16 純白の男性アイドル
デバーの功績により、中級魔物のシャドと魔の学校が破壊した
一方で魔物である竜輝はマナに自分のことを話すらしい
真泉市民ホールに帰った河井
暗い顔で佐武に言う
「学校の破壊はできましたけど…デバーさん達が…」
「その表情、死んだってことだな。オッケーもう分かった」
「なんですかその言い方…仲間が死んだんですよ?」
「平華教の復活のためには命が尽きようとも行動しなければならない。いちいち悲しんでられるか。お前は居場所がここしかないんだろ?従え」
「もう下がれ」
「あ、はい…」
河井は逃げるように走り出した
河井は平華教に何とも言えない不安感を覚え始める
………………
マナと竜輝は小苗村のある山の、頂上に来た――
「それでは、竜輝の本当の姿を見せてくれるか」
「分かった」
竜輝は力を入れ一心に集中しだした
しかし…
一向に姿が変わる兆しが見えない
「そういえば自ら姿を変えたわけじゃないから、方法というものがいまいち無い」
「魔物と対峙したときでないと発揮しないということなの?なんか変な能力だね。自分の身体なのに上手くコントロールできないなんて」
「だけど、これがコントロールできたときには俺は人でいられるのか…魔物からこの国を守らなければならないのに…」
「その力を使いすぎて魔物になってしまったら駄目だ。今日はしないようにしましょうか」
マナが村に戻ろうとした
追って竜輝も帰っていく
………………
安西ネットニュース会社――
「おい望月、少し来てくれないか」
編集長が望月のことを呼んだ
「いったい、なんでしょうか…」
「別に怒ったりするわけじゃないから気楽に聞いてほしいんだけど、これを見てくれ」
安西編集長が見せたのは、ある表の書かれた紙だった
「これはある新人男性アイドルのコンサート会場にて発生した行方不明者数だ。こいつの名前はsaiという」
「確か…急にメディアに推され始めていた人ですよね。それが一体どうしたんですか?」
「こいつのコンサートが始まると決まって行方不明者が現れるんだ。同じ会場でも違う出演者の時は何も起こらない。ただ確証がなく…その行方不明者の共通していたことがこのsaiって奴のコンサートに行っていたってだけなんだけどな」
「そうか、行方不明だから本人に聞けるわけもないのか…」
「こんなものしかなくてすまないが、望月の調べていることの手がかりになってくれたらいいな」
「まさか編集長が助けてくれるなんて思いもしていませんでした。安西編集長も魔物について調べてくれたんですね」
「俺は、ただ行方不明者について調べただけだ。だが俺は望月を応援している。引くときはひいて身の安全をとれよ」
「安西編集長!ありがとうございます!」
………………
椅子に座って窓越しにおにぎりを食べている竜輝、ふと左を見ると、向かいの家から真里の姿が見える
真里も朝ごはんを食べているのが窓から丸見えだった。真里が竜輝の存在に気づくと、急に変顔をしてきた
「なんだあいつ、やりかえしたろ」
竜輝は舌を出してアッカンベーをする
真里も対抗してアッカンベーをする
竜輝は呆れて顔を逸らした
「今日もあいつは元気ですねっと」
おにぎりを一口食べた
「今日も真里とのご挨拶は済みましたか〜?」
マナは竜輝の隣の椅子に飛び移って言った
「"今日も"ってなんだ。こんなの初めて、それにあいつはかまってちゃんなんだ。無視したらすねちゃうだろ」
「やり返してるってことは結構乗り気なんだろ」
「いや渋々ね」
「でも次、とびっきりのやるから見といて」
マナに変顔を見せた
「ぷふっ、それいいじゃん」
「じゃあいくぞ!」
竜輝は思いっ切り振り返って変顔を見せた
「あっちょっと待っ…」
窓の外には望月が立っていた
「りゅ、竜輝さん…?」
困惑した表情でその場に立ち尽くした
「あ、ちょ…」
「ちょっとマナ!いるなら教えてよ!」
「いや、丁度来たところだったから止めようがなかったんだよ〜!それより何しに来たんだろう?」
「それはそうだけど…」
「すみませーん、お話があってきました」
「それより竜輝さん…!さっきの何ですか?」
「なんか、あの〜くしゃみが出そうになってただけ…です…」
「それより、話とは?」
「編集長から貰った情報を竜輝にお伝えしようと思って来たんです」
「まずsaiと言う突如として現れた新人男性アイドルのコンサートにて、決まって行方不明事件が多数発生しているらしく、全員生存確認は取れてないとのこと」
望月はsaiと言う人の顔写真をテーブルの上に置いた
「後、フォロワーがDMで教えてくれたんだけど、人に擬態できる魔物もいるみたいで」
「人に擬態ね…」
竜輝は自身の手を見た
「ここから推測したことなんだけど、saiは人に擬態できる魔物なんじゃないかって推測したんだよね」
「人に擬態できるからこそ、毎回客をたぶらかして生贄にまで持っていける。そして今日と明日、サイは2日連続でコンサートを行うらしい」
「ちなみに、明日も同じ会場でやるんだな」
「もし今日行方不明者が現れたらクロと考えたほうが良いな」
「行くなら私も行くぞ」
マナは言った
「いや1人で行く。何があるかわからないからマナ達はこの村を頼む」
次のコンサート会場の経路を調べ出し、
「1人で魔物を倒すだなんて無理じゃないか?」
「もしかして、saiとやらの出待ちでもして、出てきたところを、やっちゃう感じ?」
「そんな生ぬるいやり方じゃ意味がない。コンサート中に仕掛ける。その場でsaiとやらをぶっ殺して客の目を覚ましてやる。魔物のいた証明にもなって一石二鳥だろ」
「相手の強さも分かんないんだし、慎重にいったほうがいいって」
「ロブよりかは弱い。だから大丈夫だ」
「ロブが誰だか分かりませんけど…」
「よ〜し明日の準備するぞ」
コンサート会場内部をネットで調べ上げ、舞台上にあがるための経路確認などを行った
………………
次の日――
竜輝は、真泉市の北の方面の市にある大成ドームの入口に着いた
ワァーワァー
「まだライブも始まってる訳じゃないのに、熱狂が凄いな」
観客の大半は女性
何の変哲もない、おかしいところは1つもない。saiが本当に魔物なのか。溶け込みすぎていて全く分かりやしない
「昨日のコンサートで行方不明者は数人出たらしいな…望月、良くやってくれるよ。よし!」
「俺は魔物だ。俺が魔物の存在を世の中に知ら示す第一人者となる」
あれ?見て、sai様じゃない?
