12 悪の力
竜輝の正体は人間であり、魔物である
そんな魔物どうやって生み出されるのか、竜輝の幼い頃の記憶はマナとの思い出、そして親に捨てられてしまった記憶しかない
真実を知っていたあの男は竜輝と深い関係を持っているのだろう…
「立ち、上がれ…」
ロブは重い身体を起こし、立ち上がった
「あいつ、攻撃、そして速さが格段に上昇しているが大丈夫だ。俺なら見切れるはず」
こちらに向かってくる竜輝、ロブは身構えた
しかし竜輝の速さは先程よりも速かった
だが、ロブがそれを理解するよりも速く竜輝の拳がロブに当たる
攻撃を食らいロブは観客席にまで吹き飛ばされた
ブチャッ…!
ロブの倒れた場所に数体の魔物がいた。重さに耐えきれず、下敷きになって潰れ死んだ
観客のロブへの声援が完全に止まる……
「あの拳、魔力がなければ実現出来ない力なのに何故吸収が出来ない…!こんなのはおかし…」
「いや、まさか魔力を動力源にして拳を動かしているのでは…?」
トコトコ…
「ロブ、お前押されてるじゃないか。ハッハッハ」
観客から野次馬が寄ってくる
「黙れ!!」
バゴンッ!
ロブはその野次馬を殴り殺した
「俺は負けてなどいない…」
ビュンッ!!
竜輝が観客席まで飛んできた
拳を強く握り襲いかかってくる
「どこまでも追いかけてくる…」
ロブは横に体を回転させ、その攻撃を避けた
避けた場所には竜輝の打撃によって大きな窪みが空いていた
「ロブ様を守れ!」
観客の魔物達が一斉に竜輝に襲いかかっていく
「お前らごとき……」
竜輝は襲いかかってくる全ての魔物を視認する
「勝てるわけがない」
ブシャァッ!!
360°の回し蹴りで、一斉にその魔物達を蹴散らした。雨の如く血が降ってくる
再び竜輝はロブの方を向いた
恐怖で怖気づくロブに向けてゆっくりと近づいていく
「オラァァ!!」
ブゥオンッ!
火力の増した拳を振るう
だが…
バシーーン!!
マカルによってはばかれる
突如ロブの前に現れた、マカルの放つ魔壁が攻撃を守ったようだ
「ロブは走って逃げろ。お前はよくやった」
「いや、まだやらせ…」
だが、強がるロブの脳裏に竜輝の顔がよぎる。"まだやらせろ"の一言が言い切れなかった
「お前では相性が悪すぎる…お前から行かないのなら私が強制的に送る」
マカルはロブの足元にワープホールを開いた。魔物達のアジトへとロブを帰らせた
「ワープホールを開くのにも魔力を消費するんだぞロブ…」
「ぐらぁぁ!!」
バリンッ!!
竜輝の拳が魔壁を突き破った
そのまま余所見をしているマカルの顔面に当たる
バゴンッ!!
「ぐはっ…!!やらかした…」
それに加えて杖を手離してしまった。杖はマカルの頭上に飛んでしまった
ガサッ…
竜輝は突き破った魔壁を乗り越え、もう一撃を与えようとする
「こいつ、まだ来ようというのか…だが甘い」
マカルは自身をワープホールに包んだ
マカルは消え、竜輝の拳はかわされる
マカルは飛ばされた杖の所にワープホールの出口を開く。そして姿を現した
杖を掴むと飛行を始め、反撃の魔弾を放ちだした
バンッバンッ!!
竜輝は魔弾を食らう
必死に観客席を走って逃げ始めた
タッタッタッ…!!
竜輝は走っている先に、逃げ遅れた魔物達が大勢いるのが分かった。
竜輝は笑みを浮かべ、その大勢に飛びこんでいった
「その身体を貸せ…」
「何を、する…!」
竜輝は、1体の魔物の身体を掴んだ
「お前を盾にするんだよ」
バババ!!
瞬時にマカルの魔弾が上から降ってきた
竜輝は魔物の身体を強く掴んで上にあげた
辺りにいる魔物が次々と魔弾を受け死んでいく
ババババ!!
魔弾の猛攻が止まり煙があけると、そこには竜輝だけが立っていた
持っていた魔物の亡骸をマカルに向けて投げ飛ばしてくる
「汚らわしい…!」
マカルはその魔物を蹴り飛ばした
「しかし、これがお前の本性なんだな。暴力的で、非情で、人間らしく無いこの振る舞い」
「お前ら魔物にならどれだけでも非情になれる」
「だが今はマカルと遊んでいる場合じゃない」
炎魔法を動力源にした移動で、竜輝は素早くその場から立ち去った
ビュオンッ!!
「今はこの会場にいる魔物を全員殺し、数をとにかく減らす。俺1人でな」
ここは円形闘技場
反対側の観客席に竜輝は飛び移る。そこには逃げ遅れた魔物がうじゃうじゃといた
「くらえ…」
ビュンッ…
ブヂャア!!
竜輝の拳が1体の大柄な魔物の顔面に当たった
一瞬で破壊される
キャアーー!!
「うるせぇ!」
周りの魔物を駆逐していきだした
ゴゴゴ…
「とうとう来たか」
その観客席の中で1体図体のでかい魔物が一歩前にでてくる
第5中級魔物 ゴッゾ――
逃げ惑う魔物達は不安に思いながらもゴッゾに期待を込めていた
ゴッゾは鋼鉄の鎧と仮面を装備している。巨大な剣を持ち、それを振りかざしてきた
「中級とは言え、舐められては困るぞ!」
「ロブとの戦いを見て何も学ばないようだなお前は」
竜輝は何故か避ける素振りを見せない
「見て学んだ結果、倒せる自信があるからこうやって剣を振りかざすんだよ!!」
パシッ!
