17 不死身のゴッゾ
saiのコンサートが幕を開けようとしている。警備は当然人間の姿をした魔物
だがもう一体saiの護衛をする者が…
そいつは竜輝のことを恨んで仕方がないようだ……
コンサート会場、saiの公演が幕を開けようとしている
大公園にいるギャリという魔物から、入場口係へ通信が繋がる
――ダナマが白犬使いによって殺された。警備を厳重にさせよ
「白犬使いの様子はどうなんだ?」
――そちらに向かっていった。saiの存在がバレているかもしれない
「まぁまかせておけ、入場口の係はざっと10人はいる。そう簡単には……」
バゴォォン!!
――おい、なんだ?爆発音がしたぞ
「炎魔法だ!奇襲だ!」
「グラァァ!!」
突如現れた竜輝が入場係員に飛びかかる
係員はスマホを落とし、地面に手を付けて尻もちをついた
「や、やめろ…!」
バゴンッ!!
鈍い音が電話越しに聞こえてくる
――あ、え…死んだのか…?
ツーツー
竜輝に電話を破壊され、通話が切れる
係員を全て蹴散らし、竜輝は走った
「これでようやく中に入れる。まずは地下へと繋がる階段を下り、その後に舞台裏への通路だ」
収容人数1万人は入ることが出来る大会場
舞台の先はびっしりと観客で詰まっている
ドスッ!ドスッ!
saiの警備が竜輝によって殴り殺されていく
「待っていろsai…」
地下へ続く階段を守る警備達も突破
竜輝は舞台裏へと続く通路を疾走している
目線の先には重そうな扉。
「あの先で呑気に歌っているわけかあいつは…」
………………
その頃ギャリは、別の相手に電話を繋げていた
――今頃あいつは中には入ってきていることだろう。もう君に頼むしかないようだ。ゴッゾアルファ
ゴッゾアルファ――
第5医中級魔物であるゴッゾを"縫合手術"によって生き返らせた異形の存在
見た目は2mの筋肉質な巨人、だがそれはただのハリボテでしかない。しかし、再生能力が高くどれだけ死滅しようとも再生する……
………………
タッタッタッ…!!
通路を疾走する竜輝
ブゥオンッ…!!
突如現れるゴッゾ、腕を振り切る
竜輝は後ろに飛び、その攻撃を避けた……
「誰だ?」
「見ろよ…お前があの時俺を殺したせいでこんな見た目にさせられた」
「それ、下手な縫合したからだろ。見るだけでも痛々しい繋ぎ目だぞ」
「てかあの時ってどの時だよ、俺はお前のことなんて知らないぞ〜」
「忘れたとは言わせねぇ!お前がその力を覚醒してロブを倒した後、俺と戦っただろ」
「あぁ、あの時の瞬殺されたやつか」
「この…おちょくりやがって、殺すぞ!!」
ゴッゾは真正面から走っていった
「そんな身体でどう戦おうというのか…くらえ!」
真正面から向かってくるゴッゾに拳を振るう
バゴンッ!!
ブシュァッ!!
破裂して肉片が宙に舞い散った。だが…
ギュギュッ…!
宙に舞う肉片が再び原型に戻る
「こう戦うんだよ」
ゴッゾは腕の縫合を解き、筒状に開いた腕を伸ばしてくる。ゴッゾの腕の中に竜輝の腕を包んだのだ
「なん…だ…」
バキバキッボキッゴキ!!
この音が聞こえると、竜輝はすぐに腕を引き抜いた
そして自身の腕を見ると、おかしな方向に曲がっている腕がそこにはあった
「俺の体内は空間が歪んでいる。入ればひとたまりもねぇ」
後ろに飛んで距離を取る竜輝
「ま、魔物には治癒能力があるはず…しかし、その能力を全く使ったことのない俺は微かなものに過ぎない。やらないに越したことはないが…」
「あんま慌てるな。治癒能力を使って魔力を減らしてくれよ。saiと戦う時にはもうボロボロだぞ〜、もしくは戦うことすら叶わないか?」
「マナがいないことによって…円滑に進めない」
竜輝は治癒をしつつ、反対の左拳で殴りかかった
「来い。俺の腕で包んでやるから」
ゴッゾは筒状の腕を前に構える
竜輝はそれを避けるように姿勢をかがめて懐に忍び込んだ
「オラァァ!!」
ブシュァッ!!
「くっくっくっ、また同じことだ」
「もう一発!!」
竜輝はゴッゾが弾け散る前に右拳で殴る
ブワァッ!!