竜輝の目の前にいたおばさんが、竜輝の背後の方を指差した
すかさず竜輝もその指の方を目で追った
トコ…トコ…
「ふふっ、流石にバレちゃいましたか」
色白な肌に、純白のスーツを着たsaiが登場する。それはまさにアイドルと呼ぶには相応しい、見るものを釘付けにさせるその容姿
竜輝もそのうちの1人だった……いや、
ゴゴゴ…
竜輝の表情が一瞬で険しくなる
だんだんと竜輝の手が魔物化していくのだった
「会場のみんなの目が白く変色している。自身のファンに引き込む魔法か?分からないが、どれだけ容姿を繕おうとあいつは魔物だ!確定だ…!」
変化していく自身の手を抑え、走り出した
入場しようとするsaiと横切る形で、入り口とは反対方向に走って行く
………………
「あいつ、気づいてなかったな…これもしかしたらあの場で倒せていた?いやでももっと注目されている状態でないと意味がないからな。魔物の存在を知らしめるんだ」
「一旦始まるまで用でも足すか…」
竜輝はその足でコンサート会場の近くにある大公園に寄っていった
ザッ…ザッ…
「なんだよここ…無駄に広いしトイレどこにあるんだよ」
そうして少し歩いていると、先にある草木の茂みの中に小さな建物が見えた
「なんだか怪しい雰囲気満載だぞ…」
そう言いながらも竜輝は近づいて行った
ザザッ…
「何しに来た…ここは使用禁止じゃぞ」
茂みの中から腰の曲がったおじいさんが現れる
「あっそ、ちなみにあんたは何のためにここにいる?」
「何のため……?そうだな、ただここらへんに住み着いているだけなんだよ。丁度ここにいたって感じかな」
「なんだか、悪い雰囲気は合ってそうだな」
竜輝はそのおじいさんを押しのけて建物に入っていく
「どうなっても知らんぞ…」
おじいさんは、竜輝に向けて小声で呟いた
中は真っ黒く汚れており、狭い手洗場と1つの個室があった
急いで竜輝は個室の扉を開けようとする
ガタッ、ガタッ、
内側から鍵がかかっている…
竜輝は炎魔法を生成する。扉に向けて放ち、破壊する
「この先に何かがあるはず…」
竜輝は煙の中を進んだ。すると…
ズーーン……
その個室の中には、ヤリ捨てられた女性の死体があった
「この人まさか…?」
竜輝はその死体の髪を鷲掴んで顔を見た
「やっぱりだ、この人行方不明者リストの中にいた」
「ここも魔物の侵略が進んでしまっているのか…」
ザッ、ザッ、
「だから言ったよね。使用禁止だってさぁ!」
竜輝が後ろを振り向くと、そこには180cmの毛むくじゃらの魔物がたたずんでいた
「その女は生贄に行くべきだぁ!!」
毛むくじゃらの魔物は走り、竜輝に覆い被さっていった
「あのジジイ…やっぱりsaiと繋がっていやがったか!」
竜輝の姿が魔物に変わっていく
黒い装甲の纏った拳を突き上げる
「その姿は…あのロブを負かした怪物…?!」
「死ねぇ!!」
ブシュァッ!!
身体を貫かれ、身体に大きな穴が空いた。そうして毛むくじゃらの魔物は真っ二つに千切れた
「わしの身体が…?!う、動かない」
「くそぉ、ヤリ捨てた後に…生贄に持ってくはずだったのに…なんでこんなところにこいつが…来るんだ…よ」
まだ毛むくじゃらの魔物の息がある
必死に竜輝に手を伸ばす
グルル…
「その汚い手をこっちによこすな!」
グチャッ!!
竜輝はその手を踏み潰した
「ぐあぁっ!!」
「お前、このままじゃ戻れなくなるぞ…」
「お前の息の根を止める」
拳を握り、頭めがけて振り下ろす
「お前じゃsaiは倒せな……」
バゴーーン!!
「ふぅ〜…敵を取ってやる…」
毛むくじゃらの魔物を殺した竜輝は、コンサート会場に向かっていった




