18 破壊
ゴッゾ アルファを倒した後、竜輝はsaiと遭遇する
まだ右手は回復していないというのに、走って追いかけていってしまった
saiの実力はいかに…
saiはトランシーバーを握り、冷静に指示を放った
「あいつにもライトをつけろ。ただし、あくまでも演出の一環として。そして今すぐ全てのライトを消せ」
パッ、
それを聞いた照明係が全てのライトの光を消す
深い闇が会場を襲った
え、何?何?
観客席から、不安がる声が漏れ出した
ガチャッ
扉を開いて出てきた竜輝、暗闇の中で立ち止まる
「……暗闇の中でやりあうつもりか」
竜輝は目を細めると、目線の先に佇むsaiが見えた
「どんなシナリオがあろうがそれをもぶっ壊すまで」
竜輝は走ってsaiのいる舞台上にあがった
あがると、自身を照らすライトが付く
「眩っ、なんだこの光は…?」
きゃあぁぁ…!!化け物!
魔物態である竜輝の姿を見て、観客から悲鳴が上がる
そんな暗がりの中で響くsaiの落ち着いた声
「みんな待ってて、今から変身するから」
サイが指を鳴らすとステージが再び暗転した。そのうちにサイは魔物としての姿を現す
ステージに再び明かりが灯ると、観客からの大きな歓声が上がる
サイは魔物へと姿を変えたのだ。
だが、それは人間に媚びるためのかっこいい装甲での登場。あまりの歓声の大きさから、サイの口角がクッと上がる
「見せてやるよ、俺の"ヒーローショー"をな」
サプライズのヒーロー公演が始まった
「人間に擬態できるということは、saiは俺と同じ人間と魔物のハーフ、実力は俺と互角なんだろうな」
「ダナマを倒したお前ならわかると思うが、擬態できる点が同じであろうとそれぞれ隠し持つ能力によって強いか弱いかが決まる。そして俺はその中でも強い」
サイはマイクを通じて大きな声で言う
「観客席!もっと俺に声援をくれ!」
そしてすぐさま音声をオフに変えた
「どんな能力か知らないが、これ以上騒音を増やすな!!」
竜輝は拳を構えて走っていった
いけぇー!サイ!
頑張れー!!
かっこいい!
サイも動き出した
「はあっ!!」
サイは竜輝の攻撃を華麗に避け、カウンターで腹部を殴った
そしてもう一発追撃を放つ
バンッ!!
「ぐはっ…!」
「こいつ動きが速い、互角では…ない?」
「その場にうずくまってどうした?わざわざこの会場に殴り込んだ割には強くないな。ロブを倒したくせに、オラァァ!!」
バンッ!バゴンッ!
サイの独壇場として竜輝はボコボコに殴られ蹴られる
「なんでお前なんかに歓声があがるんだよ…」
うずくまりながらサイの事を睨みつける
頑張ってサイ〜!
「なんで、なんでなんだよ…」
バッ!
竜輝は立ち上がって打撃を与えようとしたが避けられる
そしてサイは竜輝の顔面に拳を放った
バゴンッ!
「ぐはぁっ!!」
バタッ…
竜輝は再び吹き飛ばされた
「この威力、なんならロブクラスの威力だぞ……」
「あんな細い身体からどうやってあの力を…?その秘密はなんなんだ」
ガシッ!!
サイは倒れている竜輝の首を掴んで引き寄せた
「お前は自ら舞台裏へはけろ…サプライズ公演はこのくらいでいい…」
竜輝の耳元で囁いた
「嫌だね…」
竜輝がそう答えると、サイは間髪入れずに竜輝のみぞおちを蹴った
「グハッ…!!」
「なら殺すまでだ…」
「黙れ…魔物として人間を支配しようとしているくせに人間の力を借りようって…ふざけんなよ」
「馬鹿な人間は俺が魔物だということも知らずにキャーキャーと応援している。もうアホにも程があるだろ。魔物はもうあちらこちらと潜んでいるのに、侵略はもう進んでいるというのにさ」
「ふざけんな!」
竜輝は怒りの一撃を放つ
パシッ、
「おっと危ない」
サイはその一撃を手で掴んだ
すぐさま蹴りを入れて竜輝を舞台裏にまで飛ばした
凄いサイ様ー!!
