって倒れた
「なぜ…バレ…た」
ゾロゾロ……
そのタイミングで何人もの平華教残党が現れる
「正体現しやがったな」
「それはこっちのセリフだろ。第一そっちからやってきたんだからな」
「邪魔者は消えろ」
5人の残党が一斉に竜輝に襲いかかってくる
だが相手は人間、竜輝にとって5人くらい楽勝
まずは1人目の攻撃を避け、腹部を殴る。そして素早い手つきでそいつの服を掴み上げ、もう1人の向かってくる人に投げつけた
そして、ナイフを持って襲ってくる人の攻撃も避け、そいつの手首をガシッと掴んだ
スポッ…
力強い竜輝の握力によって、掴んでいたナイフを落としてしまう
そして隙の空いた身体に竜輝の張り手が向かっていく
ドォンッ!!
「ぐはぁっ!!」
竜輝はサッと落ちたナイフを拾う
「まだやろうっていうのなら、次は刺すぞ」
するとそこに佐武がやってくる
「おい!そいつ1人に手こずりすぎたぞ!侵入者は排除しろ!」
「その口振り、お前がここを仕切っているようだな」
「侵入者のお前…一体何しに来た?」
「あそこの集落のおじいさんから、魔物の情報を聞くならここだと聞いてきた。俺は魔物を殺すために来た」
「なら、情報を渡す代わりに俺の仲間になれ。だいぶお前には強力な力を持っていると見た」
「しないよ。するわけないだろ、平華教の仲間だなんて」
「あまり俺等のことを馬鹿にするなよ…」
「馬鹿にはしてないけど、なんか闇を感じるというかね。みんなお前に怯えてないか?」
「こいつ、口答えしやがって!」
佐武は銃を構え、銃口を竜輝の方に向けた
「普通にムカつくから殺す。はっ!」
バンッ!!
パシンッ…!!
竜輝は瞬間で銃弾を掴んだ
カランコロン…
掴んだ銃弾を床に落とした
「まぁ別にお前らの仲間になるつもりは無いが、お前らがどんな奴かは分かった。やっぱり分かち合うことは出来ないか」
「何なんだあいつ…」
須川が佐武に近付いて言う
「まぁ私達は私達だけでやってやりましょう」
「例の物が完成したわ、これでもっと制圧が進みそうよ」
「案内しろ」