さっきよりも細かく肉片が飛び散る
「無駄だ!どれだけやられようと俺は死なない」
再び竜輝は飛んで後ろに下がった
(このままじゃ埒が明かない…)
「マナに来てもらうしかないかも…しかし連絡繋がるか…?」
竜輝はスマホを取り出して望月に連絡をかける
「繋がれ、繋がれ…!」
――竜輝さーん、何ですか
「マナに一旦変わってくれ、少し非常事態が起きてしまった」
――ひ、非常事態ですか…分かりました
――マナさ〜ん!!
「ふぅ、望月さんが家にいてくれて良かった」
ギュギュッ…!
再び原型を留めたゴッゾ
「呑気に電話ですか?俺を倒さないと先にはいけないぞ」
「マナ!saiを倒す前に謎の魔物が襲ってきた。だから来れるなら来てくれないか?」
――もちろん、だけどだいぶ時間はかかるから、まずは実況をして!
「あいつはどれだけ殺そうと生き返る…!」
タッタッタッ!!
ゴッゾは走って行く
「だから、電話する手を離せと言ってるだろ!!」
「くっ…!」
竜輝は必死に避ける。そして電話をする手は離さない
――やっぱり炎魔法しかないよ、粉々に弾き飛ばした肉片を燃やすんだ!
「でも、戻れない。魔物である時は、俺は炎魔法が使えない」
――やるしかないんだよ…
「アラァッ!!」
バンッ!
竜輝のスマホが弾き飛ばされてしまう
「やるか…」
「よし、ようやく向き合ってくれるか」
ゴッゾは頭の縫合を外しだした
パッカ〜ン
頭の皮が四方に開いた。それはグロくて奇妙な様子だ
「まずはこの魔物の姿で戦うしかない…」
向かってくる敵に竜輝は構えだす
「ハアッッ!!」
ブシュァッ!!
3度目の破裂が起こる
「今だ、変われ!変われ!」
だが一向に見た目は変わりそうにない
「どうしても変わらない…!敵は目の前なのに!」
ギュギュッ!!
「馬鹿野郎が!!」
原型に戻るとゴッゾはすぐに飛びかかってきた
ガバッと開いた頭を竜輝の顔めがけて包もうとしてくる
「やばい…」
右腕を前にして守ろうとする
ガブッ…
腕を包まれる
バギィ!
「ぐっ…!があっ!!」
竜輝は右腕を振り切ってゴッゾの顔を切り裂く
ゴッゾの身体を押し倒して後ろに下がる
「おしいな…」
ゴッゾは一瞬にして顔面を修復させる
「はあぁ…はあぁ…」
竜輝はスゥっと目を瞑った
「大丈夫だ。俺ならいける…」
真っ暗の中に1人人影が浮かぶ
その姿は華奢な女性で、よく見ればそれは真里だった
「真里、やっぱり俺は真里のために戦ってるんだ。必ず被害を与えさせない。その目的を果たすにはまず俺がこの手に炎を灯さなければならない」
竜輝は自身の手を開いた
燃えたぎる思いが増えるたびに手のひらから炎が生まれだす
目の前に浮かぶ真里の顔が裂けて開き始める
「そうだ、敵は目の前にいるんだ」
竜輝は目の前に向けてその炎を豪速球で投げる
バボワァッ!!
「これでもう一回破裂させれば!!オラァァ!!」
竜輝はゴッゾの姿を目に焼き付ける
炎に包まれたその身体に一撃を食らわせる
バゴンッ!
「そしてもう一発だ!!」
バンッ!ブシュァッ!!
燃えながら激しく散っていくゴッゾの身体
ボワァァ!ボワァッ!
「燃える…もう……ガアッ」
ボシュウ……
ゴッゾは再び死んだ。今回は跡形もなく
「はあぁ……こんなことしてる場合じゃないんだよ」
右腕を押さえて通路の壁に身体を寄りかかって休んだ
マナが来るのをゆっくりと待っている
………………
saiのコンサート会場――
「次からは一旦休憩の時間で〜す!外も暑いのでしっかり水分補給してね〜」
saiは舞台裏に歩いた。ゴッゾとコンタクトをとるために通路扉を開いた
ガチャッ…
「この血なまぐさ、おかしいなぁ…」
saiの目線が竜輝に向かった
壁にもたれかかっている竜輝は寝ていた。だがsaiの気配を感じたのかスッと起き出した
「君がやったんだろうね。そういえば、確か外で会ったかな…?」
「そうだよ、こいつは俺が殺した。そしてお前も殺す」
竜輝の身体が魔物に変わっていく
saiは白い髪をかきあげ、余裕そうに言う
「私は戦うのは好ましくない。ただ、君が来ることはなんとなく聞いていた。だからそのためのシナリオをくんであげたんだ!感謝したまえ」
そう言うと、通路扉を開けてサイは戻ってしまった
「おい!待てよお前!」
「自ら舞台上に戻るなんて…あいつ何を考えてやがる…」
「白犬使い、俺のテリトリー内に来たことを後悔させてやるよ」