サイは歓声に答えて笑顔で観客に決めポーズを見せる
観客の歓声が辺りを響かせる
サイが舞台裏の方に顔を向けると、笑顔から冷酷な表情に変わる。竜輝を追いかけに行った
「馬鹿な人間がいる限りお前は俺を越せない。ハッハッハ」
………………
タッタッタッ……
マナは必死に走る
「竜輝、待っててね」
「昨日竜輝と望月の2人で場所確認していたから何となく分かるけど…」
ヒュンッ!
突然、氷の氷柱が凄いスピードでマナに向かっていく
それを察知したマナは飛んで避けた
パリンッ!
「こんな時期に氷柱…?いや違う、これは魔法」
「明らかに魔力の量が違うと思ったら、白犬使いの白犬ですか」
ニヤニヤしながらギャリがこちらに歩いてくる
「あの人には近づけさせませんよ」
「どけ!早く竜輝の治癒をさせないとあいつが死んでしまう」
「sai、あいつは中級魔物のサイなんだ!」
第3中級魔物 サイ
甘いマスクを持った人間態で人間を心酔させる。それで集ったファンからの声援をエネルギーに変えて戦う
………………
「ハァ…ハァ…」
舞台裏でも歓声が竜輝の耳をつんざく
「歓声が騒がしい…黙れ!うるさい!」
竜輝は人間の姿に戻った
そして火炎弾を手のひらに生み出した
「へぇ〜人間体ではそういった魔法が使えるんだね。俺には無力だけど」
「くらいやがれ!!」
竜輝はその火炎弾をサイに放った
サイは向かってくる火炎弾に向けて拳を構える
サイの力を込めたその一撃は、火炎弾を殴り返した
ヒュンッ、バゴーン!!
返ってきた火炎弾が爆発
爆発をくらって、竜輝は壁に背をつけて倒れてしまった
何?なんなの今の音…
観客席から不安がる声が聞こえだす…
サイはマイクに電源を入れ、観客に言う
「みんな安心して、安心して歓声を続けて〜」
本当に大丈夫なのかな…
ザワザワ、ザワザワ…
「だから…安心して歓声を続けろと言ってるだろ」
サイはマイクを投げ捨て怒りをあらわにさせる
竜輝が起き上がる。このタイミングを見計らって火炎弾を飛ばした
バーン!!
爆発し、サイは手をついて倒れた
「くそ…いつもならあんな火炎弾如き受け止められたのに、あのアホ達が歓声を止めたせいで…」
sai様頑張って〜!早く出て来て〜!
1人のファンが歓声を上げると、それに続いて不安がっていたファンも歓声を上げ始めた
ニヤッ…
サイは笑みを浮かべて竜輝の方を見た
「フッハッハ……マジで馬鹿過ぎる」
サイは機敏に立ち上がった
「ホントだよ…本当に馬鹿しかいないよ…」
竜輝は拳を強く握りしめ地面を殴った
「お前を倒すにはもう……アレしかない」
「アレ?とは、ふふ…何をするのか楽しみだよ。正々堂々かかってこい」
「覚悟は決めた!」
竜輝は再び火炎弾を生成した
足を踏みしめ、肩の力で思いっきり強く放った
ビュゴンッ!
だが、火炎弾はサイの真横をかすんでいった
「当たりすらしない、これが実力か…」
すると…
バゴーーン!!
観客席に火炎弾が落ち、爆発が起こった
キャーーー!!
客席から悲鳴があがる
後ろを振り返り唖然とするサイ
「何してんだお前…まさかお前、観客席に…」
バッ…!