振りかざす剣を竜輝は手で受け止めた
「何…?手で受け止めただと…それならこれはどうだ!」
ゴッゾは再び剣を振り上げ、力強く振りかざした
「お前が死ぬまで何回でも何回でも、この剣を振り続ける」
ガギィン…!ガギィン!
竜輝の纏う薄い装甲が所々砕けてしまうが、竜輝は全ての攻撃を手で弾き返す
弾き返されるたびに何度も連続で振りかざしまくるゴッゾ
「なんだとこいつ…だがお前の装甲がボロボロになっているのは事実!このまま押し切れば…!!」
ゴッゾはそう言いながら剣を振り上げた。
だが次の瞬間…
ボロボロ……
ゴッゾの剣が粉々になって崩れてしまう
「何…?!まさかこいつ、受け止めるふりをして剣に攻撃をしていたのか?」
「その通りだ。オラァァ!!」
バゴーーン!!
みぞおちを殴られ、その衝撃でゴッゾは即死した
「はあぁ……はあぁ……」
「流石に暴れすぎたか…?」
竜輝の周りには気付けば何体もの魔物の死体があった
ブサッ!!
音もなく何者かの槍が竜輝の脇腹に突き刺さった
「なん…だ…」
「こんな状態にしてくれて、後はどうなるか分かってるんだろうな」
「ぐっ、くそ…」
「ちょうどいいタイミングに来れて良かったよ。いじめてやる」
アグルクは竜輝の脇腹を槍でいじくりだした
「舐めんな…!」
バンッ!!
竜輝は強烈な拳を槍に向けて放った
槍が真っ二つに折れる。だが…
「双刃槍!」
魔力の有り余っているアグルクは同じ槍を再び生成させる
「じゃあ次はトドメだ」
「こうなったらもう、逃げるしか無い…」
バッ…!
竜輝は高速で会場から逃げ出した
小苗村は真泉町の南方面にある
山の中にある村だからその山が目印になる。しかし今の体力で間に合うのかが分からない…
「逃げたか…だが魔力の動力源変換、完全にロブに有利な能力だ。あいつが魔物ということでは必ず今後脅威になる…」
「そういえば、私の手下たちはどうした…?」
「アグルク様!リュウガを捕らえました!」
「でかした。その者の身を私に渡せ」
リュウガの身体がアグルクに移る
「拷問だな」
………………
「グハッ!!くそ、俺があいつに圧倒されるなんてありえない…!!なんなんだあいつの力は…」
「ろ、ロブ様!一体どうされましたか」
アジトのロビーを歩いていた魔物の手下がロブに声を掛ける
「うるさい!」
ロブは声をかけてきた魔物を壁に吹き飛ばした
「俺はあいつに負けてなどいないんだよ!俺にだって力があれば、あんな奴簡単に倒せるのに」
「力を求めるのなら…倉庫室にいってはどうですか…」
「ロブ様は魔造的存在、このアジトについては知らないはず」
「そこは力のある場所なのか?」
「はい、どんな武器でも揃ってますので…お望みの物は揃っているはずです」
「武器か…まぁいい、案内しろ!!」
ロブはアジトの奥深く、無骨な鉄扉の前に立った。
重々しい気配を放つその扉には、いかにも秘密が隠されていそうな圧があった。
案内してきた魔物が顔を近づける。
ピピピッ――
魔物の生体認証の反応とともに、ガシャンと音を立てて扉が開いた。
「もういい。お前は下がれ」
「か、感謝されるかと思ってたのに……」
「消えろと言ってるんだ!!」
「す、すみません!!」
魔物は情けない声をあげて走り去っていった。
ロブは一歩、倉庫室に足を踏み入れた。
そこは無数の武器が整然と並ぶ空間だった。ナイフ、剣、槍、魔導銃――
そのどれもが煌々と光を放っているが、ロブの苛立ちは収まらない。
「こんなもんで……アイツが倒せるかよ!!」
ガシャァン!!
怒りに任せて陳列棚を拳で叩き壊し、並べられた武器を次々に蹴り飛ばす。
バリンッ! ゴシャッ!!
飾られたガラスケースが砕け、ナイフが床に散らばる。
ロブは自身の怒りを発散するかのごとく倉庫そのものを破壊し尽くそうとしていた。
ゴトン……
鈍い音がした
暴れた拍子に、隅に置かれていた台座から何かが落ちたようだ。
「ん……?」
ロブの目に飛び込んできたのは、黒い箱。
ただの収納箱とは思えない。そこまで大きくないが、禍々しい気配が箱から滲み出ていた。
ザッ、ザッ……
「なんだ、この感じは……」
ロブの足が自然と箱へと向かう。
「これだ。この重さ……この圧……!」
箱を開けると、色々な紙切れがある中、1冊禍々しい本が鎮座していた。
「本……?」
装丁は古びているのに、どこか異質な存在感がある。
ロブは手に取るとページをめくり始めた。
その瞬間、何かがロブの中で変わっていく。
まるでこの本に取り憑かれたかのように、虜になってページをめくり続けるロブ
「魔造である俺にはこれはできない……いや、まだだ……この本に記されていることが俺には出来る」