「オラァ!!」
竜輝は飛びかかってサイの胸部に殴りかかった
飛びかかっていく最中でだんだんと竜輝の身体が魔物へと変わっていく…
そして、
バリンッ…!
サイの胸部の装甲が破壊された。そのまま舞台上まで吹き飛んでいく
「うぐはっ…!くそ…が…」
サイは、舞台上に上がってきた竜輝に首を掴まれる
ヤバイって 何…何があったの?
観客席にて燃えたぎる炎、そして破壊された椅子、混乱と恐怖が渦巻く…これはもう“ショー”どころではない
「もう何が正しいかもう分からない。けど、ここでお前の正体を明かして殺すのが正しいということだけは分かる!」
そして強く殴った
「お前もだいぶ俺達魔物になってきたか…?ふっ、面白い!!」
「面白いか?それなら次は顔面だ。お前の正体を露わにしてやる!」
倒れるサイに馬乗りになってとにかく殴り続けた
バゴンッ!!バゴンッ!!
ちょっと待って、ホントに殴ってない…?
演技だよ…ね?
「歓声をくれ!!みんなからの歓声が力になるんだ!歓声をお願い!」
サイはとにかく大きな声で叫んだ
しかし、その声が聞こえるのは前列の数人だけ
それ以降はもう…
sai助けてー!!爆発のせいで死人が出てるの!
一体何なのこれは…早くネットに投稿しないと…!
竜輝の放った火炎弾の爆発のせいで、観客席は混沌と化していた
「ぐっ、どけ!」
サイは竜輝を押して起き上がった
グワッ!
「殺してやる!!」
だが竜輝は追いかけ、サイの顔面めがけて拳を振るった
サイは腕を前に構えて防御、すぐさま殴り返す
だが、サイの一撃は竜輝には効いていない
徐々に竜輝がペースをつかみだしていく
バンッ!!パリンッ…
サイの腹部の装甲が破壊した
「ぐふっ…」
「声援を出せ…みんな声援を出せよ…!!」
さ…サイ様!頑張って下さい!
後列では観客全員慌てふためいている中、多少の声援が前列であがる
「足りない、足りない!こんなんじゃ勝てない!」
サイは頭を抱えて震えだした
「今だ!」
ブゥオンッ!!
勢いよく竜輝の右手がサイの顔面に向かう。そして
バゴンッ!!
ボロッ、ボロボロ…
サイの装甲が粉々に割れ、本当の魔物としての姿を観客の前で露わにしてしまう
「ぐはぁっ!」
バタッ…
観客の声が一瞬にしてピタッと止まりだした
「トドメの一撃だ…」
竜輝は体内に魔力を溜める。そしてその魔力を動力に変換させ
ビュンッ!
攻撃を放つ
バゴーーン!!
ブジャァッ!
サイの心臓が潰れ、血飛沫が辺りに散った
「これで目的は果たせた…」
竜輝はサイの首を掴んで観客に見せつけた
その中で1人のファンの声が会場に響く……
サイ様に、なんてことをしてくれたの…!!なんなのあなた…!サイ様大丈夫ですか!!
そのファンは観客席を走って舞台上に上がろうとしてくる
そのサイのファンに対し竜輝は冷酷な目で睨みつける
そしてサイの亡骸を足元に投げ捨て踏みつけた
あなた何をしてるの!!許せない!!
驚愕した表情でその場に立ち尽くす
「こいつの本性を知ってもなお応援し続けるのか。こいつの言っていた通りお前らは本当に馬鹿なのか!?」
何言ってるか分からない!それよりも、あなたの爆弾のせいで負傷者だって出てるんだ!絶対に許しませんからね!
そうして竜輝は観客のいるスペースに飛び降りた
竜輝はゆっくりと歩き出す。観客達は竜輝のことを恐れ勝手に道が開ける
竜輝の手は震い、心境までもが揺らぎ始める。だんだんと変わり始めた自分に竜輝は気づけているのか…?
神妙な顔でその場から去っていった…




